骸骨ランド
骸骨ランド
よーし、決意も台詞も固まった。
あとは実践あるのみだ。
俺は有限実行できる男だ、やるぞ、言うんだ!
っと、その前に咳払いをして、喉のコンディションを整えてから!
「ん、んぅうぅん!」
想定よりも思いっきり咳払いしてしまった.....
よし、気を取り直して決意が揺るがないうちに声を掛けなければ!
「あ、あの~、この度はご迷惑を掛けて、すんませんでした~」
おっと、緊張のあまり決めてたとおりに言えなかったが、声が裏返らなかったから80点ってところだな。
それでも申し訳ない気持ちがかなり込められていたんじゃないだろうか。
しかし、俺の80点の謝罪を聞いても、通行人たちはハッと息を飲んだだけで返事をしてくれる様子がまだない。
なんで!?何か気にくわないの!?
間延びした言い方だったからか?
えーい、迷っても答えが出ない、もはやなるようになれだ!
「それと、目が覚めるまで見てもらって、あざーした。ところで、俺の財布とケータイ、あと服知りません?あと、ここどこですかね?今何時すか?
あ、ケーサツは呼ばないでもらえます?」
どうせならと思って、一気に知りたい情報をまとめて聞いてみたが.....通行人たちは俺に返事をせずヒソヒソと何かを相談し始めた。
そして数十秒後、通行人集団の先頭にいた通行人Aが返事をくれた。
「ご、ご加減はいかが、で、でしょう、か」
返事をくれた通行人Aさんの声は、初老の男、じーさん的で低い声だった。
怒ったら怖そうな声の低さとは反対に、俺の体調を心配してくれた。俺よりもトチってたけど、Aさんも緊張してんだろうな、相手は全裸だし。
「今のところ、どこも痛くないし、気持ち悪いってこともないんで、大丈夫そうすね」
「おお!皆の者、聞いたか、ご健勝であらせられるぞ!!」
「おお~、奇跡だ!」
俺の無事を聞いて喜んでくれるのは嬉しいけど、そんなに大声でお知らせしなくても.....恥ずかしくなるな。
っていうか奇跡って、そんなに様態が悪かったのか?だったら救急車呼んだ方が良かったんじゃないのか?
ま、異常なさそうだし、結果的には問題ないんだろうけど。
「で、では、お力の方は、い、いかがでしょうか!!?」
「オチカラ?」
Aさんよりも大分若い声、多分俺と同世代くらいの仮にBさんから突飛な質問が飛んで来た。
オチカラとは、力を丁寧に言った『お力』の意味だろうか?あれかな、急アル的な感じでぶっ倒れてたから、手足麻痺してるとか、そんな心配をしてくれてるのか?麻痺はしてないけど、寝起きのせいか、何となく身体がダルい気がする。
「バカ者!!目覚められたばかりなのだぞ、そんな不躾な質問するやつがあるか!弁えよ、愚か者めが!!!」
「ヒィ!も、申し訳ありあせん!!」
うわー、ある意味空気壊したよBさん!
それもっと早くやってよ!
そして予想どおり、怒鳴るAさんの声めちゃ怖い!怒られれるのは俺じゃないのに、おれも「ヒィ!」って言っちゃいそうになった。
しかし、素でヒィ!って言う人初めて見たわ。
「申し訳ありませんでした、不躾な愚か者を、それを抑止できなかった無能な私をお許し下さい、どうか、どうか穏便にお願い致します!」
「「「「「申し訳ありませんでしたーっ!!」」」」」
そう言うとAさんをはじめ、通行人たちは一斉に額を地面につけて謝罪した。
「え?いやいや、心配して聞いたんでしょ!?何か問題あった!?謝れる要素が全く見つけられないんですけど!全裸に土下座するって、どういうプレイだっつーの!いや、俺は全然気持ちよくならないし!やめて、土下座やめて!変な教祖とかに勘違いされるから!!」
俺は慌てて頭を上げるように頼んだが、
「いえ、あなた様を測るようなことを申し上げてしまいました、申し訳ありません。あぁ、お許しを乞うことすら烏滸がましい!」
などと、通行人Aは怒りが収まらない様子。
「いや、俺のためにマグマの如く怒ってくれたのはありがたいんだけど、そっちの人も俺を心配してくれたんだろうから、もう止めてやれよ。俺は怒ってもいねーんだし。それより、そろそろ服着たいんだけど?」
