第五十一話
オレはグレアと酒場に行くと、お子様ランチを注文する。
お子様ランチはグレアの分で、オレはおすすめ定食を頼んだ。
つうか、異世界ってのはなんでもあるんだな。
まさか異世界にお子様ランチなんてものがあるとは思ってもいなかったぜ。
注文が来るのを待って、数十分後。
グレアの目の前にお子様ランチが置かれると、グレアは、
「うわああああ」
というように声を上げた。
お子様ランチなんてものは食べたことがなかったのだろうか、このグレア、結構な喜びようである。
そのグレアの耳がぴこぴこと動いていて、おお。
本当に獣人ってのは、その耳が動くのだな、そのしっぽがぴこぴこと動くのだな。
嬉しいだけで動くんだな。
まるで生き物みたいだ。
ぬいぐるみとは違うなということを痛感させられてしまう。
つか、お子様ランチの旗に喜んでいるんだから、まるで子供みたいだな。
いやいや、よくよく見ると、グレアは子供なのだろうか。
獣人という生き物にオレはあったことがなかったら、グレアの年齢にまでは注目をしていなかったが、その年齢はずいぶんと若いのかもしれない。
グレアの耳と、グレアのしっぽのことしか見ていなかったからだろう。
その顔立ちが結構整っていることと。
その身体が結構幼児体形であることが、今更になってわかった。
年齢は小学生くらいのイメージだろうか。
小学生高学年から中学生くらいのイメージだろうか。
それとも単に獣人族というのが、背の小さい生き物なだけなのだろうか。
まあお子様ランチを見て喜ぶのだから、子供であるのは間違いないだろう。
耳をぴこぴこと動かして、しっぽをにょろにょろと動かして、グレアは言った。
「食べていい?」
「おう。好きなだけ食え。むしろそれで足りなかったら、おかわりしてもいいぞ」
というオレ。
オレはおすすめ定食を食べればそれで問題はない。
それにオレは紅蓮の炎のメンバーである。
Bランクのモンスターの討伐をすれば、獣人の女の子にお子様ランチくらい食わせてあげるくらいの稼ぎはある。
まあいいものが見れたし。
けも耳が見れたし、けもしっぽが見れたし、これくらいの出費は痛くもかゆくもない。
むしろお礼を言わせてほしいくらいだ。
けもみみを見せてくれてありがとう。
けもしっぽを見せてくれてありがとうってな。
異世界に来て、モンスターではなく、こういった可愛い存在に出会えた奇跡にありがとうといいたい。
「おいしそう」
と、グレアはお子様ランチを見て、そんなことをいっていた。
そのスプーンの握り方は、まるで子供の握り方のように、無茶苦茶である。
とはいえ、わざわざ、出会ったばかりで、スプーンの持ち方を矯正するっていうのもおかしいよなあ。
わざわざオレがそんなことまでしてやる必要もあるまい。
「おいしい」
といって、お子様ランチを食べるグレア。
「グレアね、お子様ランチ食べるの、初めてなの」
というグレア。
「そうか。そうか。だったらよく味わって食うんだぞ」
「うん。ありがとう」
というグレアは、お子様ランチをスプーンですくうと、不慣れな感じでスプーンを使うと、もぐもぐもぐとお子様ランチを味わっていた。
そしてグレアは言った。
「おいしい! すごくおいしい」
という。
「よかったなあ」
とオレはおすすめ定食に手を付けずに言った。
なんだかグレアはお子様ランチを食べながら、その耳をぴょこぴょこぴょこぴょことご機嫌そうに動くのを見ているだけで楽しかった。
そのしっぽをご機嫌そうにぴょこぴょこぴょこぴょこと動くのを見ているだけで楽しかった。
オレはなんだか不思議な気持ちになりながら、獣人ってかわいいなあ、なんでこんなに獣人ってかわいいんだろうかと思いながら、おすすめ定食を食べずに、おすすめ定食に手をつけずに、グレアがお子様ランチを食べているのを、見ていた。




