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魔女の出会い2

魔女の出会い2


「おい、よりによってあのキザ王子の隣とな!?」



小春の魔法により、完全に他人の認識から外れた三人は難なく層壁門の検問を素通りし、スタールの案内のもと、シャーリーンが幽閉されている貴族屋敷まで来たのだが、なんとそこは、アーノック家屋敷のすぐ隣の屋敷であったのだ。

見覚えのある景色が続いていたことから嫌な予感がしていた小春であったが、悪い予感とは当たるものである。



「小春、どうした?何か問題か?」


「い、いや、何でもないわい・・・ちゃちゃっと済ませるぞな!」


「さすが小春さん!頼もしいね!外法使い続けるのは相当辛いだろうに」


「そんなことは問題ではないわい。で?どうやって侵入するのじゃ?」


「隠身をしているとはいえ、正面から入るわけにはいかないからね。裏門から入るのさ!」


「裏門?」


「貴族の屋敷ってのはよ、大抵裏にも門があるんだよ。裏門は、メイドとかが出入りするためのもので、正面よりは目立たないんだ!」


「それでも鍵くらいかかっておろう?」


「そこは、このダメ親父の力の見せ所ってやつさ。さ、裏へ回ろう!」



スタールの先導で屋敷の裏へ回ると、果たしてそこには小ぢんまりとした扉があった。

小春が扉に近付いてみると、ドアノブから魔力を感じた。



「やはり扉は魔力で施錠されておるぞな?」


「そうさ、貴族の屋敷ともなると、普通の鍵なんてちゃっちいもんじゃないだ。さて、腕が鳴るぜ~!」



腕まくりをしたスタールが扉を前にして精神を集中させる。


「精霊さんすんませんけど、この俺に力貸して下さい!」


そう呟くスタールの指先に複数の法陣が絡み合って現れた。



「ほぅ、なかなか上級の施錠じゃの?」


「さすが小春さん、分かるかい?ま、ちょいと見ててちょうだい、なっ・・・っと!」


スタールが意識を集中しながら、絡み合う法陣をバラバラに解いていく。


「・・・っと、これがこうして・・・おっと、これはトラップだから・・・で、こいつとこいつをぶつけ合って・・・これを回すと・・・」


ーガチャン


「一丁上がりっと!」


「ほぅ、なかなかやりおるのぅ!」



滞りなくピッキングに成功したスタールに、小春は純粋に感心してしまった。

おおざっぱな小春であれば、施錠法陣ごとぶっ壊すくらいしかできないものであるが、スタールは見た目にそぐわずかなり器用であるようだった。



「どうだ、父ちゃんすげーだろ?」


「ふむ、正直、見直したわい」


「いやはや、小春さんに褒められるとは鼻が高いね~」


「その技術を真っ当に使えれば大したもんなんじゃが」


「それは耳が痛いねぇ・・・ははっ」



侵入先は果たして屋敷裏側であり、いわゆる勝手口のようなドアが見えていた。



「そこから入るのかの?」


「いや、勝手口は調理場に通じているだろうからダメだよ。調理場には人がいるだろうからね。他の出入り口か窓から入ろう」


「ふむ、良かろう」


「隠身かけてるとはいえ、小春さん落ち着いてるね~」


「ビビるようなことかの?」


「見たかったら、死刑にされちゃうかもしれないんだぜ?」


「ならば、無駄口叩いてる暇なんぞないの。さっさと済ませるぞな」


「「ごもっとも」」



冷静な小春の突っ込みに汗を流しながらも、親子は侵入経路を模索する。



「ワンダ、人の気配はあるか?」


「・・・うーん・・・やっぱり勝手口の先には三人くらいいるよ。あとは何か作業してる様子の人が一人、いや二人いる。二階には・・・角部屋に一人いる。座って俯いてる・・・本を読んでる・・・?父ちゃん!」




