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第71話【オレンジ・インパクト③】

 〘フンッ!〙


 「ハァ!」


 バキッ!


 お互いの拳と拳がぶつかり合う。互いに死力を振り絞った全力の攻撃!




 ジュゥゥゥゥゥウ!




 〘厄介だな…やはりソレは!〙


 安成の拳と接触しているスコーピオン:ディストートの拳から小さな煙が昇る。

 やはりD.B.M、ディストートは触れるだけでダメージを負ってしまう。つまり安成にとってD.B.Mのオーラは纏っているだけで攻防一体の大きなバフを与えるのだ。




 だが─────────




 〘だぁ!〙


 ブォンッ!


 「うグッ…!」


 バキッ!


   バキッ!


     バキッ!


       バキッ!



 純粋なパワーだけならスコーピオン:ディストートに分があるこの勝負。

 思いっきり拳を振り抜かれた安成は、身体ごと後方へ!直線上の樹木にぶつかり、太い幹もろとも砕きながら吹っ飛んで行く。


 〘あまり長く触れないのが吉だな。〙


 「んがっ!っは!」



 挿絵(By みてみん)



 (オーラの量が…!)


 (〘さっきより少し減ったな?〙)


 この4日間、ディストートたちとほぼ休みなく戦ってきた安成。

 当然ながらコンディションは万全とは言えない。肉体の至る所に走る傷跡からD.B.Mの発光が確認できるレベルでダメージは蓄積していた。

 更に、寝る時も休む時も全く気の抜けない状況だったことで精神的ストレスも抜けていなかった。


 (クソッ!身体が全然思い通りに動かない!)


 〘って顔してるぜ?〙


 「!?」


 〘どりゃあ!〙


 バキッ!


 スコーピオン:ディストートの蹴りが安成にクリーンヒット!

 下から上へ目にも止まらぬ速さで振り上げられた爪先(つまさき)は安成の顎を正確に捉え突き上げる!


 「ッッッッッッッッッッッ!」


 〘丈夫な身体だな…!〙


 「……………ッアァ!」


 脳が揺れる…冗談抜きで頭が吹っ飛んだかと思った。そのくらい凄まじい蹴りをまともに食らってしまった!

 意識が朦朧とする中で、なんとか己を奮い立たせて立ち上がろうとする安成にスコーピオン:ディストートが近づいていく。


 〘全然手応えがねぇ…仕切り直すか?〙


 舐められている…!今の私では相手にならないと言っているのだ!

 もちろん安成だって、確実に倒すつもりで動いてはいる。だが、そもそも並のディストートよりも遥かに強いであろうスコーピオン:ディストートを相手に、真正面から向かっていけるような肉体ではないのだ。

 絶体絶命のピンチ、こんな状態まで追い込まれてなお、安成の脳内に浮かんでいるのは、目前に迫る強敵のことではなく────────





 (こんなのを1人で何十も何百も…やっぱり凄い…!)
















 挿絵(By みてみん)



 (ルリ姉や)




















 挿絵(By みてみん)



 (ツル姉は!)




















 (私はなれない…コイツ相手にこんなに苦戦してるようじゃ…あの2人みたいには、まだまだ…いや下手したら一生…なれn)



 "お前はお前の強さで自分の価値を証明しろ。"


 (!)


 "その答えを見つけてくるといい…"


 (答え…ルリ姉やツル姉にない…私の強み…?)


 "お前の強さで"


 (私の…)


 〘どうした?急に静かになったな。〙


 「ごめんね…ちょっと考えごとしてた。」


 〘随分と余裕だな…ここまでの戦いぶりを見れば、考え事などしている暇はないと分かっているはずだ。〙


 「そうだね…残念ながら基礎スペックはアンタが上みたい。」


 〘本気を出させてくれないか…最初に出会った時の期待と興奮を…もう一度…!〙


 「だからちょっと…」


 〘?〙


 「ここからは私にしかできないやり方で…」



 全く。あとから支給されたものを使うのはルール違反にならないなら、初めに言ってほしかったものだ。

 というか"コレ"は…武器判定ではないということか。まあ"コレ"そのものに何かしら破壊力があるわけではないからな…。


 と、ここで安成がジャケットの内ポケットから何かを取り出す。

 それは昼間にドローンから出てきた、あの指抜きグローブだった。


 〘今更そんなものを取り出して何か変わるのか?〙


 「何か変わるのか確認したいから使うんでしょうが…!」


 嫌味を言いながらグローブを装着する安成。サイズはピッタリだ。全く違和感のないフィット感が両手をつつみ込んだ瞬間、腰のデバイスから音声が鳴り響く!







"KICK ASS!"





