5.遠足と本当の渡辺くん。
今日は遠足。
去年と違ってあたしは髪の毛も自分で結べるようになった。ふわふわの髪の毛をポニーテールにする。少し後れ毛を出して、うん、愛ちゃんに教わった通りにできた気がする!!と朝から鏡の前でるんるんなあたし。
そして朝食の準備をしていると珍しく自分で起きてきた颯斗に後ろからぎゅっと抱きしめられる。
「どーしたの?もう朝ごはんできるよ〜?」
とあたしは手を動かし続ける。
「なんでそんな可愛い髪の毛してんの」
と後ろから抱き締めながらあたしの耳元で囁く颯斗。
「えへへ〜!今日遠足なんだ。愛ちゃんに前に教えてもらったんだよ〜似合ってるかな?」
とあたしがニコニコ颯斗に振り返ってどーお?と見せると
「…はぁ。可愛いすぎ」
と颯斗が可愛いと言ってくれて嬉しくなる。
「今日なんもないから送り迎えする。」
と颯斗に言われて
「ほんとに〜?!嬉しい」
と颯斗に抱きつく。
「ん…、ほら飯食うぞ」
そう言って二人で朝食を食べて颯斗に学校まで送ってもらう。
キョロキョロと周りを見渡して誰もいないのを確認して颯斗にキスをしていってきます!
と颯斗に手を振り学校に向かった。
「おはよ〜愛ちゃん!」
と愛ちゃんの席に行き今日の髪の毛どうかな?教わった通りにできてる?と愛ちゃんにチェックしてもらう。
「めちゃくちゃ可愛いすぎてムカつく」
と愛ちゃんが笑う。
愛ちゃんから合格が出たのであたしは自分の席に戻る。
「わぁ〜!唯可愛いね〜」
と美鈴ちゃんにも褒められた。
「えへへ、そうかな?ありがとう」
とお礼を言ってると担任が来て今日の説明がはじまる。
そして校庭に集合するように言われて愛ちゃんと校庭に向かう。
「へぇ〜今日も椎名先輩迎えきてくれるんだ〜?そりゃあこんな可愛い唯ほっとけないかぁ」
と愛ちゃんがあたしの髪の毛を見る。
「そうなのかな?」
と言うあたしにそうだと思うけど〜と笑う愛ちゃん。
そして校庭に到着してグループのメンバーで集まる。
「あれ?渡辺は?」
と一輝くんが聞いてきた。
「逆に一輝くんと一緒じゃなかったの?」
「あたしたちは二人で来たわよ」
とあたし達も返事をする。
もうすぐでバスの時間なのに渡辺くんは全然現れない。
「あたしちょっとクラス見てくる!入れ違いだったら愛ちゃんあたしに連絡して?」
「了解〜」
そう言ってあたしは急いでクラスにもどる。
ガラガラッ
扉を開けると机に突っ伏して寝てる渡辺くんがいた。
肩をトントンと叩く。
「渡辺くん!起きて!バスもうきちゃうよ!」
すると……のそのそっと顔をあげる。眠そうに欠伸をする。案外尖っている犬歯がチラリと見えた。そしてぼんやりしながらあたしの顔を見ると、急に目を見開きビックリした後、視線をそらすと
「…だるい…帰るわ。」
と帰ろうとする渡辺くん。
「ちょ!ちょ!あたし遠足楽しみにしてたんだからダメ〜!行けば楽しいよ!絶対!」
とあたしが背の高い渡辺くんを通せん坊できてるかわからないけど通せん坊する。
「……」
「バスいくよ!」
「…俺居なくてもよくね……」
とだるそうにため息を着く渡辺くん。
なにこの子供は……無理矢理連れていくしかない……!そう決めると渡辺くんの腕を掴みグイグイ引っ張っていく。
「おい……おいって……」
あたしは無視して腕を引っ張ったまま歩き続ける。
「…ちっ…わかったから……離せ」
と機嫌の悪そうな渡辺くんに
「じゃあちゃんと歩いてね?」
とニコリと笑って一緒にバスまで向かった。
「愛ちゃーん、一輝くん!!連れてきたよ〜!」
と機嫌の悪そうな渡辺くんを引き連れて手をぶんぶん振る。
そして急いでバスに乗り込んだ。
愛ちゃんと席に座って一息つくと。
「渡辺くんとあんたそんな仲良かったけ?」
と愛ちゃんが聞いてくる。
「うーん……特に仲良しではないよ?」
「そうかしら?あの渡辺くんが唯の言うこと聞いてるじゃない。かなり問題児らしーのに」
「そんなに?前に助けてもらってからあたしは案外悪い人じゃないと思ってるんだけど…」