意識を集中させていたワンダの顔がパッと明るくなった。


「それだ!二階の一人がシャーリーンだ!」


「む?分かるのか?」


「こんな真っ昼間に作業しないで本読んでるなんざ、メイドや使用人には許されんだろ?遊んでられるのは家主の家族だけだろうさ。よし、二階へ急ごう!」



ワンダの検索により、人の気配のない窓を選び、スタールが窓を開ける。窓には鍵がかかっていなかった。



「窓は鍵がかかってないんじゃの?」


「ふーむ、敷地内への防犯対策はしてないようだね・・・まぁ、セレブ区で泥棒やる奴なんていないだろうしね」


「そんなもんなのか?」


「セレブ区歩いてるのなんて金持ちしかいないし、貧乏人は二層にすら入れないからな。門さえ鍵かけときゃ安全だと思ってんだろ?金持ちなんて、そんなもんさ」


「ワンダの言ったとおり人はいないようだ。今のうちに二階へ行こう!」


小春たちが侵入した屋敷はアーノック家ほどではないにしろ、さすが貴族の屋敷といったところで、庶民の家と比べればその広さはかなりのものである。

部屋の数を数えれば「何人家族?」と聞きたくなるほど多い。ワンダの検索がなければ、片っ端からドアというドアを開けてみなければならず、時間がかかっていただろう。



「こっちこっち!」


先導するワンダが奥の扉の前で手招きをする。



「ここにシャーリーンが・・・」



扉の前でスタールが生唾を飲み込む。



「それでは、術を解くぞな」


「ちょ、ちょいと待ってくれ小春さん!何だか緊張してしまって・・・」


「何言ってんだよ、父ちゃん!?」


「いや、何となく怖いっていうか何ていうか・・・」


「はぁ!?」


扉の前でもじもじするスタールに、ワンダも小春も声が大きくなってしまった。



「どなたです?」



扉の内側から声がする。こちらの声が聞こえてしまったようだ。



「しーっ!!ワンダも小春さんも声が大きいよ!」


「「誰のせいだ!!」」


「ぅわ!?」


ワンダと小春が左右からスタールの尻に蹴りを入れるとスタールは部屋の中へダイブしてしまった。


「だ、誰!?・・・って、父ちゃん!?」


「オス・・・元気だったか?」



颯爽と現れる予定だったが、今のスタールは床に突っ伏して顔と蹴られた尻が上がっている情けない姿である。


「・・・父ちゃんは相変わらずみたいね」


「ははっ、元気そうで何よりだ」


「父ちゃん、早くしろよ!」


「兄ちゃんまで!?何しに来たの!?」


「そりゃぁ決まってるだろ・・・どっこいしょ。

お前を助けに来たのさ!」


「はぁ?」


キメ顔をするスタールであったが、シャーリーンの反応は鈍かった。



「助けって・・・あたし別に困ってないけど?」


「「え!?」」



予想外の言葉に、開いた口が開きっぱなしの二人。

小春は家族の再開に水を差さないように気配を消したまま事の成り行きを見守っていたが、些か予想外の展開になっている。



「で、でもあれだろ?こ、こんな所に閉じ込められてんだろ!?」


「閉じ込められてる?そんなことないけど?」


「自由に出歩くこともできんだろ?」


「出来るけど?」


「・・・じゃあれだ、粗末な飯しか食わせてもらってないだろ?ゴミみたいな?」


「それはレスホープタウンでの話でしょ?ここでは毎日がごちそうみたいなもんよ!おいしくて甘くてたーくさん食べれるよ!」



スタールがまじまじと愛娘を観察すると、確かに肌艶が良くなっているように見える。

一緒に暮らしていた時はパサついていた茶色の髪も、今は光沢すら見える。



「でもでもあれだろ?躾と称してイジメられてんだろ?メイドとか家庭教師とか、あの爺とかに!」


「あたし、ストレイダー家唯一の後継者だよ?そりゃあもう宝物みたいに扱われてるよ」


「・・・」


「美味しいものを食べて、広いお風呂に入って、ふっかふかのベッドで寝れるんだよ。もう、捕まる心配なんてしなくて良いんだ。泥棒の手伝いなんてもうできないよ!」


(こんな幼子にも盗人の手伝いさせてたとは・・・)



気配を消している小春が若干呆れてしまう。



「いやいや、そんなこと言わずにだな・・・ワンダ、お前からも言ってやれ!」

「・・・ウマイ食い物、風呂、ふかふかベッド・・・」


「ん?何だ?ワンダどうした?」


「オイラもウマイ食い物、風呂、ふかふかベッド・・・」


「くそ!ワンダが生活格差にやられちまった!ここにこれ以上いるのは危険だ、ほら、帰るぞ!」


「ちょ、ちょっと!父ちゃん!?」



スタールがシャーリーンの手を引くが、その手を振り払われてしまう。



「どうした?帰るぞ?」


「あたし帰らないよ!」


「何!?」


「帰るメリットは?あたしがあの汚い家に帰るメリットはあるの?」


「メ、メリットって・・・自分の家に帰るのにメリットも何もないだろう?」


「ここで暮らす以上の何があの家にあるっていうの?」


「そ、そりゃぁ・・・家族の絆?みたいな」


「言ってて恥ずかしくないの?子供に泥棒の手伝いをさせることが父ちゃんの言う絆なの?」


「うぐっ!?」


「あたしここに来て分かったんだよ?泥棒って結構悪いことなんだよ!父ちゃん、それあたしに手伝わせてたんだよ!?」


「い、生きるためだ!俺だって好きで泥棒やってるんじゃないぞ!」


「ふーん、そうかな?仮病使っていつまでも日雇いの現場行ってなかったよね?泥棒しには出掛けるのに!」


「そ、それは・・・」


「もういい!あたし帰らないから!

