邂逅
こ、これは……
9話です
『仲直り出来て良かったわ』
麻衣ちゃんからメッセージが来た。
『うん、そうだな』
『じゃあさ、次の土曜日に図書館で私のテスト勉強に付き合ってくれない?』
『え? 良いの?』
『えぇ、構わないわ』
やったーと思っていると、彼女からまた返事が来る。
『貴方の子供の頃の写真みたいから小中学校のアルバム持ってきて』
え? 学校のアルバム? どこに片付けたかな~っと少し不安に思い、
『見つかったらね』
『OK~』
と、これで今日の返事は終わった。
「晴樹ーーっ」
といつものように後ろから幼馴染みが僕に声をかけてくる。
「おう、愛衣っ」
「もう相変わらず姿勢が悪いぞ!」
「うるさいっ」
「あはは」
いつもの日常に戻ったな。僕は朗らかな気持ちになった。
「なぁ、愛衣ー」
「んー?」
「小中学校のアルバム今でも持ってるか?」
「え!?」
彼女は驚いた顔になり、少し紅くなったように見えた。
「……どこに片付けたかしら~っ」
「そうだよなーっ」
「何かに使うの?」
「ん? あーっ、知り合いに見せるんだよ」
「へぇ、そうなんだ……」
(まぁ、家に帰ってちゃんと探してみるか……)
「……」
そして時は経って昼休み。
「あ、パン買いに行ってくるわ」
「おう」
岩田に断りを言ってから売店に足を運んだ。
(弁当じゃあ、少し足りねーな)
育ち盛りの僕には少し足りない。そうすると、
「晴樹っ」
「ん? 愛衣、どうした?」
「あ、いやその私もパンを買いにね」
「そうか」
「……」
そして彼女は僕の後ろに並ぶ。そして僕はパンを買い、愛衣は欲しいものがないので買わなかった。
「ねぇ、晴樹」
「んーっ?」
「“まい”って子とはどうなってるの?」
頬張っていたパンをゴホッとむせた。
「な、何……」
「前にその子のこと話してたじゃない? あれからどうなのかなーって」
「それは……」
何だろう。言いにくいな……。
「もしかして……」
ドキッ。
「……まだ身元も素性も分からないその女と続いているの!?」
「わ! 馬鹿っ。声でけーよ!」
「どこの馬の骨か分からない女にうつつを抜かすなんて……」
「それは言い過ぎだ。女子校に通っているのは分かってるよっ」
お嬢様……と繰り返し言い彼女は続ける。
「それなんてどこまで本当か分からないし、もしそうだとしたらそんな世間知らずのお嬢様に常識ってものを教えないとっ!!」
「はぁ!? 一体どうする気だ!?」
「決まっているわ! 彼女に引導を渡すのよっ」
「いや、待て待て。お前には関係ないはずだっ!」
「関係大ありよっ。私の幼馴染みがもしかしたらとんでもない事件に巻き込まれている可能性があるじゃないのよっ!」
「考えすぎだって、それはっ!」
そしてキーンコーンカーンコーンと予鈴のチャイムが鳴る。
「……付いてくるなよ?」
僕は愛衣にそう肝に銘じて早々とクラスに戻った。
家に戻りアルバムを探してみる。
「あれ~っ?」
しかしそれが見当たらない。
「母さん、アルバムどこにあるか知ってるー?」
「アルバムはねーっ、確か押し入れにしまってあるわ~」
「了解ー」
そして押し入れを見に行くと、ごちゃーっと荷物が散在していた。
(これは……取り出せないな……)
どうしたものか……。飯の時しばらく考えながら食べていると、
「アルバムなんかどうしたの?」
「知り合いに見せるんだ」
「高校の友達?」
「いや、SNSで知り合った友達」
「そんな人と知り合って大丈夫なの?」
「よく似た人だから大丈夫だよ」
「いつ行くの?」
「明日の昼ぐらい」
「何時くらい? お昼ご飯の支度があるから」
「12:00くらい」
「ふーん」
「最近の若者はそんなんで知り合うから良いなー、母さん」
「お父さん、片付けたいから早く食べてね」
んー、どうしたものか。
『アルバム?』
『頼む。貸してくれ!』
小中の時の友達で高校の違う岸本に頼んだ。
『良いよーっ、いつ?』
『明日』
『ゴメン、明日は難しい』
(駄目かーっ)
仕方ない……。
「あったーーっ」
しばらくあさって何とか見つかった。はぁ、苦労した。……しかし一体これを見てどうしたいんだろうか。まぁいいや。
翌日になり待ち合わせ場所に行くと、麻衣ちゃんはもう来ていた。今度はちゃんとした服だ。
「こんにちはっ」
白の薄い服を羽織って白のスカートを穿いて、優しく笑う彼女に僕は天使だなぁと思いながら癒された。
「先にご飯食べない?」
「うん、そうだね」
喫茶店に行って食べた後、市の図書館へと向かう。
「広いなー」
「ここ来るの始めて?」
「うん、そうだな」
「そう、好きな本でも読んでて」
「分かった」
そして彼女は勉強を始め、僕はその隣に座って本を読む。
緊張して本に集中出来ない。綺麗にまつげが伸びた横顔は惚れ惚れするくらい見惚れてしまう。
良い匂いもするし。
「とりあえず休憩しましょう」
「そう」
「あのさ、アルバム見せて」
「あ、うん良いよー」
押し入れから苦労して探したアルバムを鞄から取り出す。
「へー、これが晴樹君か~。可愛い♪」
「えへへ~、そうかなーっ」
「うーん、晴樹君が載っている写真はー……」
そして彼女はピタッと止まる。
「これって……」
その時、正面に黒の帽子で眼鏡をつけた可愛いらしい女子がダンッとしてメンチをきって座る。僕はびくっとして見る。
「……ん?」
あれ? もしかして愛衣?
「な、なんでお前がここに……」
「“ここに”じゃないわっ。そんなことよりこんな清楚そうな子を捕まえて一体何して……」
「貴女……」
「何よ? ちょっと黙っ……え?」
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