想いを伝える
14話です
周りが総体に向けて練習する中、僕は部活中うきうきしていた。
(麻衣っだってーっ。えへへ~っ)
「何か楽しそうだな。何か良いことでもあったのかい?」
「部長!」
部長の山下先輩が僕に声をかける。
「ベタに艶がある。これは良いことがあったのが分かる」
(凄い。それでそんなことが分かるのかっ!)
僕はとても感心していると、
「いや単にとろけそうな顔をしているからだろ?」
と森谷先輩がツッコんだ。
「どんなことがあったか気になるな」
「いや、大したことじゃないですよ~」
「大したことなかったら、そんなに顔の輪郭がなくなりそうなほど幸せオーラは出ないと思うが?」
「う……」
「先輩命令だ! 言ってみたまえ!」
「ではちょっとだけ……」
ちょっとだけ先輩達に話た。
「……そうか~。気になる子を下の名で呼び捨てかぁ」
「まだ気になるって程では。ただ気のおける相手ってだけでっ」
「気のおける相手だけでそんなに幸せオーラを出すのかい?」
「……」
「それは君がその子に好意があるってことだろ?」
「!」
そ、そうなのか!? 僕は麻衣のこと好きなのか!?
「何だーっ? まだ自分の気持ちに気づいてなかったのかい? ウブだなー」
「……」
「ラブコメ読んでみたら、どんな感じか分かりそうなものだが」
「まぁ、初恋なんてのは自分自身では分かりにくいかもしれないな」
「そ、そうなんですかね……」
「なる程なー。初恋か~、はっ! そうだっ。次の物語が閃いたぞっ。初恋の恋愛ものを書こう!」
「お、山下の奴。次のアイデアが見えたみたいだなっ」
そして山下先輩は自分の席にすっと座り、ラフ絵を怒涛のように描き始めた。
僕は意識して急に顔が熱くなり、机をただ眺めていた。
(好き……か)
意識すると恥ずかしい。……でも、
(金曜日まで待ち遠しいな……)
「晴樹ってさ、金曜日から空いてる?」
愛衣は僕の部屋で宿題をしながら訊いてくる。
「そりゃあ、総体は関係ないからな」
「暇だったらバレーの試合を見に来ない?」
「えっとー、まぁ機会があればな」
「何か用事でもなるの?」
「……」
麻衣の所に行く──とは言いにくいし……。
「うーん、色んな部活を見て回ろうかなと思ってて」
「ならバレー部も見に来たら?」
「まぁ、時間が空いてたらな」
「そかっ、分かった」
そして彼女は少し嬉しそうにシャーペンを走らせて宿題を終わらした。
(総体……か)
金曜日になり、総体当日。僕は駅前から市の弓道場へと向かう。日頃の運動不足が祟り、到着するまで少し疲れた。
「ここか……」
そこにウチの高校の生徒もいれば他校の生徒もいる。沢山人が応援していた。
(賑やかだなー)
そこに集まっている生徒達は制服で、僕はつい私服で来てしまった。
(あちゃー参ったなーっ)
そして麻衣の女子校も参加していて、彼女を探したが群集から探すのは難しかったので、諦めて近くの芝生に座った。そしてゴロっと横になる。そうすると、
「あ」
「あ」
真正面にフレミ女子校の制服を着た麻衣が立っていた。
「晴君っ」
「~~~~」
僕は少し屈んだ彼女の顔(と他にも色んな所)を見る。彼女は嬉しそうだった。しかし僕は目線をそらす。
「来てくれたんだ!」
「う、うん……」
「ちょっと麻衣っ!」
「え?」
彼女の友達であろう女子からぼそぼそ言われた後、彼女はばっとスカートを押さえる。
「ごめん、お見苦しいところを……」
「いえ……」
水色か~。空の色とよく似ているなー。
それから僕は起き上がり、友達と別れてこっちに来る彼女を眺める。
「良かったー。来てくれなかったらどうしようと思ってた」
「来るさ」
「そう……」
「……」
「……ま、まあ私が出てないからつまらないかもしれないけど」
「まぁ、確かに」
けど長く一緒に居られるじゃないかと思ったが恥ずかしいので声には出さなかった。
好き……ねぇ。僕はちらっと彼女の横顔を見る。長い睫毛につぶらな瞳、鼻はすっと伸びて小さいながらも可愛らしい艶やかな唇、肌は白くて透明感がある。
「何?」
彼女は優しい表情でニコッと笑う。
ドキドキッッ!!
僕は心拍数が上がる。
「あ、あのさ……」
「……」
「き、きれ……」
「麻衣ーー。先生呼んでるよーー」
「あ、ゴメン呼ばれたから、言ってくるね」
「う、うん……」
綺麗だねって言おうと思ったのに……。
そして彼女は試合中だと応援に行き、大体は友達の方にいたので、あまり喋れなかった。
「ゴメンゴメン、折角呼んだのにあんまり話せないね」
「いや、そっちが大事だから良いよ」
「そか」
「……」
そして一日目が終わり僕は帰ろうとすると、
「何で来たの?」
「電車だな」
「それじゃあ、私もそこに行くまで一緒に帰ろうかな?」
「そう?」
「うん」
そして僕達は駅前まで一緒に歩いた。
「明日なんだけどね」
「うん」
「やっぱりお父さんに会ってみたい」
「え? けど僕は気にしてなかったけど、明日まだ総体があるだろ?」
「まだ応援だし、理由を言ったら大丈夫と思うわ」
「……そか」
「やっぱり私のお父さんがどんな人か気になるから」
「……」
彼女は複雑な顔をしながらも、少し嬉しそうだった。
「あ、見て」
「ん?」
「夕暮れねーっ」
「そうだな」
「綺麗ー」
まるで油絵具で描いたような空の風景は確かに綺麗かった。
「夕暮れ時の赤ってどうしてこんなに綺麗なのかしら?」
「そうだなーっ、それは……」
そしてふと彼女の方をちらっと見る。
「……それは君が素直で綺麗な心を持っているからじゃないの?」
「え?」
彼女はこっちを見て、(夕暮れのせいかもしれないが、)頬を赤く染めたように見える。
「そう……なのかしら?」
「そうじゃないとそう感じないと思うよ」
「……」
片方の手を片頬ずつに当てて、恥ずかしそうにする。
僕は彼女を素直で可愛らしいと感じる。
──それは君がその子に好意があるってことだろ
──初恋か~
「麻衣……ちゃん」
「あ~っ。だから麻衣って呼んでって……」
「……好きだ。付き合わないか?」
「……え?」
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