21 需要と供給。
12/4 一部文章を追加。
FWOをログアウトしてVRギアを外した僕は、家のリビングでオレンジジュースを飲みながらニュースを見ていた。
いつもならスルーしてるニュースの内容だけど、今日はFWOの特集をやっていたのでつい見入っていた。
「ふーん・・・各地で品切れ続出、増産体制を強化・・・か。」
ニュース内容は、全国各地でFWOが人気過ぎて生産が追い付かない、という物だった。
まあ、それもそうだろうね。
今までのゲームと違って、実際に自分が冒険してるかのようにプレイできるもんね。
ゲームをあんまりやらない僕が結構熱中してるんだし、FWOを始めてみようかな・・・って思う人も少なくないんだろう。
それに、姉さんレベルの廃人ゲーマーならVRゲームなんて欲しいに決まってるからね。多少無理しても買いそうではあるけど。
だけど、VRソフト一式で数万円という値段はちょっと高い気もするなぁ。
そう考えると、姉さんが無理言ってお父さんに買ってもらったのはなぁ・・・。お父さんごめん、姉さんの暴走を止める事が出来なかったよ。
「あれ?リクト先にログアウトしてたのね。」
っと、姉さんも来たんだ。
「うん。レベルが25になって道具師からアイテムメイカーになったんだ。区切りとしてちょうどいいかなーって。」
「何よその名前がストレートすぎるジョブは。」
僕も薄々気になってた。
「でも、新しい生産スキルも覚えたし、生産成功率上昇っていうスキルも覚えたし!」
「見事にどんどん戦闘からかけ離れてるわね。」
もう半分諦めてるよ。
「そういえば、私もレベル25になったわよ。『大剣使い』っていうジョブだけどね。」
「大剣使いって事は、武器は大剣なの?」
「そうよ。今は見習いの大剣って武器を使ってるわ。これでも、攻撃力+45って言うんだから強いわよね。」
えーと、確か僕の冒険者の剣が攻撃力+15だから・・・うん、考えないようにしよう。
「だけど、やけに高い攻撃力と引き換えに、素早さと防御力が低いのよね。しかも、ジョブの関係で重い金属鎧を装備できないのよ。防御力を確保できないから、やられる前に殺れってスタイルを求められるの。」
「攻撃は最大の防御ってやつだね。」
ある意味姉さんにピッタリな気がする。
もっと華麗に舞う・・・双剣使いとかになりたかったんだけどなーとか言ってたけど、姉さんのイメージと言ったら、なんというか、こう・・・格闘家とか強盗とか似合いそうなんだけどなぁ。もちろんこんな事言ったら、僕の命はない。
「そういえば知ってる?プレイヤー達の行動範囲が広まってきて、ちょっとした弊害が起きてるの。」
「弊害?」
「アクラの街から、行ける場所は3つあるわよね?」
アクラの街はMAPからみて北よりに位置していて、南側から西側、東側、さらに南側へと3方向へ行ける。(ちなみに北側は採取エリア、その先は山脈になっていて移動不可エリアになっている。)木立、神秘の森エリアは南側に位置し、東側と西側は他の街へ行く通路になっている。
「一部の攻略組が、東側を突破して2つ目の街のヴァルガタウンにたどり着いたの。」
ヴォルガタウン周辺は火山地帯になっているらしく、出てくる敵も炎属性のかなり強いモンスターという噂だ。
適正レベルは20~で、エリアを巡回している中ボスに至ってはレベル30~でもまだオレンジ表示という強さらしい。
「だけど、火山周辺はいい経験値稼ぎにもなるし、鉱石関係の良い素材が集まるから、プレイヤーがごぞって行ってるのよね。」
「・・・?いい事じゃないの?それだけ良い武器とかが流通するでしょ?」
「あそこの敵はやたら攻撃力が高いのよ。だから回復アイテムが必須になるんだけど、揃ってアクラでアイテムを買い漁った結果、アクラの街の回復アイテムの在庫が尽きてるのよね。」
回復アイテムを手に入れる手段は3つある。普通にNPC商店で買う、調合や調薬スキルで作る、薬草などの採取した地点で回復効果のあるアイテムを使う、の3つだ。他にも、回復するというだけならヒーラーや白魔導士をパーティーに組み込む、という手段もある。
「在庫が尽きてる?つまり、NPC商店自体に売ってくれるアイテムが殆ど無いの?」
「ほぼ無い状態よ。このゲームのNPC商店は、現実と同じように在庫管理っていう概念があるのよ。実際に行けばわかるけど、軒並み品切れ状態で回復アイテム関連は売ってくれないわよ。」
「そんな事ってあるんだね・・・」
「ちなみに、食料関連も品切れとまでは行かないけど、品薄にはなって来てるわよ。」
一部では、まだ到達者の少ないヴァルガタウンから回復薬を仕入れて売りさばく商人もどきも居るみたいだ。そんな事できるのは、一部の廃人だろうけど。
「だから、陸人も暇があれば私達に回復アイテムを供給して欲しいのよ。お金とか素材と交換で。」
「あー、分かった。回復アイテムってどんなのがいいの?」
「回復できりゃなんでもいいわよ・・・と言いたいけど、なるべく効果が高いのがいいわね。」
「うーん、挑戦してみるね。纏まった数が出来たら連絡するからさ。」
「はいはい、分かったわー。」
回復アイテムか・・・。簡易道具生産のスキルを覚えたから、前よりは実用的なポーションが作れるかもしれないんだよな、ちょっと挑戦してみようかな。
その翌日、FWOにログインした陸人は、街を出て西側――『名も無き街道』と呼ばれるエリアに居た。
ここに来る前にアクラの街に寄って、あちこちのNPCの店を回ってみたけど、ポーションはおろか丸薬や粉薬といった継続回復効果のあるアイテムを初め、薬草といった素材アイテムすら在庫切れという有様だった。
北部エリアと草原エリアは薬草を求める生産職プレイヤーが大勢居て、採取ポイントの取り合いになっていた。
「さて、と。あいつは・・・居た。」
僕がこのエリアに来たのには理由がある。
このエリアには4種類の敵が居る。そのうちの2種類、『グラスラビット』と『グリーンスライム』が結構な確率で薬草を落とすのだ。品質は若干落ちるらしいけど、もちろん問題なく合成に使える。
少し先に数匹で群れているグラスラビットに気付かれないように近寄り、攻撃範囲内に入った瞬間にウサギの頭めがけて剣を振り下ろす。
ザシュッという効果音と共にHPのバーが0になり、一撃で絶命するウサギ。うわっ、弱っ。
仲間がやられてびっくりしたのか、一目散にバラバラに逃げるウサギ達。クモの子を散らすってこういう事を言うんだなぁ。
この「グラスラビットが薬草を落とす」というのはよく知られているが、需要が高まった今でもわざわざ狩るプレイヤーがいない理由がこれだ。
HPも防御力もアケロン並みかそれ以下だけど警戒心が強く、仲間が倒されたと知るや否や一目散に逃げてしまう為、狩れる数が少なくなってしまうのだ。
「うーん、これじゃあ効率が悪すぎるよなぁ・・・。」
せめてシルヴァストさんみたいなアーチャーが居ればなぁ。それか弓みたいな武器があれば。
あ、でも遠距離から攻撃しても倒されたら逃げるから変わんないか・・・ん?ちょっと待てよ?
「弓・・・か・・・。」
リクトの脳内に、とあるアイデアが思い浮かんだ。




