第四話 俺の戦いはこれからだぜッ!!
また一年が経った。
転生してから二年と数か月。
誕生日がいつなのかわからないため正確ではないが発育の状態から見て大体三歳くらいだろう。
相も変わらず、竹の牢の中に閉じ込められている。
そろそろ狭く感じてきた。
身長が1メートル弱の俺は同世代から見れば恵まれた体格なのだろう。
ちなみに、ゴブリンの身長は大体80~110センチと小柄だ。
日頃から鍛えてるのもあってチビゴブには勝てそうだ。
まぁ、実際は奴らは武装している上に集団行動を基本としているため、正面から戦っても勝機などないだろう。
それに、そもそもだが俺には格闘の経験などないため単体でも苦戦しそうなのだ。
逃げ出すにしても、森の地理など知らんし、運よく逃げ出せたとしても他のモンスターに食われてしまう可能性が高い。
皮肉なことだが、ただ生存のことだけを考えるのならこのままゴブリンに捕まっているのが最善だと思う。
一点、疑問に思うことがあるのだが、なぜゴブカスどもは俺のことを食おうとはしないのだろうか。
食べるにしても、抵抗力の乏しい赤子の時期に襲っていれば難なく食えただろうに。量を考えてもっと成長させてから、とでも思っているのだろうか。
言っておくがそう簡単に食われてはやらんぞ。
もちろん俺は抵抗するで。
仁王立ちで両の拳を突き合わせる俺は決意を新たにする。
「ケキャキャ」
相部屋ゴブリンが死んでから今日に至るまで、ゴブリンどもは俺に虫を投げつけてくる。
昆虫はいいぞぉ。
ゴブリン母乳と比べてなんと食べやすいことか。
価値観ってのは一度ズタズタにぶっ壊されてしまえば、なんでも受け入れてくれる大きな器となる。
俺の前世から引き継いだ価値観はそのゴブリン母乳で破壊しつくされたからな。
昔は冗談だろと思った昆虫食が今ではご馳走なのだ。
最初こそ嫌がらせのように投げつけてきていた奴は、俺が虫を食い出してから俺のことを怯えた目で見てくるようになった。
くっせぇ肉団子食ってた奴らが俺のことをゲテモノ食いのように見る。
まじありえん。
───
また一年が経ち。
身長はさらに伸びた。
体格の成長により、ついに我慢の限界になった俺は竹の牢を破壊して数年ぶりの外へ出た。
「ケキャ!?」
「ケケケケキャ!!」
「ギャン!!」
慌てふためくゴブリンどもは武装して俺を取り囲む。
俺は敵意がないことを示すために、いつも持ってきてくれていた昆虫を差し出す。
すると、彼らは怒りを露わにして、低く唸って威嚇する。
それはまるで、そんなもん食うのはお前だけじゃ!とでも言いたげな様子だった。
それでも俺は誠心誠意、対話を図ろうとした。
ゴブリンへの心証は最悪だった。
体は臭ぇし飯は臭ぇし下品だし汚いし。
あとキモいし。
それでも彼らへの感謝もあった。
どういう理由かは知らないが俺を助けてくれた。
住む場所をくれ、飯をくれ。
育ててくれたのだ。
そんな、本当は心優しいかもしれない彼らとは争いたくはなかった。
これは本心だった。
そう、敵は彼らゴブリンではない。
俺の真の敵は───。
────こんな汚ぇくっせぇ場所の近くに俺を捨てやがったパパなのだ。
俺はパピーを許さない。
俺は転生してもパパを憎まなければいけない運命にあるのだ。
ああ、パチンカスだった前世の親父。
俺からの仕送りがなくなって苦しい生活強いられているだろうお前の顔を見てみたいぜ。
そういうことで俺はパパを倒さなければいけないんだ。
許せゴブリン。
未だお前たちの見分けもつかない俺だが、旅立ちます!
俺は背後の気の抜けたゴブリンへと虫を投げつけた。
あんな反応をするのだ。
多分、虫が怖いのだろう。
「ギャギャンギャン!!」
投げられた虫は自由を得たことで羽を広げてゴブリンへと特攻する。
虫ッ!お前ってやつはッ‥‥‥。
このチャンス。無駄にはしないからな!
俺は怯んだゴブリンの突き飛ばして包囲網を抜けた。
後ろは振り向かない。
体力が尽きるまで走る。
とにかく走る。
そうして俺はゴブリン村からの脱出に成功した。
森を抜けると、遠くには人里が見えた。
俺は明るい未来、そして人の温もりへと駆けだした。
FIN
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フェンリル要素必要なくてすいませんした。




