作者、パラサイトを振り替える2
桃の花の咲き乱れる美しい桃園…
目の前には、深い藍の絹の高襟の作者。
陶性の美しいテーブルにノートを広げてブツブツと言ってますが、
頭はオールバックのお団子ヘアーなので、混乱しても頭をかきむしる事は出来ません。
今回は、私も立派な髭を生やした身分の高い男の役なので、
お茶は、桃の精に運んで貰うことにしました。
緑色の烏龍茶で、白磁に桃の花を浮かべた美しい飲み物です。
甘味はやはり、月餅でしょうか。
白餡に桃を練り込んだ、優しげで上品な甘さのある、そんなお菓子です。
「殿……少し休みませんか?」
しばらく様子を見ていた私が声をかけると、
殿と呼ばれて混乱する作者が顔をあげた。
「6話辺りから、やられているわ(-_-;)
これは、厳しい戦いになりそうよ。」
作者は難しい顔でお茶をグッと煽るように飲み干した。
すると、横から桃色の薄絹をまとった精霊が、銀の急須でお茶を継ぎ足しました。
作者の中華の世界は、美しい女性がチヤホヤと世話をしてくれるようです。
「で、具体的には、どんな戦いが予想されるのでしょうか?」
私は戦国武将の様な言い回しで、少しだけ作者を現実逃避へと誘います。
「わからないわ…(-_-;)
でも、初めての推理エリアだし、うまい下手ではなく、池上を救出しての劇終であれば…とにかく、エンディングさえ、基準に合えばいいから、
今回は、ミステリーの王道パターンを使おうと思うわ。」
作者はため息をつく。
「王道パターン?」
「つまり、なろう用語のテンプレってやつ。」
「なろうテンプレ…異世界ちーと?ですか??」
「な、分けないでしょ(-_-#)
もう、わざとでしょう。」
作者はそう言って私を軽くにらんだ。が、そこには笑いがなく、少し疲れたような顔で、なんだか、変な事を言ったのを少し悔やんだ。
「すいません。でも、ミステリーのパターンと言っても、トリックやら、何やらを何処からか借りてくるのですか? さすがに、公募に応募しているので、それは、ダメですよ…。」
私は疲れた作者が、何をしたいのか考えた。
ミステリーで一番重要なのは、やはり、トリックや謎解きです。
しかし、これを何処かの作品から拝借したら、問題です。
比較的、問題にならないのは、歴史的な事件を犯人が参考にする場合ですが、
既に5万字を越えたこの作品の、しかも、虫を使った失踪劇なんて、歴史をさらっても登場しそうにありません。
SFミステリーは、比較的、新しいジャンルですから、なかなか著作権をクリヤーする事件を登場させるのは至難の技です。
そんな迷える私を見つめながら、作者は月餅を美味しそうに味わって、
烏龍茶を今度は上品に飲んだ。
それから、疲れた顔に、仏様の様な、達観した微笑みを微かにのせてこう言った。
「………。時影…もう、私達、そんな風に悩む時期は終わってしまったのよ。
ふふふっ(T^T)
私は、昭和の凄いテンプレを見つけたの。
もう、それを参考に書くっ!」
作者は負け戦を強引に進める将のように強く言った。
「で、そのテンプレとは?」
私は嫌な予感を胸に聞いた。
作者は少し恥ずかしそうに、そのテンプレを私に叩きつけるように言った。
「林檎殺人事件(´-ω-`)」
「林檎殺人事件…私、ヒロミ・ゴウ…ですか?」
混乱しながら私は呟く。
それでは、作者は、樹木希林…
確かに、イメージはあってる気がしますが……。