2.体育祭
5月末になり今日は体育祭当日。
先輩たちが競技に出ると「「「キャアアア」」」と黄色い声が飛んでて、あたしはゲンナリする…。
「唯の彼氏人気だね〜」
とひょっこり現れたのは碧くん。
「うん…かっこいいからしょうがないよね…」
と、しょんぼりするあたし。
「俺次なんだけど俺見て元気出せよ〜」
なんて言ってくるのは最近部活が忙しいのか更に日焼けした大和くん。
「大和くん見てても元気になれないよぉ〜」
とあたしが言うと
「ははっ、ひっでぇ〜」
と笑う大和くん。
「じゃあ俺は?俺は?」
と碧くんは相変わらず人懐っこい。
「碧くんでも元気になれない。」
「うわぁ〜ショックなんだけど〜」
なんて冗談ぽく悲しいふりする碧くん。
「ほら、あんたたち次でしょ?準備しなさいよシッシッ」
と、2人を追い払って登場したのは愛ちゃん。
「あ、愛ちゃんおかえり〜」
「ただいま。碧も飽きないわね〜」
と言う愛ちゃん。
「あれはたぶんノリ的なやつだよ」
「どぉかしらね〜、あっ、直樹だ!応援しなきゃ!」
と急に乙女モードの愛ちゃん可愛い。
すると、急に後ろから声をかけられる。
「唯」
後ろを振り向くと
「椎名先輩!!」
椎名先輩が来てくれたってことだけでさっきまでのモヤモヤは吹き飛び一瞬で笑顔になる。
「唯そろそろ借り物競争だろ?応援してるっ」
それだけ言うと頭をポンッ撫でて去っていく。
それだけを言いに来てくれたの?!
「はい!応援しててくださいね!」
とあたしも先輩に大きく手を振った。
借り物競争がんばれそう!
そして借り物競争のアナウンスが流れ、準備をする。
「唯〜!がんばって〜!」
愛ちゃんが応援席から手を振る。あたしも手を振り返す。
借り物競争に出る先輩たちがワラワラと集まってくる。すると、あたしの周りに誰もいないのをいいことに、また始まった…コソコソ話。
「この子じゃん椎名くんの彼女って」
「ほんと地味ね〜」
「なんなのかしらあの眼鏡」
はぁ…1人の時いつもこれだから慣れましたけどね…。
1人でいつも通り黙って耐えてると、ついにあたしの番が来た。
1年から3年まで混合である…。
そしてみんなでスタートラインに並ぶ。知らない人達しかいないけど、がんばれあたし!
よーい…パァン!
お題の紙にむかって走り出すと…なぜか上級生たちがあたしの近くを走り出す…。
な、な、走りにくいんですけど…。
すると、足を引っ掛けられた…。ふっと笑う声が聞こえる…。やられた…!やっぱりわざと…むかつく…!!と思いながら
あたしはそのまま倒れていく。
ドサっ!!…………カチャン。い、痛い…。
て、てか嫌な音が…あたしは顔を触る…。
やばい…眼鏡がどっか飛んでった…。
どうしよう…顔をあげれない…どうしよう…どうしよう…
悔しくて涙が出そうになった時…
「唯!!!!」
椎名先輩の声だ…でもごめんなさい。今顔あげられないです…と心の中で謝る。
異変に気づいた先輩がコースに入ってくる。
「唯…どした?怪我か?」
と顔をあげないあたしに心配そうな顔で聞いてくる椎名先輩。
「め、眼鏡が…なくて…」
と、俯きながらあたしが答えると
「チッ…絶対顔あげるなよ。」
そう言うとタオルをあたしの頭にかけて抱き上げる。
そしてズンズンと全校生徒が見守る中校内へ進んでいく。 そんな中でもキャアキャア声が聞こえたり、逆に悲鳴が聞こえたり様々な声が聞こえてくる。
先輩がせっかく応援してくれてたのに…と思うと悔しさと申し訳なさで目が潤む。
あたしは先輩の首に手を回し、ぎゅうっとしがみついて顔を埋めて涙を堪える。
その途中で三井先輩も駆けつけてきて
「唯ちゃん!どーしたの?怪我?!」
と心配してくれた。
椎名先輩が
「蓮、眼鏡探してきてくんね?たぶん唯がこけた辺りにどっか飛んでると思う」
「なるほどね、まかせといてよ〜」
と三井先輩は嫌がる素振りもせず眼鏡探しに出かけて行った。
そして誰もいない保健室に連れてきてくれた。
足ちょっと綺麗にするぞ?と言うと
水道で少し流しその後綺麗に処置してくれた。
ポロリ…と涙がこぼれる。
「泣くな」
と頭を撫でてくれる先輩。
「迷惑掛けちゃったから…申し訳なくて…。」
とポロポロ涙を流すあたし。
