10.愛ちゃんの魔法と桜の木
あたしの過去や眼鏡についての話は無事終わった。だけど、あたしの本命の相談はここからだ…。
「椎名先輩はまだ知らないんだよな?」
と碧くんが言う。
「うん…それであたしの話はここからなんだけど…椎名先輩にも全てを見てもらいたいの…隠し事したくない…椎名先輩にこんなあたしを見せても…大丈夫かな…?」
とみんなを見つめる。
「大丈夫だろ〜まぁ普通の男なら凝視できんけど、椎名先輩最高にイケメンだしな…お似合いだよなぁ。むしろ唯以外に隣立てそうなやつこの学校にいないよな〜」
と大和くんが言う。
「俺が敵うわけないよな〜切ない〜!」
と碧くんがヘラりと笑う。
「敵わないって言ってるじゃない諦めなさいよね」
っとビシッと碧くんに言い放つ愛ちゃん。
そして
「唯はその顔むしろ見せなさい!でも、そぉ〜ね、サプライズで見せたいわね?テスト期間の最終日の放課後なんてどうかしら?」
と、愛ちゃんが言う。
「さ、サプライズ?こんなのがサプライズになるとは思えないんだけど…。」
「あたしの言葉を信じて?テスト最終日は早く終わるし、放課後屋上で待ってもらわない?蓮先輩や直樹にも見せちゃいましょ〜よ!楽しみね。あたしが唯に魔法もかけてあげるわね?」
と愛ちゃんがウインクをする。
「が、がんばる。魔法?よくわかんないけど…お願いします…。」
「じゃあ教室戻るわよ〜!」
「そうだな〜」
とりあえず話はまとまり、あたしは眼鏡を再びかけて教室戻った。
肩の荷が少し降りたことで午後の授業はテストにむけて集中して取り組めた。
────放課後
愛ちゃんは靴箱で直樹先輩と待ち合わせて帰るみたい。あたしは教室で椎名先輩を待つ。
1人になるとコソコソと耳障りな声が聞こえてくる…。
「…あの子だよ…」
「…え〜、何あのださい眼鏡…」
「…椎名先輩の女の好み疑うんだけど…」
はぁ…窓の外を見て知らないフリを決め込む。また外見の話?うんざり…。
あれからもこうやってコソコソいろいろ言われてはいるけど、直接的なことは減った。
悪口のメモとかは、よく引き出しから出てくる。
だいたいブスとか椎名先輩に近寄るなとか
ださ女とかそんな感じのこと。
──ガラガラッ
扉を開く音に振り向くと。
「唯」
大好きな椎名先輩があたしを呼ぶ。
「椎名先輩!」
嬉しくなって走って駆け寄ると
「遅くなっちまってわりぃな」
と、申し訳なさそうにする。
「全然大丈夫です!帰りましょ?」
とあたしが笑顔で答えると
「行くか」
そう言って今日も先輩が自然にあたしの手を繋いでくれる。
こんなことであたしはすごく幸せだ。
それだけでさっきの悪口も気にならなくなる。
先輩といるとよく胸が暖かくなる。
そんなあたしは隣でニコニコと笑う。
そんなあたしを横目でチラリと見て先輩もフッと笑う。
────────…
そして…あれからテストを椎名先輩のお陰でなんとか乗り越えた。
今日がテスト期間最終日!!
テストより放課後のことを考えるとそっちの方が緊張する…。
いろんなドキドキを抱えながら歩いていると
「唯おはよ」
と眠そうに歩いてきた椎名先輩と
「唯ちゃんおはよ」
と今日も元気そうな三井先輩の登場だ。
「お、おはようございます!」
とあたしは少し緊張している。
「あっれ〜?唯ちゃんどうかしたの〜?テスト最終日に今更緊張〜?」
とヘラっと笑う三井先輩。
「ち、違います…」
と慌てて否定すると
「なんかあったか?」
と椎名先輩も心配そうにこちらを見る。
そして…緊張しながら二人を見ると
「あの…二人とも今日の放課後あいてますか?」
「ん?俺も〜?珍しいね、あいてるよ〜」
と三井先輩がニコニコと笑う。
「俺もあいてる」
と椎名先輩もあたしを見る。
「じゃあ…テストが終わったあと放課後、屋上でみんなで待っててくれませんか…?」
とあたしがお願いをすると
「わかった」
と椎名先輩は即答してくれた。
「みんなって他に誰か来るの〜?」
と三井先輩は質問してくる。
「たぶん、直樹先輩も来ます…」
とあたしが言うと
「いつものメンバーだね。了解〜。俺も行くね」
と三井先輩も了承してくれてホッとした…。
そして今日も椎名先輩に教室まで送ってもらい、先輩とまた放課後って会話をして先輩の背中を見送った。
「唯、おはよ!」
愛ちゃんが楽しそうに駆け寄ってくる。
「愛ちゃんおはよ!」
