2.みんなとの出会い。
────────あれから1週間。
朝、靴箱で靴を履き替えていると
「おはよう唯。」
「おはよう唯ちゃん。」
愛ちゃんと愛ちゃんの彼氏の池田 直樹先輩が声をかけてくれた。
「あ、愛ちゃんと直樹先輩、おはようございます。」
あたしも挨拶を返す。
愛ちゃんによろしくされてから1週間、こうやって毎日話しかけてくれて一緒にいてくれる。
気が付けば久しぶりに友達と言う存在ができた。
「愛をよろしくね〜。じゃあ俺教室行くねまたね〜唯ちゃん。」
と爽やかに笑って直樹先輩は、他の先輩たちの方に行ってしまった。
直樹先輩は3年生で、さすが愛ちゃんの彼氏ってぐらいイケメンである。
二人で教室に向かってると……。
「「「キャアアア…かっこいい!!!!!」」」
黄色い声が聞こえてきた。
これは最近毎朝の光景だ。
はぁ…朝からうるさいよぉ〜。
入学して1週間もすれば、この声にも慣れたものだ。
入学式の次の日から急に1年生のフロアに
3年の椎名 颯斗先輩と三井 蓮先輩と言うアイドルのように崇められてる2人が、誰かを探して毎日のようにウロウロしてるらしい。
しかも、椎名先輩は女嫌いで有名らしいんだけど、毎日1年生フロアにやってきてはアイドル並に歓声を浴びてて本当なのだろうか?と疑問に思う。
ちなみに全部、愛ちゃん情報だ!
黄色い声が響いてあたしからしたら毎日迷惑なんですけどね…。
あたしには関係ないことだし、その先輩達にも興味はない。いつも人だかりができていて、あたしは未だにどれが例の先輩なのかさえ、分かっていない。
愛ちゃんとあたしはさっさと教室に入って談笑しだした。
「相変わらず椎名先輩たち大人気ね。」
と、頬杖着きながら声のする廊下を見ている愛ちゃん。
「うん…。まぁあたしは興味ないよ。てか、あたしブサイクだしあんまりイケメンたちとは顔も合わせたくないかも…。」
すると、愛ちゃんが廊下からあたしに視線を移して、ジーっと顔を見てきた。
え?!ちょ?!そんな見ないで…。だんだん顔を下げてしまうと
「ねぇ…。なんでそんな自信なさげなの?
ずっと思ってたんだけどさ〜、唯ってその眼鏡がありえないぐらいださすぎるだけじゃないの〜?
眼鏡でかすぎて気づかなかったけど、近くで見ると唇や鼻のパーツはどう見ても綺麗よね?
眼鏡変えてみれば?その眼鏡インパクトありすぎ」
うぅ………。美人で優しいけど、愛ちゃんは毒舌だ。
こんなあたしと一緒にいてくれる時点で、かなり心が綺麗なのは確かなんだけどね?
でもね……毒舌すぎない?!
「唯さぁ〜自分のことブサイクブサイク言うけど、ハッキリ言ってその眼鏡のせいでどんな顔してんのか全然わかんない」
と呆れたように言われた。
「そ、そうだよね…。でも、みんなの平和のために!」
「何言ってるのか全然わかんないんだけど」
と冷たくあしらったあと、急にまた毒を吐き出した…。
「そ!れ!に!唯って前から見るとその眼鏡のインパクト強すぎてすんごい残念なんだけど、後ろから見た時なんだかすごい可愛い雰囲気は出てるのよね〜。
あ!可愛い子み〜つけた!と思って顔みた時の残念感がすごい。」
「あ、愛ちゃんんんん……勘弁して…」
「嫌ならその眼鏡どーにかしなさいよね〜。」
あたしの悲しいアピールも虚しく、愛ちゃんはさっさと授業の準備をしだした。
あたしも授業の準備をしつつぼんやりと考えはじめた。
眼鏡かぁ…。
外したい気持ちはあるけど…せっかくできた久しぶりの友達だよ?!