父ちゃんはもう帰って!!」



娘から完全に拒絶されてしまい、もはやスタールは二の句も告げることができなくなってしまった。



「シャーリーン、本当に寂しくないのか?」


「あたしは大丈夫だよ、兄ちゃん。・・・父ちゃんをお願いね」


「お前、本当にそれで良いのか?」


「うん、もう・・・決めたんだ」


「決めたって何を?」


「お嬢様!誰か部屋にいらっしゃるので!?」



シャーリーンが決意した何かを聞き出そうとするが、物音に気付いたメイドが部屋に来てしまう。


「開けますよ、失礼します!」



部屋に入ってきたのは、メイドだけではなく、武装した護衛が二名。

その二名がスタールとワンダを認めると、剣を抜いて臨戦態勢となる。



「なんだ貴様ら!どこから入った!?」


「大人しく投降しろ!」


「待って!その者らは私の客人よ!」


「は、お嬢様のお客人ですか・・・?しかし随分と・・・」



皆まで言わなかったが、言いたいことは小春にも通じていた。

貴族の客人としては、親子の格好はお粗末にも程があるくらいに汚いのだ。



「余計なことは考えなくていいの。

この方々はお帰りになるところです。層壁門まで送って差し上げて」


「シャーリーン!話はまだ・・・シャーリーン!!」



後ろを向いてしまったシャーリーンはもはや話をする意思はない。



「ささ、お客人、行きましょう!」



スタールとワンダは、半ば強引に退室させられてしまった。


「お嬢様、あの二人は元のご家族では・・・?」


「このことは、お祖父様には内密に。

・・・一人にして」


「・・・畏まりました」



一礼をしてメイドが出ていくと、部屋には静寂とシャーリーン、そして気配を消したままの小春が残された。



「まったく、あのバカ親父!娘の気も知らないで!

・・・こんな危険なことまでして・・・王都最後の思い出になったな・・・」


「それはどういう意味ぞな?」


「だ、誰!?」



急に聞こえてきた声に振り向くと、見慣れない服に包まれた女の子が腕組みをして立っていた。


「あんた誰!?」


「わしは小春。あのダメ親子と共に侵入した者じゃ。この身は気配を消しておっての、先程までのことはじっくり見させてもらったぞな」



小春がそう言うと、シャーリーンは落ち着きを取り戻した。



「ふーん、なるほどね。屋敷に入れたのは、あんたのお陰だったってことね。話には聞いたことあったけど、隠身って本当に気付かないもんなのね。

・・・で、あんたの目的は何なの?」


「・・・お主、見た目の割りに擦れとるの・・・。

わしはただ成り行きで手伝いをしただけじゃ。目的はここまであの親子を連れてくること。もはやそれは果たされたわい」


「ふーん、成り行きでねぇ。成り行きだけで、貴族の屋敷に不法侵入するほど、あんたお人好しなの?」



シャーリーンが小春の足元から頭までジロジロ訝しむ。



「そうじゃの・・・何でこんなことしとるのか、わしにも分からん」


「はぁ?」


「わしはただ、街で・・・はて?わしゃ街で何を探しとったんかの?」


「知らんわ!」



当初の目的を言おうとするが、それが何だか思い出せない小春であった。



「まぁ、わしの目的は置いといてじゃ。先ほど、街でかっぱらいをしたワンダに出会っての、その後、あばら小屋に連れて行かれて、なし崩し的に手伝うことになったんじゃわい。うむ、そうじゃったそうじゃった。」