とあたしもなんとか誘えた達成感でニコリと笑う。
「今日だね?先輩たちには放課後屋上って伝えれた?」
と愛ちゃんがワクワクしながら聞いてくる。
「うん…緊張した…。二人ともきてくれるって」
と安心した顔をするあたしに
「そう、よかった!じゃあテストがんばりましょ!」
そう言って楽しそうに自分の席に着いた愛ちゃん。
そしてテストがはじまり、最終日のテストは放課後のことで頭がいっぱいであまり集中できなかった…。
そして、テストが終わり、みんながチラホラ帰って行ったあと
愛ちゃんと空き教室に行き
「唯、あなたに魔法をかけるわね?」
と愛ちゃんがウインクする。
眼鏡はずして目を瞑ってて?と言われて指示通りにした。
「唯は、あまりにも顔が整いすぎてるからまつ毛を軽くあげて薄づきのリップに顔に血色を足してあげるぐらいで良さそうね?」
と楽しそうに言う愛ちゃんに
「お化粧…?」
とあたしが聞くと
「そうよ、女の子の魔法と言えばお化粧でしょ?」
と自信満々の顔であたしを見る。
「したことないからわかんない…」
と言うあたしに
「ふふふっ、これから覚えればいいのよ〜。」
愛ちゃんは手際よく手を動かしていく。
仕上げは髪の毛。ふわふわの長い髪の毛を緩くあたしの元の髪の毛の癖に馴染ませるように巻いていく。
「よぉしできた!目を開けていいわよ」
そう言って鏡を差し出される。
「わぁ…血色がいつもよりいい!なんか…人間味ある顔になってる!お化粧ってすごいね!!」
鏡にうつるあたしはいつもの少し冷たそうな顔から春みたいなふんわりとした血色のある顔になっている。
「にしても、唯の顔何度見てもあきれるぐらい本当に可愛いわね…。これはみんなから嫉妬されるわね…。頷けるわ」
と言う愛ちゃんに
「な、な、何言ってるの…愛ちゃんだって美人すぎて初めて会った時びっくりしたんだから…。」
と素直な感想を言うと
「くぅぅう!唯に言われると全て嫌味に聞こえるわね!」
と言う愛ちゃんに笑ってしまう。
すると愛ちゃんが立ち上がると
「さてと、唯の王子様たちの所にそろそろ行きましょうか!」
そう言って優しい笑顔で手を差し伸べてくれた。
「う、うん…。」
あたしは愛ちゃんの手を取る。
そして屋上での段取りを愛ちゃんがすると言うことで
「あたしが合図したらきてね?」
と言われた。
「わ、わかった…。」
二人で屋上に向かっていると、チラホラ少しだけ残っている生徒たちがいて
みんながあたしをガン見してくる…。
「え…あんな子いた?」
「誰だろ…」
「…ヤッバイ可愛いな」
「…お人形さんみたい…」
とコソコソいろいろ言われてるけど、なぜかいつもとは違うコソコソ話のようだ。
チラリとあたしが見てる人に視線を合わせると顔を赤らめてポケーとしたり…視線を逸らされたり…。
…????
「唯、すごいわね?」
とクスクス笑っている。
「いつもとはコソコソ話の種類は…ちがうかも…いつもはブスとか…いろいろ」
とあたしが言うと
「ほんっと容姿で判断するやつばっかね…」
と愛ちゃんがムスッとする
そんな話をしていると屋上に着いた。
「合図するまで待ってて?」
と言うと、愛ちゃんだけが屋上の扉の向こうに入っていった…。
はぁぁぁあ、緊張がやばい…。
すると愛ちゃんが戻ってきた。
「先輩たち目つぶってるから1回入ってきて」
と愛ちゃんに誘導される。
フェンスの方に立たされて外を見とくように言われた。先輩たちが後ろにいる気配を感じてドキドキが止まんない…。
その時、ふと校門の桜の木が目に入った…。
今は桜も散って、緑の葉っぱが生い茂っている桜の木。
だけどあの場所を見ると少し前のことなのにすごく懐かしい気持ちになった…。
あの日あの桜に歓迎されてるような気持ちになって、いい事がこれからたくさんあると思ったんだ。
本当にいい事だらけだったよ…。友達ができて、好きな人もできた。
あの日桜を見て感じたことは本当だったのかもしれないなっとあの桜の木を見て思う。
そしてあの日のようなふんわりとした風が吹き出した。
桜の木と一緒にあたしの髪の毛もふわふわと揺れだす。
あの時と同じだ…。あたしにあの桜が大丈夫だよって言ってるように見えた。
あの日のように届かない桜の木に手をのばす、そしてあたしはふわりと優しく微笑んだ。
「みんな目開けていいですよ」
俺は…目を見開く…
なんで…お前が…ここにいる…??




