第六十九話 なんとか誤魔化せました
「盗賊!?」
「はい! 最近ウェルホルム王国城下町の外に盗賊が出るようになったんです! ウェルホルム国王も盗賊の討伐を指示しているのですがなかなか尻尾を見せず……くそ! なぜこの馬車なんだ!? すいませんがスピードを上げます!」
すると、馬はスピードを上げるが馬車を引いている分、後続の盗賊だと思われる馬達に距離を詰められる。このままだと追いつかれるだろう。
「くそっ! くそっ! くそぉぉおおお!!!」
馬を操作している男は声を上げながら必死にムチで馬を叩く。馬もそれに応えスピードを上げようとするけど、やはりこの馬車の重さがネックになっているのだろう、これ以上はスピードが出ないようだ。
さて、どうしようか? 盗賊を討伐するにしても俺一人なら問題ないだろうけどこの男の人を守ってってなると数の問題もある。いや、数の問題って言うより今の状態でこの人に身体強化以外の魔法を見られる訳には行かないし……よしっ!
「うわっ!」
「なんだなんだ!?」
「避けろっ!」
「おい! 進路に来るな!」
俺はこっそり後ろの盗賊の足元に向かって無詠唱で魔法を使い地面に岩を作った。そして、その岩によって馬が足を取られ盗賊達はこけ落ちたり、互いにぶつかり合ったりして俺たちの追跡を止めた。
「もう大丈夫みたいですよ?」
「えっ!? 何があったんですか!?」
「なんか馬が一頭足元を取られてこけたので隊列が乱れて巻き添えになったみたいです」
「そんな事が……天は我を見放さなかった。良かった。……でも、足を取られるようなものあったっけ?」
「ま、まぁでもまだ安心は出来ませんから急ぎましょう!」
「そ、そうですね! しっかり掴まっててください!」
俺は強引に話をまとめ切り上げた。
ふぅ〜なんとか誤魔化せたか。それにしても盗賊とはな。盗賊討伐したら賞金とか出るんだろうか? もし出るなら、多少は魔法学校に通う為のお金稼ぎになるかな?
俺はそんな事を考えながらスピードを上げて激しく揺れる馬車に揺られていた。