通行人の変なペースに翻弄されて、ついついタメ口になってしまう。気を付けなければ。
「な、何という慈悲深いお言葉!お前たち聞いたか!今のお言葉を一言一句逃さず歴書に残すのだ!!」
「どんだけオーバーなんだよ!」
たまらず、突っ込んでしまった。タメ口で。もうタメ口でいいや。
「とりあえず、普通に話してくれねーか?話しずらいんだよ。あと、何か着るもんくれねーか?このままだと全裸がニュートラルになっちまうよ」
「おお、それは気付くのが遅くなって申し訳ありません!しかし、あなた様のお召し物は未だ発見には至っていないのです」
「えぇ!?盗まれたんか!?」
「申し訳ありません。盗まれ、何処かに封印されてしまったのです、あなた様の『拒絶の壁』は」
「何それ!?俺の服はそんな大層な名前ついてねーし!何でもいいから、せめて半裸になれるもの下さいってーの!!」
「ははぁ!それではせめて、これを......」
そう言われて灯りの向こう側の闇の中から、畳まれた服らしきものが差し出された。
......骨の腕と手から。
服らしきものを差し出すと同時に、通行人Aさんの姿がはっきりと見えてきた。
「ん?」
灯りに照らされた通行人Aは、フード姿だったのだが、その中身が、タ◯ミネーターよろしく銀色の骸骨のお面を被っていた。ご丁寧に両目は赤黒く光っている。
「何故にそんなお面を?」
「お面ですかな?グァッハッハ!五千年前と比べれば確かに年を取りましたな。シワが増えて、お恥ずかしい」
骸骨顔が笑うと、骸骨が笑い声に合わせて器用に歪んだ。なかなか精巧なお面のようだ。
しかし、服を持っている手や腕も、そこにあるべき肌というか肉が一切なく、理科室にあった骸骨の標本のまんまだった。色は銀色だが。特殊効果ってすごいな。
「なかなか凝ったコスプレだな」
「は?こすぷれ、とは?新たな魔法ですかな?まぁまあ、まずはお召し物を」
「そ、そうだな......」
差し出された服を渡す骨の動きもナチュラル過ぎて作り物には見えなかった。
ハリウッド映画の技術なら可能なのだろうか?コスプレ科学は随分進んだもんだ。
などと考えながら、とりあえず全裸男から脱却するために服を着てみた。
黒色の長袖シャツ、黒色のズボン、そして、黒色のマント。
......マントって。初めて着たよ。正確には「羽織る」なのか?
ホンワカ暖かいんだね、マントって!
「いや、マントって!ここはコスプレ道場なのかよ?!全裸は脱却したけど、怪しさ満点だよ!警察の職質対象だよ!」
「な、何かお気に召さなかったでしょうか?」
「お気に召すも召さないも、全裸から全黒でマントっていうのが......いや......」
そこで思い直した。
この骸骨コスプレ通行人は、善意で服まで貸してくれたんだ。全裸だった俺は誰を責められようか。例えそれがコスプレ衣装だとしても。
「いや、助かる。......しかし、ハロウィーンってまだだったような」
「はーろいーん、とは古代魔法ですかな?」
「いや、こっちの話。とりあえず......」
もはや全裸の変態男ではない俺は、落ち着いて状況整理をすることにした。
まずは、現状を確認だ。
そして骸骨コスプレ通行人の連絡先を聞いといて、金借りて自宅に帰って自分の服に着替える。
その後、コスプレ衣装を宅急便すれば万事解決だ。
「まずは、状況を確認したいんだが、俺はどういう状態だった?」
「む、記憶がないのでございますか?」
「あぁ、なんでここで寝ていたのか分かってねーな」
「むむむ......それでは、かの大戦のことは......?」
「た、たいせん?大戦ってのは、戦争のことか?」
「なんと!そうですか、そこまで記憶が......あの忌々しい貴奴の封印力はここまで!お痛わしい!」
そういうと、骸骨コスプレ通行人は嘆き、骨の手で顔を覆った。
泣いているように見えるが、お面から涙もでるのだろうか......?