とあたしは前に助けてもらったことを思い浮かべながら話す。
「ふーんそうなのかしら?」
「それにあたしの言う事聞いたってゆーか、前に優しくしてもらってからあんまり怖いと思わなくて強引に連れてきちゃったって感じかな?」
とあたしが思い出してクスリと笑う。
そんな話をしていると去年と同じ山に到着した。
「なんか1年前なのに懐かしい〜!」
とあたしはウキウキする。
「そうね〜!天気もいいし気持ちいわね〜」
と愛ちゃんも思っきり伸びをする。
「こいつ起こすのまぢ大変だったんだけど…」
と一輝くんは渡辺くんを引き連れて降りてきた。
「じゃあ一輝くんは今日は渡辺くんのお世話係だね?」
と笑うあたしに
「えぇぇ〜!なんで俺が」
とブーブー言いながらも渡辺くんのお世話をしている一輝くんは案外世話焼きのようだ。
渡辺くんはそんな一輝くんに溜息をつきながらも言うことを聞いていた。
「案外あの2人お似合いね?」
と笑う愛ちゃんに
「あたしもそれ思った」
と笑う。
そして出発する。
いろんな学年の子たちが一生懸命歩いている。
すると…
「望月先輩ですよね?!」
とワラワラと集まってきた1年生の男の子たちに囲まれるあたし…。
「あ、え、えと…そ、そうですけど」
な、なになになになに?!この子達だれ?なに?あたし何かした?!囲まれたせいで小さいあたしは愛ちゃんが見えなくなった…。
「噂通りなんですね!超可愛いですね!」
「彼氏とかいるんですか?」
「学校で1番の美少女って本当なんですね!」
「俺と仲良くなりませんか?」
「あ、お前ずりぃー!」
と一斉に喋りかけられてあたふたするあたし。
すると……
「おら、お前らどけ」
そう言ってあたしを囲む1年生を退かしてあたしの所に来たのは、まさかの渡辺くん。
そしてあたしの腕を掴むと1年生の輪から引きずり出してくれた。
「ゆ、唯!大丈夫だった?」
と愛ちゃんも慌てて駆けつける。
「う、うん…あ、渡辺くん!ありがとう!」
とあたしがホッとして笑うとチラリとあたしの顔を見たあとに
「…べつに」
と素っ気なく言って一輝くんの所へ戻って行った。
そして落ち着きを取り戻し、また歩き出す。
「それにしても1年生の勢いすごかったわね。」
「すごすぎだよ…一気に疲れちゃったよなんか」
「まぁ噂の唯と会えるのなんて全校で集まれるこーゆー機会でしかお目にかかれないものね〜1年生たちもあまりにも可愛い唯にビックリしちゃったのよ〜」
と愛ちゃんは気持ちはわかるわねと納得した顔をしている。
「あたしアイドルでもなんでもないんだけど…」
とガックリしているあたし。
しかも歩いてる間もちょこちょこカメラを向けられていて気分は最悪。
そんなこんなで頂上に到着した。
そして
「お弁当食べましょ!」
と言う愛ちゃんに食べよ食べよーと
一輝くんと渡辺くん4人でお弁当を広げる。
「相変わらず唯のお弁当って女子力高いわよね〜」
と愛ちゃんがあたしのお弁当を見ながら話す。
すると一輝くんが
「見せて見せて〜」
とあたしのお弁当を見て彩り綺麗だな〜すげ〜と感動している。
「料理は嫌いじゃないから」
と笑うあたしに
「え?自分で作ってんの?すげぇ。この中で自分で作ってるやついる?」
と一輝くんが言う。すると
「…ん」
と渡辺くんが少し反応した。
みんなビックリした顔をして渡辺くんのお弁当を見る。
「え?渡辺!お前やればできるやつなんだな!すげぇ感動してるぞ!」
と一輝くんが渡辺くんに興奮している。
「…うるせー…黙って食えよ」
と興味無さそうな渡辺くん。
今日の遠足で渡辺くんは、実は優しくて実は推しに弱くて実は笑うと犬歯が可愛いくて実は料理もできちゃう。みんなのイメージとは全然違う男の子だと愛ちゃんも一輝くんも理解したのか、一気にあたしたちは仲良くなった。
あたしは優しい一面には気付いてたからみんなに知ってもらえてなんだか嬉しくなった。よかったよかった。これが母性という物なのかもしれないと思った。
そんなこんなで楽しい遠足は無事に幕を閉じた。




