第72話【姉妹】
「うわ~!これ全部安成ちゃんですか?」
〘そうだ。日付は8年前…安成が3歳の時の写真だ。〙
「ちっちぇーアイツ。」
〘來美に見せると持って帰られかねんからな。君たち2人と私だけの秘密だぞ。〙
「狼さんも秘密なんですか?」
〘フフフ…勝手に昔の写真を見せるなと安成に怒られてしまうからな。〙
「あー…確かに嫌がりそうアイツ。」
「なんか全員あれっすね、今と変わんないっつーかその…服のセンス。」
「た…確かに…!」
〘フハハハ!そうだな。あれで3人とも、自分のスタイルを曲げない頑固者気質だからな。〙
「でもなんで8年前?2016年…が、一番アルバムが分厚いんですか?」
〘ルリ子と鶴が10歳なる年だったからだ…特に意味は無いが。10倍数の年はどうしても特別に感じてしまってな。このように…何かとつけて写真を撮っていたのだよ。〙
「なんだかわかるかも…!」
「じゃあ去年も安成の写真いっぱい撮ったんすか?」
〘いや、ご存知の通り既にエージェントとして戦っていたから、去年は帰省しなかったのだよ。おかげさまで…あの子の10歳のアルバムは、あまりいっぱいにしてあげられなかったな…。〙
「狼さん…。」
「てか写真見てて思ったんすけど。」
〘どうした?〙
「普通に町中出るんすねアンタ。」
〘ん?〙
「な〜?そう思うよなw」
「うふふ♡」
「ルリ子お姉さん!鶴お姉さん!」
〘今日は早いなルリ子。〙
「アタシだけかよ"鶴"にも言えや。」
「私は朝早いもの。」
〘そういうことだ。〙
「ったく…ワイワイやってっから起きちまったよ。何かと思えば懐かしいもん見やがって。」
「ツルたちのアルバム…うふふ♡安成もルリ子も可愛い♡」
「意外と親父が町に出てる写真多いだろ?」
「みんなから怖がられなかったんですか?」
〘最初は警戒された。得体のしれない存在以外の何者でもないからな。火事の救助やゴミ拾い…時間をかけて敵意がないことを、私なりに伝え続けた。〙
「今じゃ、変な格好してるけど皆から頼りにされるヒーロー…というか、ちょっとした有名人になっちゃって。」
〘幸いなことに、この"見た目"だからな…町おこしのローカルヒーローだと言えば、大抵の人間は信じる。〙
「あはは…だけど、この写真なんだか新鮮です。」
〘新鮮?〙
「はい…だって安成ちゃん、こんなにハッキリ笑うことってあんまりないから。」
〘…そうだな。ルリ子と鶴が先にSMOoDOのエージェントとして上京してから、だんだん落ち着いていったように私も感じたものだ。その頃くらいからだな、今のようにクールな性格になったのは。〙
「安成なりに"しっかりしねぇと!"って思ったんじゃねぇの?アタシと鶴がいなくなってさ。」
〘余計な気を使わせてしまったかもしれんな。〙
「だけどまだまだ甘えん坊さんだから。たまには昔みたいに元気いっぱい遊び回ってほしいわ。」
「昔みたいにな〜…。」
「どうした?翔馬。」
「あいや…昔みたいにっていうか…アンタら3人といる時のアイツ、割と子どもっぽいと思いますよ?」
〘そう感じるかね?〙
「いやまあ、あからさまじゃねぇけど…少し気が楽そうっていうか…。」
〘私はむしろ逆に感じたがね。〙
「逆っすか?」
〘ああ。久しぶりに会って少し驚いたが、安成が前より年相応の一面を見せるようになってきているように感じている。おそらくだが…君たち2人、そして來美と出会い、付き合い始めたのが原因だろうと思っているよ。〙
「わ…私たちとですか?」
〘ここ最近の、あの子にとっての大きな出来事は間違いなく君たちに集約する。きっと安成にとって君たちは、本当に大切な存在なのだろう。〙
「ハハハw珍しく太鼓判だな親父ィw」
「だけどパパの言ってることはきっと正しい…だって帰国してから最初に会った時、前までの安成より明るく感じたから…本当に良い関係なのね。」
〘そういうことだ…だから君たちに頼みがある。〙
「は、はい!」
「俺たちに…?」
〘あの子をどうか…支えてやってほしい。〙
「もちろん!」
「世話焼けるぜ…ハハハ。」
ジャッキーシルバーが少年少女の肩に手を置きながら語りかける。その様子を見て、姉2人は微笑んでいた。
「いい子たち…。」
「だよな〜。」
「意外と恥ずかしがり屋さんだから…口下手だし、ちゃんと友達が作れるか心配だったけど…。」
「アイツも、いつまでもガキじゃないってことだよ。それに…」
「?」
「アタシと鶴が居なくなった時に…安成を支えてやれるヤツは、な?1人でも多いほうがいい。だろ?」
「……………。」
「……………そんな辛気臭ぇ顔すんなって。死ぬわけねぇだろアタシやオマエが。」
「……………うん。」
「…さてと、畑でも見てくるかなぁ〜。」
「収穫?」
「キュウリとトマト…あと〜ナス?採ってくるわ。」
そう言って収穫用の籠を持って玄関へ向かうルリ子。ジャッキー曰く今年は暑さで野菜があまり育っていないらしい。
んなもん自分で一帯の気温を下げればいいだろ!なんて口が裂けても言えないので(多分やってるし出来るだけ自然の力だけで育てたいんだろうし)、仕方なく出来た分だけ収穫しようとドアを開けた。
「お。」
立ち止まるルリ子。
「へへへ…どうだ?あったか?"収穫"。」
「えぇ。とっても。」
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《8月9日 AM7:00 ジャッキーシルバーの館》