骸骨コスプレ通行人の後ろに控えている通行人たちも「何てことだ!」などと嘆いている。
酔っ払って記憶を無くしたことが、これほどまで見ず知らずの人たちを嘆かせていると思うと申し訳なさが半端ない。
これから、深酒には気を付けよう。
※※※※※※※※※
一通り嘆き終わったのか、骸骨コスプレ通行人が鼻を啜っている。
「ズズっ!おっと、取り乱しましたな、大変失礼致しました。今はお目覚めになられて間がないのですから、記憶もぼんやりしているのでしょう。5129年前の私との邂逅などをお話ししていけば、徐々に記憶が戻るやもしれません」
「五千年前と俺の寝込み関係ねーだろ絶対!早く俺が寝込んでた状況を話せー!」
しかし、銀色骸骨は目を細めて俺の突っ込みにも動揺しなかった。
「ふっ、あなた様らしいですな。煩わしさを好まず、大胆不敵。......それでいて細やかな心配りを忘れない!あぁ、あなた様がお忘れでもラーズは片時とてあなた様を想わない時はありませんでしたぞ!!」
「お、俺、同性はちょっと!ストレートだから!!って、ちょっと待て!俺のことを知ってたように言ってるけど、俺ら知り合いなんか?」
俺の質問に銀色骸骨が両脇を広げて声高になった。
「何を仰るのでしょう!?この私、ラーズ・ウル・トゥル・ハルメットはあなた様に仕えし七大魔王が第二位、死王ラーズ・ウル・トゥル・ハルメットでございます!!!五千年の遥かなる時を経て、あなた様の御前で再び我が名を申し上げることができようとは!このラーズ・ウル・トゥル・ハルメットは歓喜、感激でございます!」
「おぉ!新たな歴史がここに刻まれた!」
骸骨コスプレ通行人とその他通行人の喜びが大爆発しているが。
「は?」
全くついていけていない、俺。
おかしな単語がいっぱい出てきた。
魔王とかカタカナの長い名前とか。
「えーと......はい、質問」
「皆の者、静まれぃ!!かの主様からご質問である!」
「ははぁ!記録士!一言一句逃すでないぞ!」
「ここはどこ?俺は誰?」
「ここはバナシアイコス大森林の名もなき洞窟、あなた様は全知全能の魔神、ゼルファン・クライセスト様その人でございます」
「へ?」
「今はまだ、ご復活召されたばかりで記憶や力が戻られてないご様子、詳しいことは安全な場所へご移動頂いてからの方がよろしいかと」
「いや、ちょい待ち!全くついていけてないんだけど!まじんって何?!俺??俺は至って平凡なサラリーマンで......」
「確かに、あなた様からしてみればその強大なお力も平凡なものでありましょうな!」
「何言ってんのこの人?!誰か話通じる人!」
「ラーズ様でも通じないお話をなされるとは......凡庸な私達では次元が違い過ぎる!」
「いねーのかよ、通じる人!!」
ラー油なんとか・・・カタカナ名前の骸骨コスプレ通行人以外の通行人も話が通じる気配がない。
しかし、これで合点がいった。
俺は、こいつらの上司だか親分と間違われているのだ。
そいつと俺がどんだけ似ているのか分からないが、裸体を晒してこれだけ話しているのに誰一人、人違いであることに気付いていないのだ。
よっぽど似ていて、こいつらが天然の集まりなのだろう。
しかし俺に似ているそいつは、かなり慕われているんだな。
これは早いとこ人違いを教えてやらないと。
「あ、あのさ、喜んだりしていたところ悪いんだけど......おたくら人違い、してんじゃねーのか?」
「は、人違い、でございますか?」
カタカナ名前骸骨が目をパチクリさせておうむ返しをする。
骸骨がパチクリしても可愛いくはない。
「そう、人違いだ。俺はファンファンなんて大佐みたいな名前じゃねー。生まれも育ちも日本、立派なジャパニーズなんだよ」
「さ、左様、ですか......。それは一体どういう??」
「俺も経緯は分かんねーけど、目が覚めたらここにいたんだ。事情が聞きたいのはこっちの方だっつーの。とにかく、おたくらが探してる大佐じゃねーんだ。......何かがっかりさせて悪ぃけどな」
カタカナ名前骸骨が気落ちしているのを見て罪悪感があったが、事実を言わないと後々もっと混乱するだろう。
「しかし、人違いと申されましても、そんなことは起こり得ないのです。何故なら我々は儀式を行い、肉体を失い異次元に封じられたゼルファン様の魂をここへお喚びし、秘術を用いて肉体を構成したのですから。......混乱されているのではないでしょうか?」