 「おっと。」


 〘ん?〙



 今までに聞いたことのない音が流れている。ノーマルモードとも、ラピッドモードとも違う待機音だ!


 (コレを押すのかな?)


 グローブの付け根部分についているボタンを押す安成!するとグローブに全身のD.B.Mが集まって行く!これまでとは比べ物にならないD.B.Mの出力を感じ取った安成のテンションに応えるように、D.B.Mの色が変わっていく!




 (〘色が変わった…?〙)



 (凄い…!これまでと全然違う…パワーが溢れてくる!)






"SELECT IMPACT!"

"DISTORT BRAKE MATERIAL"

"COLOR ORANGE LET'S ATTACK"







 挿絵(By みてみん)






 "IMPACT MODE!"




 「インパクトモード…!」


 オレンジ色に光り輝くD.B.Mはまるで火花のようにバチバチと音を立てて(ほとばし)っている!

 これまでの戦闘形態とは違ってジャケットの外にD.B.Mが溢れ出て止まらないのだ!


 〘凄まじいエネルギーだ…!〙


 「おまたせ…つけようか、決着!」


 〘望むところだ!〙



 再び相対せんと敵に向かっていく両者!突き出された拳と拳の衝突に、凄まじい衝撃波が発生して周りの木々を大きく揺らす!



 しかし、これまでと違っていたのは─────!



 〘!?〙


 (吹っ飛ばない!?)



 立っている!


 安成はその場に立っている!



 先程までは、ぶつかっては吹っ飛ばされていたスコーピオン:ディストートの攻撃を、真正面から拳で受け止めて踏ん張れている!

 パワーが上がっている!あのモードチェンジの時に感じた、とめどなく湧き上がる力は伊達ではなかったのだ!

 スコーピオン:ディストートだって手を抜いているわけではない!むしろ先程よりも力を込めて安成を押し込まんとしているが、それを押し返すほどに安成のパワーが上がっているのだ!



 更に────────!




 バチバチバチバチッ!



 〘ぐおッ!?〙



 バチィーンッ!



 (弾けた!?)



 次の瞬間!接触していた拳の間でD.B.Mが弾け飛び、スコーピオン:ディストートを吹っ飛ばす!



 ジュオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーッ!




 〘ぐぁぁぁあ!〙



 これまでのD.B.Mとは比べ物にならないダメージがスコーピオン:ディストートの拳に…いや、拳を伝って手首にオレンジ色の亀裂を作るように広がっている!

 煙を出しながらダメージ音を立てる手を抑えるスコーピオン:ディストートの様子を見て、安成は瞬時にオレンジ色のD.B.Mの性質を悟る。



 (これまでのD.B.Mよりもディストートの細胞に強く反応してる…!)



 "2 minutes left!2 minutes left!"



 「!」



 腰のデバイスが残り時間を知らせる。どうやらラピッドモードと同じく時間制限があるらしい。



 〘わざわざ残り時間を音声でお知らせするとは…2分経ったらお前はどうなる?〙


 「知らないよ…ただ、どちらにしても、時間切れになったら私はアンタに殺されるのは確実。だからその前にヤッつけてやるよ!」


 〘ヤッつけるか…できるといいな!〙



 びゅオッ!



 凄まじいスピードで鞭のように迫るスコーピオン:ディストートの尻尾!かろうじてそれを受け止めた安成は、力を込めてしっかりと脇で締め上げる!



 「捕まえた!」


 〘しまった…!〙


 「ふんっ!」



 そして尻尾を掴んだまま、スコーピオン:ディストートの身体が宙に浮くほどのパワーで力強く振り回す!凄まじい回転で勢いをつけた安成は、そのままの勢いでスコーピオン:ディストートを遠くにぶん投げた!



 「てい!」



 ギュオオオオオオオオオオ!



 〘ぐぉぉぉぉお!?〙



 バキッ!バキッ!ドゴッ!


 ずざざざざざざざざざざざぁぁぁぁあ!



 先程の安成と同じように、直線上にある大木を粉砕しながら吹っ飛んで行くスコーピオン:ディストート!

 今度は安成に掴まれた尻尾から、D.B.Mの傷が広がっていく!



 じゅおおおおおおおおおおおおおおおおっ!



 〘うがぁぁぁぁぁぁぁあ!〙


 苦しみながらも、膝をついてゆっくり立ち上がるスコーピオン:ディストート。

 しかし、そんな彼の目の前には、足を大きく開いて拳にエネルギーをチャージする安成が立ち塞がる!



 "CHARGE!CHARGE!"



 〘……………!〙



 "CHARGE!CHARGE!"