「は?父ちゃんや兄ちゃんと今日知り合ったばっかなの!?それでこんな危険を冒してんの!?」


「まぁわしには危険ではないがの。

ただ・・・これが金銭目的じゃったら手を貸すことはなかったろうがの」


「え?」


「愛娘を貴族から取り戻すと聞いて、わしゃ手を貸すことにしたのじゃ。

・・・大切な者を失った気持ち・・・わしにも解るからの」


「・・・」


「スタール達との会話を聞いておったがの・・・お主、本当は帰りたいんじゃないかの?」


「!?」


「違うか?」


「・・・どうしてそう思うの?」


「スタールやワンダと話すお主が随分楽しそうに見えたのでな。本心に逆らって、ここに残らねばならん理由でもあるのかと思っての」



じっと小春を見詰めるシャーリーンであったが、ふとその雰囲気が柔らかいものになる。



「ふっ・・・あんた凄いね。小春って一体何者?」


「わしか?わしはただの魔法が使える小春じゃ!それ以上でも以下でも以外でもないわい!」


「ま、魔法!?小春って、外法じゃなくて魔法が使えるの!?あのお伽噺の!?」


「そうじゃ。わしはの・・・古の魔女じゃからの!」


※※※


「へぇ~、魔女って本当にいたんだ。あたし初めて見たよ!」


テラスでジュースを飲みながらまったりしている二人。シャーリーンに気に入られた小春は、今やシャーリーンのおもてなしを受けている。



「そりゃ初めてじゃろうの、わしゃ最近ようやく復活できたんじゃからの」


「復活して何してるの?世界征服?」


「そんなもんは卒業したわい。五千年も経てば大人になるもんじゃ」


「大人って・・・あたしと変わらない子供じゃん」


「このナリはの、復活が十分じゃないからじゃ。本来はの、傾国の美女と言われとったんじゃぞ!」


「ふーん」


「あ!信じとらんな!!」


「信じてるって!美女だったかどうかはともかく、そんな見た目でここまで侵入してくるなんて、正気の沙汰じゃないもん!」


「わしが狂っとるみたいに聞こえるの・・・」


「で?世界征服を卒業した古の魔女は、今度はどうしようっての?」


「うむむ・・・ふん、まぁ良い。聞かせてやろうではないか!」


※※※※※※※※※※※※※


ー30分後


ジュルルルル

二人のグラスのジュースは空になってしまったが、話に夢中な二人はそれに気付くことなくストローを吸い込む。


「で、なし崩し的にその怠惰なニセ魔神と一緒にいるってわけ?」


「そういうことじゃ」


「ふーん」



小春は復活してからの今までをかいつまんでシャーリーンに話した。その間、ジュースが入ったピッチャーは空になってしまっていた。



「小春は凄いね・・・大好きな人に会いたくて、五千年もかけて復活するなんてさ。

ふふ、でもせっかく再会できた人が別人ってショックだったよね?」


「・・・そうじゃのぅ。初めてそれを知った時は、そいつを死なん程度に殺して、死にたくなるような拷問をかけて、五千回くらいぶち殺そうと思ったんじゃが・・・」


「死んでる死んでる。最初に殺しちゃってる。

じゃが?」


「あいつはの・・・バカなんじゃ。大バカじゃ。それにいい加減で覇気のない屍のようなダメ男で常識の欠片も持ち合わせず口と目付きと柄が悪いんじゃ」


「・・・小春の毒舌って、結構キツイよね。

で?そんなバカなのにどうして小春は離れないの?」


「・・・ぽかぽかじゃ」


「うん?」


「一緒におると、胸が・・・ぽかぽかするんじゃ」


「・・・ぽかぽかねぇ・・・」



赤くなって俯く小春。そして、遠くを見詰めるシャーリーン。



「・・・なんか、解るわ」


「わ、解るのか!?」


「うん・・・話聞いただけだけど、そのバカ魔神さんって、父ちゃんに似てるんだ」


「スタールに・・・」


「普段は、ほんっとーにダメダメ親父でさ!子供に泥棒手伝わせるようなダメっぷり!腕っぷしも全然弱くてさ、度胸もなくて、ダラダラしてばっかり!」


「た、他人事とは思えん・・・」


「・・・でもさ、父ちゃんめちゃくちゃ優しいんだよ。

あのね・・・あたし、父ちゃんの本当の子供じゃないんだ」


「何!?」


「あたしもこの屋敷に来てから知ったんだ。

母ちゃんは『マーナオ』っていう港の領主の息子に嫁いだらしいんだけど、その息子ってのが酒乱の乱暴者だったみたいなんだ。

それであたしを妊娠した母ちゃんは、妊娠の報告のために王都へ戻った隙に逃げたみたいなんだ。それでレスホープタウンで父ちゃんに出会って、隠れて生活してたってわけ」


「なんと・・・しかし、結局見つかってしまったというわけじゃな?」


「そこは色々あってさ・・・」


「色々、とな?」


「これを読んで・・・」


差し出されたものは、使い込まれたノート一冊。

訝しみながらも、小春は一枚一枚めくっていった。



※※※※※※※※※※※※※※


「うーん!今日はいっぱい話してスッキリしたよ!同世代の友達と話す機会なんて全然なくてさ!ありがと小春!」



事情を話終えたシャーリーンは、ツキモノがとれたかのようにスッキリしていた。

そして、話を聞いてくれた小春に親近感がわき、シャーリーンのなかでは十年来の友達のような感覚になっていたのだ。

年齢は7歳だが。


「同世代って、わし五千歳越えとるんじゃが・・・まぁ、お主がスッキリしたなら良かったわい」


「・・・ねぇ、離れてもあたし達、友達だよね?」


「離れても?何を言っておる?いつでも会えるじゃろが?」



元気いっぱいだったシャーリーンの顔色に陰が差し込む。



「ううん、そうはいかないんだ。

・・・あたし、近いうちにマーナオへ行くんだ・・・」


「な、何!?」


「本当の父ちゃんの所へ行かなきゃならないんだよ」


「し、しかし、お主の実の父親は乱暴者なんじゃろ?お主の祖父は、そんな者の所へ孫をやろうというのか!?」


「じいちゃんは、その領主に逆らえないんだ。母ちゃんが嫁いだのは、経済的に傾いていたこの家の支援のための政略結婚だったらしくてさ・・・生きてることが分かった以上は行かなきゃならないんだ」


