表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラックミスト ❈ 死後の世界の掟と禁忌の契約 ❈  作者: 蘭夢


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/23

交渉 〈前編〉


『ケント……ケント……?』




誰?

僕を呼ぶのは……




『賢斗……?私よ………覚えてる?』




その声は…




『急いで……時間が…ない…』




ミユキさん?!




『…見つ……かった………あれは……』




え?

よく聞こえない…


見つかった?




『い……急いで!』






─────── 急いで! ──────






「はっ!!」




ミユキさん……




「夢………?」





─── ズキッ……





「うぅっ…」




頭が痛い……


ここは……ベッド?




あの後……

おじいさんが…魂の川に入って…

そして…僕はまた、寝てしまっていたんだ……


腕に、点滴をした跡がある。

あれから…どれくらい寝ていたのか………




「11時…過ぎてる!」




部屋が暗いし、みんな寝ているから…

夜の11時みたいだけど…

あの人は…どこ?




「…おじさん?」




今の夢……ミユキさんが言っていたことが本当なら…


見つかったって……




「…追跡者に?」





─────── フワッ ───────





『…呼ん…だか?』


「あ……おじさん…?」




……本当に?

目の前に現れたのは、どう見ても…白髪の老人。


聞き慣れた滑らかな声は、掠れた声になって…

顔には、見慣れない深い皺が刻まれている。

後ろに束ねた長髪は…真っ白くなっていた。




「何が、起きた…の?」


『問題ない。君が…気にすることは…ない。』




ただ…鋭い眼だけは、変わらず…強い光を放っている。




「あの…夢を見ました。ミユキさんが夢で、見つかったって…だから、急いでって…」



『ミユキが…本当か?』



「…はい。それって……追跡者に?」



『早すぎる!…しかし、それが本当なら…明日中に行かなければ…間に合わない。』



「そんなの…無理です!」



『いや……今なら方法が無くはない…が、かなり…君に無理をしてもらうことに…なる。』



「どんな…方法ですか?」



『まず…母親に、ミユキのことを話さなければ…ならない。』



「お母さんに?……どうして?……何て、説明したらいいの?」



『説明は、いらない。ただ…ミユキに会いに行きたいと、言うだけで構わない。』



「え?…たった、それだけ?」


『そうだ。それだけで…いい。』




意味が分からない。

今更というか…




「お母さんとミユキさんは…何か、関係があるんですか?」



『…それは、母親の記憶次第だ。ミユキが動き出したということは…何かしら、母親に接触している可能性があると言える。』



「ミユキさんが…お母さんに接触?…どうやって?」



『それを私が答えることは…できない。君がすることは、母親にミユキに会いたいと…伝えることだけだ。』




よく分からないけど…

あの世界での、掟に基づく制約があるのだろう。




「分かりました。…お母さんに、電話できるか聞いてみます。」




ナースコールに手を伸ばそうとして、初めて体の異変に気がついた。



「あれ?……体が軽い…?」



一旦、呼ぶのをやめて…体を確認した方がいいかもしれない。


いつも通りに、上体から起こしてみよう。




「え?……背中にバネが入ってるみたいに、簡単に起こせた?」



左脚はどうだろう…



「すごい…痺れがない。硬くなって、筋力が付いている?」




信じられない。

でも、これなら…松葉杖を使って、歩けるかもしれない。




「おじさん…僕の体……」




次の言葉が出なかった。


体の自由が効くことを素直に…喜んではいけないと、その人の姿が物語っている。




「えっと…看護師さんを呼ぶと、色々面倒だから…電話を掛けに行ってみるよ。」



確か、公衆電話が1階にあったはず…


いざと言う時のために、お母さんの携帯番号と小銭を貰っておいて良かった。




『賢斗…すまない。もう、私には…余力がほとんど無い。後は…君次第だ。』



「……後は、僕に任せて下さい。」




おじさんが小さく頷いたのを合図のように、ベッドから降りてみる。


思った以上に安定して、立てているという実感がある。



大丈夫みたい。


でも、この状態で壁伝いに1階まで行くのは、難しいだろう……



「あっ…涼平くんの松葉杖を借りちゃおうか……」



涼平くんのベッド脇に、立て掛けてある松葉杖を目指している途中で、誠也くんのベッドのカーテンが開いていることに気がついた。



「あれ?…誠也くんが居ない。トイレかな……?」



意外だな…

誠也くんって、こんな遅い時間に一人でトイレに行けるんだ……



「涼平くん…ごめんね。松葉杖をお借りします。」



これは…

思っていた以上に、体が動く…

これなら、電車に乗ることもできそう。


まずは、お母さんに電話して、ミユキさんのことを話す……?