また嫌なことが起きる気がして、あたしには眼鏡を外す勇気はない…。
⎯⎯⎯⎯⎯⎯その頃、1年廊下
イケメン二人組みが黄色い声を浴びながら、そろそろ3年フロアに戻ろうと足を戻したところである。
「颯斗〜、例の子いた?」
「うーん……いねぇな…。」
確かに新しい制服だったし1年のはずなんだが…。だけど、この1週間毎日1年フロアを彷徨くが、まっくそれらしき女はいない。
色々と情報通な蓮も、そんな女の噂は聞かないと言ってた。
「はぁ…。」
ため息を着く俺に
「ははっ、まぢで颯斗が女の子に興味持つなんて珍しいよね〜。どんな子なんだろ」
とニコニコと話しかけてくる蓮。
その時だった、ふわっとした髪の毛の長い女が横を通った…
「お、おい!」
と話しかけると、その女が振り返った。
だが振り返った瞬間、めちゃくちゃがっかりした…。
「キャッ!颯斗先輩!」
と頬を赤く染めた。
人違いだ…。
…髪型似てると思ったけど、全然違うじゃねーかよ。
「チッ…、人違い。」
イライラして謝りもせず冷たく一言放って、さっさと3年フロアに戻ろうと歩き始めた。
後ろでは
「ごめんね〜?あいつ今機嫌悪いから、悪く思わないでね〜またね。」
なんて、笑顔で1年に対応して手を振っている蓮。
「キャー、颯斗先輩と蓮先輩に話しかけられちゃった!まぢイケメン!」
とキャーキャー騒いでる女たち。
あー、だるっ。やっぱり、あーゆー女たちは苦手だ。
────キーンコーンカーンコーン…
チャイムが鳴り午前の授業の終わりを告げる。
隣の席の愛ちゃんが立ち上がる。
「ゆい、お昼いこ!いつもの中庭でいーい?」
「うん、大丈夫だよ」
あたしも返事をして、お弁当の入った鞄を持って席を立つ。昼休みはだいたい中庭で食べるのがルーティンになりつつある。
廊下を二人で歩いて中庭に向かっている途中、愛ちゃんが何かを見つけ嬉しそうに駆け出した。
「直樹!」
「おー、愛じゃん。今から昼飯?」
直樹先輩も愛ちゃんに会えて嬉しそうだ。
「そーだよ。直樹も?」
「おう!」
と、ニコニコで話してる愛ちゃん。いつもより可愛いくて恋してる乙女だ。
そんなやり取りを後ろからソッと見ていると
「直樹〜、その子が例の彼女〜?美人じゃん!うらやましいなぁ〜!ねぇ、颯斗」
と、直樹先輩と愛ちゃんに近寄ってくる、二人のイケメン。
何あの人たち……イケメンすぎない?
直樹先輩もイケメンだけど…なんかレベルが違う…キラキラしてるよぉ…。
近づいてくる前に、あたしは愛ちゃんと直樹先輩からソッと離れ窓の方に体を向けた。
愛ちゃんたちに背を向けて立ち、窓の外を眺めた。
だ、だ、大丈夫だよね?!?!
愛ちゃんと直樹先輩と少し離れてたし、2人の知り合いとか思われてないよね?!?!
窓を見てるモブAみたいな感じに思ってくれるよね?!?
あたしは他人…あたしは他人…。
呪文を唱えるように必死に窓の外を眺め続けた。
イケメン二人が愛ちゃんたちの所に到着すると挨拶がはじまった。
「お〜、蓮と颯斗。前に言ってた俺の彼女の愛。美人でしょ?」
直樹先輩が愛ちゃんを紹介しているようだ。
「1年の藤崎 愛です。椎名先輩と三井先輩ですよね?」
と、愛ちゃんが自己紹介してるようだ。
「お〜、よく知ってるね。下の名前でいいよ〜。俺が蓮で、隣でだるそうにしてるこいつが颯斗。こいつ愛想ないからごめんね〜?」
なんて、陽気な声が聞こえてくる。
この二人があの噂の二人組ってこと?
三井先輩は陽気な人なんだな〜。なんて呑気に考えていると…
…………なんだかすごい視線を感じる……。
……き、気のせいだよね?
あたしは、モブよ!モブになりきれ!あたし!!!!!!
すると、ずっと無口だった椎名先輩が口を開いたようだ
「あそこにいるやつ知り合い?」
と、愛ちゃんに話しかけてるようだ。
ま、ま、ま、まって!
それってあたしのことだよね?まずいまずいまずい……。イケメンとは知り合いたくないよ!!!
「え?あれ?唯?いつの間にそんなとこにいるの?」
あ、愛ちゃん、話しかけないでぇぇええぇ
「……。」
「ちょ、唯ってば!聞こえてる?」
聞こえてるんだってばぁぁぁあ…!!
ど、どーしたらいいのあたし?!?!?!
逃げる?振り返る?どーするあたし……。