「そんなこと・・・そんなことは他が許してもわしが許さん!!」



ガタンと椅子から立ち上がり、小春が禍々しい気を発する。



「小春!小春、ストーップ!落ち着いて!そのヤバいオーラ消してあたしの話聞いて!あたしはそれで良いの!!あたしが納得してるんだよ!」


「な、何ぃ!?何故じゃ!何故納得なんぞ!?」


「あたしがここにいると、今日みたいに父ちゃんがあたしを取り返そうとするでしょ?今日はうまいこと丸く収めたけどさ、次は分かんないじゃん?

大事(おおごと)になっちゃうと、父ちゃんも兄ちゃんも捕まっちゃうよ。そんなこと・・・そんなのあたしヤだもん」


「じゃが・・・じゃからといって、お主が犠牲になってどうする?そんなこと、あ奴らは喜ばんぞ」


「犠牲なんかじゃないって。あたし納得して行くんだよ。

酒乱の父ちゃんは母ちゃんが出ていってからお酒止めたらしくてさ。人が変わったみたいに領地のために頑張ってたんだって。今は領主を継いで良い領主様になってるみたいなんだ。

母ちゃんと見つかったときなんて、大声で泣いてたんだよ。『すまなかった』って何度も言ってさ。母ちゃん死んじゃったときも、大きな体を小さくしてさ・・・」



話しているうちに、シャーリーンの声が霞んでいく。



「そんな父ちゃん一人にしとけないしさ・・・本当の父ちゃんと一緒に暮らしてみようって思ったんだ・・・それに・・・港町で贅沢な暮らしってのも・・・悪く・・・ないって・・・このじいちゃん家よりも、すごい金持ちなんだよ・・・ほら・・・楽しみじゃん?」


「・・・楽しみなら、何故泣く?」


「泣いてなんか・・・ないって・・・あたしは・・・あたしは・・・!」



震えるシャーリーンの肩を小春が静かに抱き寄せる。



「お主の覚悟は解ったわい。しかし、わしに虚勢なんぞ必要ないぞな・・・わしは・・・お主の友達じゃろ?」


「小春・・・う・・・ぅわーん!行きたくない!行きたくないよー!あたしは父ちゃんと兄ちゃんの所が良いーっ!ぅえーーーーん!!」



シャーリーンの泣き声は屋敷中に響き渡るほどの爆音であったが、それを諌める者も止める者もいない。

シャーリーンが泣き止むまで、小春はただただシャーリーンを静かに、そして優しく包み込んでいた。


※※※


「あ~!メチャメチャスッキリしたー!」


泣き終えたシャーリーンは伸びをしながら、恥ずかしさを紛らわすかのように大声を出した。


「そりゃぁスッキリもするじゃろな。あんなデカい声出して泣けばの!」


「ぁあぁあんもう!それ言わないでよ!!すっごい恥ずかしいんだから!」


「今さらじゃわい」


「んもう!小春のイジワル!!」



ぷくーっとシャーリーンが頬を膨らませるが、溜め込んだ空気は笑い声に変わった。



「ぷぷぷ・・・あはははは!

・・・あーあ、もっと早く小春と会いたかったな~」


「・・・覚悟は変わらんのか?」


「うん。むしろ固まったよ!あたしには、父ちゃんも兄ちゃんもいる。そして、こんな友達もいるんだもん!もうどこへ行っても恐くなんかないよ!」



そう宣言するシャーリーンに涙の跡は残っていたが、その顔にはもはや悲痛な思いや迷いはすっかりなくなっていた。



「・・・そうか、解ったぞな」



そんなシャーリーンの顔を見詰める小春は、もう引き留めはしなかった。この幼い女の子の勇気を、天晴れな心意気を眩しくすら思えたのだ。



「我が友シャーリーンよ、これを」



小春が虚空から取り出したのは、見事な意匠が施された紫色の指輪であった。



「ど、どこから出したの!?それも魔法!?」


「まぁの、これも初歩的な魔法の一つじゃの」


「へぇ~、魔法ってすっごい便利~!