「いやいや、俺だって30年近く生きてきたんだぞ。それ無視して勝手に俺を他人にすんじゃねー」
どうしても俺を大佐だと思い込みたいようだが、そうはいかない。
俺は俺だ、大佐じゃねぇ。
「......それでは、あなた様はあくまでゼルファン様ではないと、そう仰るのですかな?」
「あぁ、そうだ。すまないな」
「ふむ、これはまさか......そういことか......いやしかし!」
俺の否定を聞くと、カタカナ名前骸骨はブツブツと独り言を言いながら思考に耽り始めたその時、奥の方が騒がしくなってきた。
「た、大変です!!」
「何だ、騒々しい!今は大事な時であるぞ!!」
「ラーズ様、敵襲でございます!」
「敵だと!......くっ、ここまで来たか、予想より早い!して敵の軍勢は!?」
「そ、それが一人と物見の報告でございます!」
「一人とな!?たった一人に何を怯えておるのだ物見めが!」
「そ、それが、その一人は真っ赤な鎧で赤黒い長刀を携えているとのことです!」
「・・・仇敵の赤嵐か!」
ラーズと名乗った骸骨コスプレは、部下っぽいのから報告を受けてワナワナしている。
それにしても敵襲って・・・
ちょっと待て・・・骸骨コスプレと話している部下らしき者の顔が灯りに照らされたが、そいつも骸骨だった。色は黒色だったけど。黒色骸骨は剣と盾を持っている。
「よりによって、赤嵐か」
「何故ここが知れたのだ」
「ここは全員で足止めをしなければなるまい」
「狼狽えるな!我らはラーズ様の指示に従えば良いのだ」
黒色骸骨の報告を聞いて、ほかの通行人たちがざわめき始めた。
改めて暗さに慣れた目で通行人たちを見ると、ざさめく通行人たちも皆等しく骸骨だった。白骸骨・黒骸骨・赤骸骨。骸骨たちは同じようなフードを被っているが、色や声の違い、体格などに差があった。
ここは骸骨ランドなのか?
お化け屋敷的な?
おっと、今はセキランという脅威が迫っている緊急事態らしい、余計なことは考えないようにしなければ。
「そのセキランってのはヤバいのか?」
「そうですな、あなた様の力が解放されていれば、虫のように滅せるでしょうが、今はまだ封印されておりますから厳しいと存じます。
貴奴は、戦場で血の嵐を起こすが如く鬼神の武力があります。私も本来の魔力があれば......恐れながら具申致します。ここは、戦略的撤退を願います!」
血の雨どころか嵐って、相当強いようだなセキランってのは。
「お逃げ下さい!」
銀色の後ろの骸骨たちも皆膝をつく。
「そんなヤバい奴なら逃げるに越したことないんだろうけど、あんたらはどうすんだ?」
「私どものような粗末な存在を気にする必要はありませぬ。僭越ながら、肉の壁となってあなた様の撤退時間を稼がせて頂きますぞ」
「肉の壁って、あんたら肉ないんじゃ......」
「おぉ!これは一本とられましたな!グァッハッハー!!」
「な、なんでそこまでして......」
俺には理解できなかった。この骸骨たちは自分の身を犠牲にしてまで俺を逃がそうとしている。人違いしている相手なのに。
「俺は、あんたらが大切にしている人じゃねーんだぞ」
「いえ、間違いありませぬ。」
「俺に骸骨の知り合いなんていねーんだよ」
「記憶がなくとも、別の人格になろうとも、あなた様の根元は何も変わっておられませんですぞ」
「ヤバい奴来るんだろ?だったらあんたらも一緒に逃げればいいじゃねーか!」
「そうはいきませぬ。赤嵐は私めらが多少とも食い止めなければ、あなた様に危害が及びまする」
「なんで、なんでそこまでするんだ!?そこまであんたの、何とか様ってのは大切なのかよ!」
「えぇ、あなた様は、我々の全ての希望なのでごさいます。」
その時、銀色骸骨は優しく微笑んだ......気がした。
と、その時、
「あーっはっは!!やっぱり貴様ら穢れた化け物はカビ臭い所がお似合いだね!!」
奥の方から、甲高く笑う女が姿を現した。
女は、赤黒い全身鎧のようなものを着込み、デカイ武器のようなものを持っていた。武器は三國志の漫画で関羽が持っていた青龍円月刀のように長い柄の先におどろおどろしい両刃が赤黒く光っていた。
「なんだ、あのネーチャンは?!」
「く、赤嵐めが、もうここまで!死霊守護騎士は容易くやられたというのか!!」
そう言いながら、カタカナ名前骸骨はネーチャンから俺を隠すように前に出た。
「ふふ~ん!あのオモチャは貴様が作ったポンコツ?この私があんなもんで止められるとおもったら大間違いよ~!あーっはっは!
