終幕そしてその先へ・・・
※21時に1話更新してあります。まだ見ていない方は一つ前からでお願いします。
その後ファメルバ侯爵と貴族達は処罰を受けた。
加担していた貴族達は貴族階級の降下と国に多額の寄付をさせ、ファメルバ侯爵は首謀者だったが温情で処刑は免れたものの貴族の身分剥奪と家財を全て国に没収され、辺境の地の屋敷で一生幽閉される事となる。
その処罰を言い渡された時のファメルバ侯爵は、何か憑き物が落ちたように穏やかな表情で大人しかったそうだ。
多分ずっと筆頭貴族でいた事で権力に囚われ過ぎ自分を見失ってしまっていたが、その肩書きが無くなった事で漸く心が穏やかになったのだろうとそうジークが言っていた。
黒装束の残党は、あの捕まえた者達から話を聞き出し今度こそ完全に壊滅させたらしい。ただ、口を割らせる時にずっと黙秘を続けていた男達にリカルドの名前を言ったらあっさり全て話したとか・・・リカルド恐るべし。
そして、実質上お家が潰されてしまったクラリスはと言うと・・・。
「アンナ!こちら先日売り出されました新刊、とても素晴らしかったですわよ!さっそくお貸し致しますわね!」
「クラリスありがとう!この前貸してくださった本も凄く良かったです!」
クラリスはただの庶民になるところを、私がジークにお願いし私の侍女として働いてくれるようになった。そしてどうもアンナさんと馬が合うようで今ではすっかり仲の良い読書友達となっている。
しかしジークが私の部屋に来ると、何故か二人して私を囲みジークを近付けさせないようにしてるのがいつも不思議でならない。
そして、その時にはいつもジークと二人が笑顔で見えない戦いを繰り広げているらしいのだ。
そうそう私のお店がどうなったかと言うと、実はファメルバ家に仕えていたジルが私の代わりに働いてくれている。どうやらクラリスの側に私がいてくれるのでそのお礼だとか。元々執事をしていたので接客は問題なく、紅茶を入れるのも完璧だった為安心して店を任せる事が出来た。そして今ではジル目当ての女性客が増え大変繁盛しているらしい。しかしさすがにジルでもお菓子は作れないらしく、私がお城の厨房を借りてお菓子を大量に作りジルがそれを取りに来ているのだ。
そしてこの前ジルがお菓子を取りに来た時にロブおじさんが、サラちゃんみたいな可愛い女の子の店員希望!とジルに訴えていたらしいから、さすがにすぐ女の子の店員は見付けられないけど今度顔でも見せに行こうかと考えている。
そんな穏やかで平和な日々を過ごしていたある日、私の部屋にセーラ王妃様が箱を抱えた沢山の侍女を引き連れていらしゃったのだ。
私がその侍女達を不思議に見ていると、王妃様はニコリと笑顔を見せとんでもないことを言ってきた。
「サラさん、わたくしに男装姿見せてくださいな」
「・・・は?」
「貴女の男装姿とても凛々しく麗しいと伺っていて、是非とも実際に見てみたくなりましたの。衣装ならこちらで用意してありますから安心してくださいな」
そう言って後ろに控えていた箱を抱えた侍女達に指示を出し、侍女達が私の目の前にどんどん箱の中身を出していく。
そしてあっという間に色んな衣装が並べられた。それも全部私の体型に合わせて作ったであろう男性が着る服ばかりだったのだ。
「まあ!サラお姉様!どれもお似合いになりそうですわ!」
「そうですね!ではまずどれからお着せしましょう?」
クラリスとアンナさんが、楽しそうに話し合って衣装を選び出しているのをうんざりした気持ちで見ていた。
そして王妃様を見るとそんな二人を楽しそうに微笑んで見ている。・・・多分こうなる事を予想して持ってきたのだろう。
そこでふとジークが言っていった事を思い出した。