それで?その指輪は?」



目をキラキラさせながらシャーリーンが差し出された指輪を見詰める。



「まずは嵌めてみるが良い」


「え~、何だか怖いな~。でも綺麗だね!」



恐る恐る指輪を手に取りながらも、シャーリーンが自分の小指に指輪を嵌める。



「あれ!?大きいと思ったけど、嵌めたらピッタリ!」


「それはわしの魔力を込めた指輪じゃ。サイズなんぞ合わせられるわい」


「で?で?それで?これで飛べたりするの?火出る?」


「飛べんし、火も出んぞな。それはの・・・願えば町一つくらい消し飛ばすことができる魔力が込められとるんじや!」


「え?ちょ、ちょっと!!七歳に何て物騒なもの持たせるのよ!?あ、あれ?外れない!!」


「それはわしの意思がないと外れないぞな」


「嘘!?小春!外してよ!!」


「・・・安心せい。用途は変えておる。爆発なんぞせんわ!」


「・・・おいコラ、わざとビビらせたな!」


「はっはっは!お主は本当に表情が豊かじゃのぅ、からかい甲斐があるわい!」


「ぐぬぬぬ・・・小春のイジワル!」



シャーリーンは腕を組んで、またもや頬を膨らませてプンプン顔になる。


「はっはっは!

・・・その指輪はの、餞別じゃ。昔、さるお方から頂いたものじゃが、お主に授けるわい。

えーと・・・あぁと・・・その・・・友情の証じゃ」


腰に手を当て高らかに笑う小春であったが、最後の方はもにょもにょしてしまった。


「小春・・・ありがとう・・・大切にする・・・大切にするね!」




「さて、わしはお暇するとしようかの・・・」


「あ、ちょっと待って小春!」


シャーリーンがシュルリと結んでいたリボンを解いて、小春の髪に結ぶ。


「あ、ちょ、ちょいと・・・」


「はーいはい、うーごーかーなーいー!

・・・よしっと!」


セミロングの銀髪に、真っ赤なリボンが映える。



「そのリボンは、お母ちゃんから貰った大事なリボンなんだ。あたしからの友情の証!

大切にしてよね!!」


「そんな大事な物・・・良いのか?」


「大事な物だからこそだよ!小春にもらって欲しいの!」


「・・・うむ、分かったわい」


「そーれーかーらー!」


「む?何じゃ?」


「私からのアドバイス!」


「ア、アドバイス?」


「そう!ねぇ小春、あなたダメ魔神好きなんでしょ?」


「な!ななななななな、何を申すのじゃ!?」


「どんだけ分かり易いのよ、あんた・・・。

ふふ、会ったことないけど、魔女が恋する相手って興味あるわ~!」


「じゃから、誰がこ、こここここ、恋なんぞ!」


「はい、それがブー!」


「は?」


「ダメ~!バツ~!ざんねーん!」


「な、何じゃ!?」


「ふせーかーい!」


「だから、何じゃというに!」


「そんなこねくり曲がりくねった根性じゃあダメって言ってんのよ!そんなんじゃ、好きな人に振り向いてもらえないよ!」


「こ、こねくり・・・わ、わしの」


「ちゃんと聞く!!」


「は、はいじゃ・・・」


「よろしい!

要は、素直になれってことよ!後悔してからじゃあ遅いんだから、ね?

小春は確かに魔法が使える凄い魔女なのかもしんないけど、恋愛話ならあたしの方がよく知ってるんだから、マブダチであるあたしの言うとおりにしなよ!」


「い、いや・・・わし五千歳を過ぎとるんじゃが」


「恋愛に歳は関係ないの!

毒舌が過ぎるとはいえ、小春は可愛いんだから自信持って、素直になりな!」


「・・・ふっ、分かった。マブダチの言葉、しかと刻みこんだわい」


「うん!

・・・また会えるよね?」


「勿論じゃ。会いたいときは、そう願うが良い。お主の友、魔女小春がすっ飛んでくるわい!」


「うん!約束だよ!!」


「あぁ、約束しようぞ!」



少女二人の小指は、優しく、そしてしっかりと結ばれた。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



バァン!


「無事帰っておったか!」


「「うわぁあ!!」」


突然自宅の扉を開かれて驚くエルフの少年と中年。

そこは、レスホープタウンのあばら小屋。

シャーリーンの奪還ならずであったスタール・ワンダ親子は、ひとまず自宅に戻っていたところであった。


「こ、小春!どこ行ってたんだよ!?」


「そうだよ、小春さん。ワンダと探し回ってたんだよ?」


「はぁん?わしを誰だと思っとるんじゃ?心配なんぞ無駄じゃわい!