......あらぁ?その銀色ドクロ面、貴様が七つの大罪が一人、死王、ラーズ・ウル・トゥル・ハルメットね~!!神話の化け物に出くわすなんて、私今日は絶好調ね~!」
展開からして、あの鎧ネーチャンがヤバい奴のよーで間違いない。
口調は間延びしていてほのぼの系を醸し出しつつ、話す内容はかなりエグい。
よく見ると、整ったヨーロピアンな顔立ちで嫌いではないタイプだが、テンション上がってアドレナリンが出まくっているのか、瞳孔を開いて高笑いしている顔は狂気染みていて、ちょっと引いた。
セキランを見るカタカナ名前骸骨は、侮蔑の眼差しを向ける。
「フォーナイトの末裔めが、忌々しい!」
「あのキレイだけどイッちゃってるネーチャンがヤバい奴なんだな?」
俺が銀色に確認すると、セキランが俺に意識を向けた。ギョロりと目線を向けてから顔をこちらに向ける。......気持ち悪い動きだな。
「やだぁ、お褒めに預り光栄だけど......虫酸が走るね、化け物めが!......ん?あれぇ、あれあれぇ?」
俺を見ると、セキランの目が驚きの色に変わる。
「アナタ、ドクロじゃないのねぇ。何者かしら?教えて下さらなーい?お礼に殺すときは一瞬で楽にしてあげるからさぁ!」
そう言うとセキランは武器を俺の方に向けてきた。
武器の穂先がえらくバカでかい。あんなもので刺されたら身体が真っ二つになってしまいそうだ。
しかし、何故かセキランを見ていると右手の手のひらがジンジンと痛み、自分に危機が迫っているにも関わらず、手のひらの痛みに意識が向いてしまった。
セキランの前に骸骨たちが立ちはだり、俺の傍らに来た銀色が俺に耳打ちする。
「ハイメイジたちが時間を稼ぎます。その間に転移致しますぞ」
「テンイ?」
「おやおやぁ?随分そこの男が大事みたいねぇ。良いわぁ、お姉さんは、そういうの壊すの大好きなの。ゾクゾクしてきたぁ♪
見た所、ただの眠たい顔したお兄さんにしか思えないけど......。骸骨共が人間を守るなんて聞いたことも......ま、まさか、その男が......魔神?!」
「いかん、気付かれた!かかれー!」
銀色の合図でその他骸骨たちがブツブツ何かを唱え始める。
すると、ある者は両手から発生させた法陣から炎を、ある者は氷の塊を、ある者は地面から土壁を一斉にセキランに向けた。
しかし、セキランが降る長刀が炎を氷を土壁を、骸骨たちを一振りで塵と化していく。
セキランの腕は決して太いわけではないが、あんなに大きくて重そうな長刀を軽々と振っている。
「ようやく逢えたわね、ア・ナ・タ・に!追い掛けて焦がれて駆けずり回って・・・ぁあん、早く壊させて!
でぇ~もその前に、ゴミは片付けなきゃね!
ふふっ、魔神ならば全てを掛けて逃がす価値があるかもしれないわね......無駄だけど良いでしょう、抵抗なさい。全力で足掻いて抗って頂戴な。その方が......濡れるわぁ!」
「うげ・・・」
恍惚とした表情のセキランを見て俺は直感した。
どうやらセキランは超ドSのド変態だったようだ。
「くっ、化け物はどちらだ!ゼルファン様!私は復活の儀で魔力が枯渇しており、更に骨粗鬆症なのです!!」
「はぁ!?骸骨なのに?骨粗鬆症!?」
「寄る年波には勝てないのでございますな!ですので、転移も遠方までとは相成りませぬ、お許しを......!」
「それは良いけど、あんたは!?」
「魔神殺ったぁー!」
その時、俺の目の前に赤黒い刃物が迫ってくるのが見えた。
「あっ......」
俺は防御するどころか避けることもできず、ただ目を見開いただけだった。
その刃物はすんでの所で止まった。
───銀色の身体を貫いて。
「ラーズ......」
「ふふっ、最期に名前を呼んで頂きましたな。これ以上の幸せはありませんぞ!......」
「貴様ぁ!!邪魔だぁー!!」
セキランが叫ぶと、穂先に力が集約していく。
同時にラーズが合掌すると、俺の意識が飛んだ。
意識が飛ぶ寸前、ラーズは笑っていたような気がした。
そして笑顔のラーズが爆散した。