 「なんか残り30秒くらいみたいだから…!キメるよ!」


 〘よもやここまで圧倒されるとは…楽しかったぞ人間の子ども!〙


 "CHARGE!CHARGE!"


 「こちらこそ…おかげで私、また1つ強くなれた!」


 〘最後に1つ……………名前を聞かせてくれないか?〙


 "CHARGE!CHARGE!"


 「晴家(はれるや)安成(あんな)!」


 〘アンナ…フフフ!なるほど…アンナか!〙


 (〘なるほど…どこかで会ったことがあると思ったが…「あやつ」と"同じ顔"!"同じ名前"!〙)


 "CHARGE!CHARGE!"


 〘ハーッハッハッハッハッハッハ!〙


 「じゃあね!」



 "READYYYYYYYYYYYYYYY!GOOOOOOO!"




 "AMBER-BREAK!"




 「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」



 挿絵(By みてみん)




 ドゴォォォォォォォォォォォォォォオッ!




 挿絵(By みてみん)




 〘うぐごぉぉぉおおあああああーーーーーっ!〙



 安成の凄まじい一撃がスコーピオン:ディストートの胸のど真ん中を捉える!

 硬い装甲を砕いて胸に大きな拳跡を作った威力は尚も止むことはなく、そのままスコーピオン:ディストートを後方に吹っ飛ばしていく!



 スコーピオン:ディストートの全身に亀裂が走り、そこからオレンジ色のD.B.Mがバチバチと音を立てて弾け飛ぶ!

 そして遥か彼方まで勢いは止まらず真っ直ぐに吹っ飛び続け、安成の視界から消え、島の森すらも突き抜けて海上に飛び出した次の瞬間!






 ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!






 オレンジ色の激しい爆発が夜の海を照らした!








 "TIME OVER!IMPACT OFF!"




 シュンッ




 「お。」



 フラッ




 「ありゃ……………?」



 すてーん!



 変身が解けた瞬間、膝がカクンッと折れてその場に倒れる安成。意識は完璧にあるが、全身に筋肉痛が走り動けない。


 「やーっぱりこうなるのね…へへへ。」


 大の字に倒れた視線の先、満点に光り輝く天然のプラネタリウムが広がっている。

 東京の空はこんなふうに星は見えない。思えば帰省してからゆっくり空を見ることもなかったっけ…。

 蝉の声が360度から全身を刺してくる。8月の上五島は風が吹かない。それでも夜はほんの少しだけ過ごしやすいものだ。

 しばらく感じていなかった大自然の温もり…一体いつぶりだろう。

 夜が明けて身体が動いたら泳いで本島に帰らなきゃ…あ、違う…7日はここにいなきゃか。

 兎にも角にも、これでこの島にいるディストートは全て倒した(または倒された)はずだ…残りの3日間はここで体力を回復させよう。

 そのままスヤスヤと寝息を立てて眠ってしまった安成。

 厳しい闘いを終えた少女が眠る島の周りで、海は再び穏やかな波を取り戻し、心地よい水音が夏の夜を彩るのであった。








 修行完遂(ミッション・コンプリート)























☆次回予告☆


 バッドランドから帰還した安成!

 新しい力と共に、物語は次なるステージへ!


─────次回!


 第72話


 【ぽいずんディペンデンス】


 あの女の子が帰ってくるぞ!

〘IMPACT MODE(インパクト・モード)


"KICK ASS!"


"SELECT IMPACT"

"DISTORT BRAKE MATERIAL"

"COLOR ORANGE LET'S ATTACK"


"TIME OVER!IMPACT OFF!"


パンチ力:30t(必殺技時50t)

キック力:15t

ジャンプ力:前方跳躍20m、垂直跳躍10m

スピード:時速50km


制限時間:3分


【概要】


D.B.Mジャケットの機能で、ラインがオレンジ色に輝く形態。オレンジ色の輝きを放つ状態のD.B.Mの性質は『ディストートの細胞組織に過度に激しく反発する』こと。

この状態での攻撃は、ディストートに対して通常時とは比較にならないダメージを与えることができる。また、身体能力も爆発的に上昇し、危険度Cまでのディストートならばパンチ一発で粉砕する。

また、『ディストートの細胞組織を感じ取るやいなや、自動的に追っていく』性質も併せ持っており、一切の防御をかなぐり捨てた完全攻撃特化形態でもある。

身体への負担が非常に激しいため、3分経つと自動的に形態解除&疲労でぶっ倒れる。


必殺技は【アンバーブレイク】。オレンジ色のD.B.Mを拳に一点集中して放つ全身全霊の鉄拳。これにより、ノーマルモードやラピッド・モードの攻撃力では歯が立たなかったスコーピオン:ディストートを木っ端微塵に吹き飛ばした。

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