「迷惑だなんて思ってない、なんかあった時は助けるって約束したからな」
そう言って優しく微笑む先輩。
…ぎゅううううう。
先輩に思い切り抱きつく。
すると
「唯ちゃ〜ん!!」
三井先輩がゼーハーしながら保健室に入ってきた。
急いで涙を拭いて椎名先輩から離れる。
「ほら、眼鏡あったよ?」
と三井先輩が優しく渡してくれた。
「あ、ありがとうございます!迷惑かけてごめんなさい…。」
眉をへの字にして謝る。
「泣いたの?目赤いし涙のあとある。気にしなくていいよ?」
と三井先輩もふわっと笑う。
「ありがとな蓮」
と椎名先輩も三井先輩にお礼を言っている。
「それにしても唯ちゃん眼鏡つけてないと些細な表情も分かりやすいね〜?それで、わかりやすいついでに聞きたいんだけど、誰かにやられたんだよね?」
とニコニコとさっきとは違う黒い笑顔の三井先輩。
恐ろしいので曖昧に返事をする…。
「た、たぶん……?」
「唯ちゃんの列にいた子たち俺分かるからしっかりお仕置しとくね?唯ちゃんは心配しなくて大丈夫だよ〜」
とニコニコしてるけど三井先輩恐ろしい…。
「あ、あんまり…可哀想なことは…やめてくださいね?ムカつくけど…女の子だし…」
あまりの三井先輩の恐ろしさに女の子たちに同情する。
「はぁ…お前は甘すぎ」
と椎名先輩がため息を着く。
「そんなことないです…」
すると椎名先輩が頭を撫でたあと、眼鏡を装着してくれた。
「俺そろそろ出番なんだけど、唯も戻れそうか?」
と心配そうに聞いてくる。
「はい、大丈夫です。先輩もがんばってください。応援してます」
とあたしもニコリと笑い、椎名先輩と三井先輩にお礼を言ってあたしもクラスのテントに戻ることにした。
「唯ー!大丈夫だった?!」
愛ちゃんがすぐに駆け寄ってきた。
「うん…ちょっといろいろあって、こけちゃった…へへへ…。」
「なにがあったのよ?鈍臭いんだから〜、足平気?」
毒を吐きながらも優しいのが愛ちゃんだ。
「うん、椎名先輩が手当してくれたからピンピンしてるよ?」
と、元気そうに振る舞う。
「そう…ならいいけど。この後リレー直樹が出るけど椎名先輩も出るんでしょ?応援しに行かない?」
と愛ちゃんが楽しそうに言う。
「うん!行きたい!」
楽しそうな愛ちゃんを見てるとせっかくだし楽しもうと思えた。
椎名先輩と直樹先輩を近くで応援しようと愛ちゃんと移動すると
「はぁ〜やだやだ。椎名先輩と蓮先輩目当ての女が多くて直樹見れないじゃない」
とうんざり顔の愛ちゃんが言う。
「仕方がないから2列目で応援しようか」
とあたしもちょっとへこむ。
そして先輩たちのリレーがいよいよはじまる。
…よーい…パァン!!
いろんな知らない上級生たちが目の前を走っていく。リレーはやっぱり早い人たちばかりだ。そして、三井先輩が走ると黄色い声があがる。
三井先輩もやっぱりすごく人気があるんだなぁ〜と思う。
その後、直樹先輩にリレーが渡る。愛ちゃんは一生懸命声を出して応援してる。
そんなことを思っていると、椎名先輩の番が来る…ドキドキドキ…。
椎名先輩が走り出す。走っている先輩はとてもかっこよかった…。そして、前にいる何人かを抜いていく…黄色い歓声が響く中あたしもがんばって声を張り上げる。
「椎名先輩!!!がんばって!!!」
とあたしが応援すると椎名先輩がチラッとこっちを見てくれてあたしの声が届いたみたいで嬉しかった。
何故かあたしの前の子たちも「椎名先輩こっちみたよね?」なんて話をしていて
椎名先輩が見たのはあたしです!と心の中で悪態をついた。
そしてゴールした先輩のところにタオルを持って向かう。
「椎名先輩!かっこよかったです!」
と笑顔でタオルを渡しながら声をかける。
「ちゃんときこえた」
と笑ってくれた。
やっぱりあたしを見てくれてたんだとわかると嬉しくなった。
その後はあたしたちはもう出る種目もないので、先輩とちょっと離れた日陰に移動して二人で座って残りの体育祭を見ることにした。
「椎名先輩!」
「ん?」
「椎名先輩が今日助けてくれたこと、すごく嬉しかったです。嫌なことあったけど体育祭楽しかったです。」
と椎名先輩にお礼をいってあたしはニッコリ笑う。
そしてこっそりとキスをして笑いあった。
そして今年の体育祭は終わっていった。