「安成ちゃん!」
安成の姿を見るやいなや、一目散に駆けていく耐心。そのままガバッと飛びついて、力いっぱい抱きしめる。
「おかえりなさい!」
「た…ただいま。」
耐心の肩越しに後ろから4人が歩いてくるのが見える。ルリ姉とツル姉だ。来てたんだ。ていうかツル姉は短いスパンで島を行ったり来たりしてることにならないか?何してんだろう。
「よっ。」
「翔馬。」
「死んでなくて良かったわ。」
「私がいなくて寂しかったんじゃない?」
「そうだなー。」
「正直になったねアンタ。」
「來美ちゃんは?」
「買い出し行ったわ。」
「あらそ。会いたかったのに。」
「すぐ帰ってくるだろ。」
「まあそうだけど。」
1週間ぶりの再会を喜ぶ3人。その後ろからジャッキーシルバーがゆっくりとやってくる。
〘良い面構えになったな。〙
「死にかけたからね。」
〘どうだった?バッドランドは。〙
「どうもこうも…よく言ったもんだわバッドランド。」
〘フフフ…それでも、お前を1人前の戦士にしてくれた場所だ。少しは愛着も湧いたろう?〙
「二度とごめん!べー。」
〘そうか。二度とごめんか。〙
「うん。」
〘……………よく頑張ったな。それでこそ私の娘だ。〙
「めっちゃ褒めるじゃん。」
〘さあ…ここでこのまま話しているのもなんだ…風呂にでも入れ。〙
「そうだね〜…1週間入ってないからね。」
〘臭うぞ。〙←オオカミのディストート。
「あっそ(イラッ)。」
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《その日の夜─────》
「なんか3人だけなのって久しぶりじゃない?ソファに座って映画見てさ。」
「そうだなぁ〜…アハハハハ!」
「ルリ子、1つ聞いていい?」
「ん?」
「ベッドシーンのどこにそんな爆笑要素があったの?」
「ヤッてんのがオモロイ(ハハッ)」
「ほんと馬鹿…。」
「それで言ったら安成に見せていいのかよこんな映画を。」
「PG-12だからいいんじゃない?私来年で12だし。」
「そういう問題か?」
「こういうシーンだけカットできないかしら…。」
「ちなみに1週間ぶりに私にあった來美ちゃんの反応は丸々カットされました。」
「誰に話しかけてんだ安成は。」
「まあそれはそうとして。」
「えぇ…。」
「どうだった?アメリカ。」
「ん?あ~…そう言えばゆっくり話す機会あんまなかったな。」
「温泉の時はカメレオンの対策の話でいっぱいだったしね。ツル姉居なかったし。」
「会えなくて寂しかった?」
「うん。ツル姉に会えなくて寂しかった。」
「私もよ安成♡」
ギューッ
「安成、アタシは?」
「ツル姉…。」
「安成…♡」
「アタシは?」
「ツル姉…。」
「殺すぞ。」
───────────────────────────
「─────ってことがあったな。」
「そんな色々やったのに英語話せるようにならなかったの?」
「黙れよ。」
「まあ…あっちで交流した人のほとんどは日本語話せるか、そうでなくともツルが通訳してたから。」
「だから覚える必要なかったんだよ。」
「勉強も全くせずにここまで来た…と。」
「うるせぇなオマエはどうなんだよ。」
「人並みには?」
「お利口さんね…安成♡」
「ツル姉…。」
「もういいわそれ(何回やんだそれ)。」
「アハハ。」
「ま…勉強も大事だけどよ。」
「だけど?」
「それ以外が充実してそうでよかったわ…っつー話をずっとしてたぜ?昨日今日。」
「そんな話してたの?」
「お友達と一緒に帰省するなんて思ってなかったって、パパが言ってた。」
「私のことコミュ障かなんかだと思ってんの?」
「コミュ障というか…心配はしてたんじゃねぇの?」
「すごく褒めてたよ、あの3人のこと。本当に安成のことが好きなのね。」
「約2名は好きすぎて困ってる。」
「翔馬君のことは?」
「なにそれどういう質問?」
「好きじゃないの?」
「な〜にを言ってんだこのおっぱいは。」
「あら、何も思ってないの?」
「友達友達友達友達友達。」
「おい鶴、もう少し詰めたら本音漏らすぞコイツw」
「そうね♡えいえい♡ほら、どう思ってるの〜?♡」
「友達だってば。」
「マジでキレんなよ(こえぇだろ)。」
「全く…誰が一番子どもかわかんない。それに、友達は4人だよ。」
「そうだったな。ドラウガスだっけ?」
「一度本部で会ったわ。とっても優しくて…ディストートがみんな…あんな子だったらいいのに。」
「ね。あ、それでさドラウガスがさ。」
時刻は夜中の25時を回っていた。3人は気づいていないが、とっくの昔に見ていた映画も終わっている。それでも、3人は話をやめない。
姉妹として…血は繋がっていなくとも、そこには絶対に切れない愛があるからだ。
これから先…3人で力を合わせ、世界史の教科書に載ってもおかしくない大事件を巻き起こし、大勢の命を救うのだが、それはまだ誰も知らない。
☆次回予告☆
安成たちが上五島でバカンスを楽しんでいるその裏で、東京の町に新たなるディストートが現れる。
現場に駆けつけたSMOoDOのエージェントたちに語りかける男は、果たして敵か味方か!?
───次回!
第73話
【立てば争端、座れば牡丹、歩く姿はウエスタン】!
その男、目的や如何に!