それより、ほれ!」



威張る小春に親子が引いていると、ポンとノートを手渡される。



「こ、これは何だい?」


「これはの、シャーリーンからお主らに渡すよう託されたシャロンの手記じゃ」


「な!?シャロンの!!」


「小春はシャーリーンと話したのか?」


「まぁの、あいつとはマブダチになったわい。

それよりも、その手記にはお主らが知らなければ良かったと思うことが書いてあるやもしれん。しかし、お主らは読まねばならぬ。心して読むが良い」


小春の言葉を受け、スタールはしばらくノートを見詰めたまま動かなかった。


「父ちゃん・・・」


「真実はいつも良いものとは限らん。時には苦しめるものとなることもある。知ったところで、シャロンは戻らん。そして、シャーリーンもな。

じゃがの、心持ちを知って欲しくてシャロンはその手記をたしなめ、シャーリーンはお主らに手渡すよう、わしに託したのじゃ」


「シャロン・・・シャーリーン・・・」


「それにの・・・シャーリーンはマーナオへ行くのじゃ」


「マ、マーナオ!?あんなアル中の所へ戻るというのかい!?」


「そうじゃ。わしはその覚悟をしかと認めた。まだ7歳のあ奴は、腹をくくって、それでいながら明るく前を向いてマーナオへ行くのじゃ。怖くても寂しくても、あ奴は笑って立ち向かうのじゃ。

さて、お主らはどうするのかの?」


「・・・」


「オイラ読む!読みたいけど・・・オイラ字が分からないんだ・・・父ちゃん、読んでくれよ!父ちゃん!!」


「・・・分かった、読もう・・・」



スタールが震える手でノートをめくる。



「これは・・・マーナオに嫁いだ所から始まっているようだね・・・少しだけシャロンから聞いてはいたが、あの野郎酷いことしてたもんだ!」


「その辺は後でゆっくり読んだら良い。最後の手記を読むんじゃ」


「あ、あぁ、最後ね・・・」




『愛するスタールとワンダへ


この手記をあなた達が読んでいるということは、恐らく私は女神の元に召されていることでしょう。

最期にあなた達に会いたかったけど、そうはいかなかったの。ごめんなさい。だから、せめてこの手記であなた達に真実を知って欲しいと思い、筆を取ります。


私は1年前、フレゲニア病にかかってしまってえることが分かったの。薬で何とかしようと思っていたけど、病状は悪化していくばかりだったわ。それでも、あなた達の元で死ねるなら本望だったのだけど・・・シャーリーンまでもがその病にかかってしまった。

大人の私は抵抗力があったけど、子供のシャーリーンには抵抗力が少なくて病の進行が早くて命の危険があったわ。

それで私は、実家を頼ることにしたの。ストレイダー家であれば、症状が悪化する前に治療してもらえる。最新の治療を受けれると思ったの。

勿論、苦渋の選択だったけど、シャーリーンの命には換えられなかったわ。


でもね、ストレイダー家は貴族という(てい)を辛うじて守っている状態に過ぎなかった。マーナオ家からの援助を断たれていたせいで、最新の治療を受けられるような余裕もなかったの。

それで、お父様はマーナオ家を頼る選択をしたわ。改心したと聞いていたけれど、それでも本当は選びたくない選択ではあったことは私は勿論、お父様も同じだったのよ。それでも・・・それで・・・


あーもう、ダメ!

最期だから、理想の妻・母親みたいにしようって思ったけど、ムリだわ、ムリ!あーもう、やってらんなーい!』



「・・・え?」


「終わってる・・・」


「安心せい、次のページに続きはあるぞな」


「そ、そうか・・・安心したよ」



言葉とは裏腹に、スタールの顔には青い線が引かれたままであった。



「しかし、何というか、シャロンは変わったオナゴじゃの」


「ははっ、そつだね。シャロンは貴族の娘らしからぬ奔放な性格でね・・・まぁそこが良いところだったんだけど。

正直、冒頭の部分はシャロンっぽくなくて気持ち悪いくらいだったよ。最後の方があいつらしい。」


「次のページからは、お主が言うシャロンっぽい感じてで続いておるぞ」


「ははっ、それは安心だね。さてと・・・」



苦笑いながらも、スタールは穏やかな目を再度、手記に落とした。



『ペン投げたらシャーリーンに怒られちゃったよ。

「ちゃんと書いて! 素で良いから!」だってさ。

あの子もしっかりとしてきたねぇ。


あ、そうそう、続きね。

スタール、あんたには言ってなかったけど、シャーリーンを妊娠した私に、逃げるように助言してくれたのってお父様だったんだ。レスホープタウンなら見つからないって教えてくれたのもお父様。

頼りにならなそーで、肝心な時にあたしを何とか守ってくれてたんだ。そーゆーとこは、あんたにソックリかもね!