本当に…それで、大丈夫なんだろうか………


不安しかない……



「いや、考えても…仕方がない。やらなきゃ、先に進まない……行こう!」




……………………………




廊下は非常灯のおかげで、結構…明るいんだな。


夜の病院って、もっと暗いイメージだったけど、これなら進めそう。


ロビーに繋がる大きなエレベーターは、誰かが乗っている可能性があるから、非常階段を使って1階に行かないとダメだろうか……



「ダメだ…」



松葉杖で階段って……こんなにも怖いんだ。

一歩も降りれない。


困ったな…



「あ…あのエレベーターなら、行けるかも…」



あの、霊安室に繋がるエレベーターなら…

誰にも会わずに、行けるかもしれない。


確か…こっちだったはず……



「あった!」



あの時とは、様子が違う。

エレベーターの中は、普通に電気が点いていて明るいし、勝手に作動することもない。



「当たり前か………あっ」



エレベーターを降りると、正面に公衆電話が見えた。



ラッキーかも…

しかも、周りに人が居ない。


公衆電話って、初めて使うけど…

大丈夫かな…





プルルル………プルルル………




〘 はい…もしもし?〙



…繋がった!



「お母さん?賢斗だけど…」



〘 …賢斗?ど、どうしたの?〙



「お母さん…時間がないから、要件だけ言うね。」



〘 分かったわ。〙



「ミユキ…さん…………に…………あれ?」




耳が…………?





キ ─────────────────ン…





「痛っ…」




耳鳴りが………




〘 賢斗、大丈夫?………ミユキ?〙




何かに…邪魔をされてる?

でも、伝えなきゃ…



「その人に…会いたい。」





────── プッ………





切れた!?




「…ダメだ。お金が足りない……でも、伝えることはできた。」



伝わっただろうか……




「くっ……大事な時に……」




……何に邪魔をされた?





「出てこい!」





キ ─────────────────ン…





『…キイテ………』




後ろに居る……人ならざるモノ。


何でも聞こうとしてはいけないって、言われているけど…


大事な時に、邪魔をされたことは許せない。

聞くに値するのか判断するには、聞くしかないだろう。




「分かった。但し、条件がある。」




無駄だった場合は、この貴重な時間を返してもらわないといけない。




「僕の命令に、従うこと。」




この交渉に乗れるなら、聞いてもいい。

乗れないなら…




『…シタガウ。』




どんなヤツなのかと思ったら…

僕と同い年くらいの少年?


震えながら…僕の目を真っ直ぐに見ている。

覚悟があるということか……




「言ってみろ。」



『キケン…トモダチ……ツイテキテ。』




危険?…友達……




「誰が、危険なんだ?」



『セイ……ヤ。』





誠也くん?

確かに、ベッドに居なかったけど…

トイレに行ったんじゃ……?




「分かった!案内しろ。」




……………………………………………





『…ココ。』




こんな…1階の奥まった所に、個室?

ここに、誠也くんが?


でも…微かに声が聞こえる。



誠也くんの声じゃない…




部屋の中は暗いけど…ベッドのカーテンに映し出されたシルエットから、推測できる。


スマホの光が漏れているから……




「……可愛い〜。」




この声の主が…何をしているのか。





「安西…さん?」





凄いね…

そんな顔ができるんだ…

まるで、怪物(モンスター)でも見たような…




「あ…ああ………あ…」




声も出せない程に、驚いたようですね?




「撮影…してますよね?」




誠也くんは…

眠っているのか…眠らされたのか…


全裸にされて…




「少年が…お好きなんですか?」




この女が、服を着ているということは…

撮影だけが目的なのか…?


いや…もう少し、僕が来るのが遅かったら…分からない。



いずれにしても…




「これって…犯罪ですよね?」





…さぁ…どうする?


無言で、僕の様子を窺っているということは、この後の展開を考えているということ。


この女…意外と冷静なんだ。



…どう出る?




「賢斗くん…み…見なかったことに、してくれないかな〜?」




そう来るんだ………

まぁ…逆ギレして来ないだけ、バカではなさそう。




「それは…できない相談ですね。見ちゃったし。」



「うふふ……でも、それなら私も…見てはいけないものを見ていると思うけど〜?」





…何だ?


この女…顔の至る所から、黒い霧が出てきて…


目と口を残して、真っ黒になった。

充血した目を更に見開いて…ニヤッと笑っている。




「消灯時間に出歩いちゃって〜、しかも…松葉杖?涼平くんのかしら?いけないんだ〜。」




これが、この女の…本来の姿なのだろう。

なんて醜い……悪魔(リリス)のような女。




「だから、何?…僕と同等の取引をしようと思ってるの?…有り得ないでしょ?」



「…ふっ……取引〜?」





……くっ





「賢斗く〜ん!立場が分かってないよ〜ね〜?」



「ゔ…ぅ…」




やられた……


首に…指が…くい込んでいく…

声を出せない…



どうする………?





「はあぁっ…………!」





よし!手を離した…





「………ねぇ……安西…さん?」





危ない…

声…潰れる寸前だった。





「ああぁ………なぁに〜?」





これは…現実?

僕が…こんなことをしているなんて……





「僕のお願いを聞いてくれたら……」





この感触…

気持ちの悪い…丸い肉の塊。


上下に動かす度に…





「ああ…っ……はぁ……」





汚い吐息を漏らす……淫魔。



夢であって欲しい…





「僕を……撮らせてあげる。」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ショタコン淫魔女のウィークポイント()を攻めて危機脱出、その状況で交渉まで提案するとは…。やるな、少年…。 これも、ある意味「対話」ではあるのか…? 昨今、青少年の「人間離れ」が著しい…。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