・・・そう言えばあの毒の解析や数々の証拠等の裏付けは、実は王妃様お抱えの諜報部隊がやった事だと言ってたっけ。
そう思いながらもクラリスとアンナさんにあっという間に男装させられた。そして二人がキャッキャ言いながら頬を染めて私を見ているのを尻目に王妃様を見る。
「本当によくお似合いですこと。その姿で剣を持って戦われる所などまさに『銀の魔神』ですわね」
その言葉を聞いて私はある思いが頭を過った。
「・・・あの~王妃様。もしかしてですけど、その『銀の魔神』の噂を流されたのって・・・まさか王妃様だったりしませんか?」
「ふふ、さぁ~どうでしょうね」
王妃様は意味ありげな頬笑みを浮かべてくる。
・・・なんか私、どうやってもこの王妃様には絶対勝てる気がしない。
私は引きつった笑みを浮かべながら、着せ替え人形のように次々と着替えさせられていったのだった。
それから数日後、私を正式にジークの婚約者にする式が執り行われ無事にジークの婚約者となったその日のお披露目会で、ジークに誘われ月の光に照らされた静かな庭に出たのだ。
そして二人きりになった事で、ジークは私を抱き締め見つめてくる。
「サラ・・・君が俺の婚約者になってくれたのが今も夢のようだ」
「ジーク・・・」
「俺はいまだにこれが夢で、ある日突然夢から覚め全部無かった事になるのでは無いかと不安になる事があるんだ」
「・・・大丈夫。これは現実だし私ちゃんとジークの婚約者になったんだよ」
そう言って私はジークの背中に手を回しギュッと抱き締め返す。
そして、私はつま先立ちになりそっと唇に触れるだけの口付けをジークに贈った。
「サラ・・・」
「・・・ん」
私の行動に一瞬目を瞠るとすぐに顔を綻ばせ、今度はジークから優しく口付けをしてくる。
そして吐息が掛かるほどの距離に顔を離し愛しそうに見つめてきた。
「サラ・・・愛してる。・・・正直婚約と言うだけでは満足出来なくなった・・・すぐにでも俺と結婚して欲しい」
「・・・ジーク」
「返事を聞かせてくれないか?」
「・・・はい。こんな私ですがどうぞ宜しくお願い致します」
「サラ!!」
「・・・んんっ!」
照れながら言った私にジークが破顔し今度は激しい口付けをしてきたのだ。最初はその激しさに驚いたがすぐに受入れ、ジークの首に腕を回し私からもその口付けに応える。
そうして月の光に照らされながら二人はいつまでも口付けを交わし続けたのだった。
────数ヵ月後。
お城に隣接する大聖堂で、私とジークは沢山の人々に見守られながら盛大な式を上げた。
その後お城のバルコニーに二人で出て国民にお披露目をする。
笑顔で手を振り国民の歓声に応えていると、隣にいたジークが突如私の腰を抱いて引き寄せてきた。
私が不思議にジークを見るとジークが頬笑みを浮かべ私を見てくる。
「サラ、二人で幸せになろうな」
「・・・はい!」
そうして二人は口付けを交わす。その瞬間歓声がさらに大きくなる。
私はその歓声を聞きながら幸せを感じこう思った。
『私、庶民辞めて王太子妃はじめます!』
Fin
これにて本当にこの物語は完結致します。
ここまで読んでくださった皆様方ありがとうございました。
最初は軽く書いて終わらすつもりでしたが、書いている内にどんどん話が膨らみ結局一番長い章となってしまいました。
しかし、やっぱり色々強い主人公は書きやすくとても楽しかったです!
今後は暫く執筆活動を休み、貯まっている本等を読んだりのんびり過ごすつもりです。
そしてまた執筆意欲が湧いてきたら、また別の新作を書くかもしれないのでその時はどうぞ宜しくお願い致します。
では繰り返し最後になりますが、読んでくださり本当にありがとうございました。
蒼月