そんでさ、旦那は噂通り断酒してて超反省してたんだ。

だからって許してやるわけじゃないけど、ちょびっとだけは許してやることにして、さっさと最高峰の治療受けることにしたんだけどさ。

あたしは病の進行が超早くて、もう手遅れ的な感じだったみたいなんだ。マジ超ブルーだったよ。全然ウケねーって感じ。

でもシャーリーンは間に合ったんだ。それだけだも超助かった。

ホント、良かった。


馬鹿みたいに高い薬飲んでればあたしも少しは延命できるらしいけどさ、あたし断ったよ。旦那は『償いだ』とか言ってさ、遠慮すんな的なこと言ってくれたけど、そんなんで延命したくなかったしさ。


治療が済めば、シャーリーンは選択をすることになると思う。

王都に残るか、マーナオへ行くか。

あたしは本人が望むようにすれば良いと思う。

シャーリーンは悩むかもしんないけど、あの子の意思を尊重してやりたいんだ。

だから、スタール、ワンダ。あんたらもシャーリーンの意思を尊重したげて。

選ぶ選択肢はきっと、あの子の大事な思いが詰まったもんだと思うから。

これ、あたしの一つ目のお願いね。



二つ目のお願いもあるよ!

いい加減、足洗いな!!

確かに、こそ泥の手伝いはハラハラドキドキしてさ、結構楽しめたけど、やっぱ子供にやらせんのはダメだわ。

それにさ、スタールの解錠もワンダの検索も、もっともっと人の役に立つもんだって思うんだ。

こそ泥なんて辞めて、世界でも救ってみな!


三つ目!

そんな嫌な顔しないでよ、これで最後だからさ。

幸せになって。

これが一番大事なこと。

あんた達三人はあたしの宝物。

どんな形でも良いから、幸せに暮らしてね。


あたしは女神様じゃないけどさ、あんた達のことずっとずっと見守ってるよ。


幸せな時間をありがとう

スタール、ワンダ、シャーリーン、愛してるよ!』




「シャロン・・・」


「か、母ちゃん・・・」


読み終えたスタールも、聞いていたワンダも涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃになっていた。


※※※※※※※※※※※※※※※※



「小春さん、本当に世話になったね。」


「小春あんがとよ!」



落ち着きを戻した親子が、部屋の傍らで佇んでいた小春に声を掛けた。


手記を読む二人の邪魔をしないように出て行こうか悩んでいた小春であったが、このまま立ち去ることに抵抗を覚え、二人が落ち着くのを見守ることにしていたのだ。



「ふむ、もう大丈夫かの?」


「良い大人が恥ずかしい所をお見せしてしまったね。涙なんざとうに枯れていたと思っていたが、はは」


相変わらず頭をポリポリ掻く仕草はダメ親父の雰囲気ではあったが、スタールはどこかスッキリとした表情になっていた。


「本当にありがとう!」


「礼には及ばん。好きでやったことじゃ」


「小春・・・オイラ達親子はこそ泥だけどよ、小春が困ったことあれば呼んでくれよ。」


「そうだよ、小春さん。俺達はケチなこそ泥だけど恩は必ず返す。小春さんのためなら、国宝だってかっばらってみせるよ!」


「ふむ、気持ちはしかと受け止めたわい。いつかその命をわしのために捧げてもらうとするかの!」


「い、いや、死なない程度で痛くない方法で恩返しさせて頂きますです」


「かかっ!お主らしいわい!

じゃあ、達者での!」



そう言い残し、不敵な笑みを浮かべた銀髪の少女は、大聖堂の前から飛び立っていった。



「なぁ、ワンダ。小春ちゃんは結局のところ何者だったんだろうな?女神様の生まれ変わりとか?」


「へっ!何言ってんだよ父ちゃん!小春は小春だろ!シャーリーンのマブダチの小春だよ!」


「・・・ははっ、そうだな!ありがとう、小春さん」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


二日後。

ストレイダー家の屋敷に数台の馬車が到着する。

そのうちのいくつかの馬車には荷物が積み込まれていく。

馬車の周りには、武装した厳つい者が辺りを警戒していることから、用心棒であろう。

隣のアーノック家屋敷の上空から、その様子を窺う偽少女が一人。その顔には表情という表情は感じとることができないが、それは本人が意図して感情を殺しているせいなのかもしれない。


最後の馬車が屋敷の玄関に停まる。

すると、屋敷の中から一人の少女が出てくる。

少女は屋敷を振り返ると、一瞬だけその目を空に向ける。

屋敷の少女と上空の少女の目線が交錯したかのように、その一瞬だけ時間が止まったかのように二人には感じられた。

屋敷から出てきた少女は、小指に嵌められた指輪を一撫ですると少しだけ微笑み、馬車に乗り込んだ。


「またね、小春」


馬車に乗り込む少女は誰に言うでもなく呟いた。

上空の少女は、銀色の髪を纏める真っ赤なリボンに手をやり、少しだけ微笑んだ。


「ふん、また会おうぞシャーリーン」


小さく見えなくなってゆく馬車を小春はしばらくの間、空から見詰めていた。

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