新たな手段
「これ、いけるかも?」
「いける?」
「ちょっとこのままで待ってね」
「ん」
リアサと額どうしをくっ付けたまま、スキルに集中する。
「えっと、とりあえずやってみるね」
「う、ん?」
スキル【クラフト】を操作する。
「どう?」
「使える、かも?」
「火は色々危ないから、まずはパンチからやってみようか?」
「ん!」
「……ええと、リアサ?」
「ん?」
「ん? じゃなくて」
「?」
「そんな、きょとんとした顔されましても」
「何?」
「いや、俺の頭抑えながら、おでこくっ付けてたら試せないよ?」
「オウギがこのままって」
「それは済んだので離しても大丈夫」
「もうちょっとこのまま」
「――もうちょっとだけね」
至近距離でリアサと見つめ合う。
「むう」
そう言いながら先に目を逸らして離れたのは、顔を赤く染めたリアサだった。
先ほど俺が「ドラゴンパンチ」をお見舞いした岩の前に立つリアサ。
「ドラゴン、パンチ!」
リアサが右ストレートを繰り出す。
「すごっ」
そこに残ったのは、粉々に砕け散った数秒前まで岩だったものたちだ。
「ドラゴン、クロー!」
リアサの言葉とともに、太い樹の幹がスパッと切断される。
倒れてきたら危険なので、慌ててインベントリへと回収っと。
次の行動に移ろうと、息を深く吸い込むリアサを慌てて止める。
「ちょっと待って!」
「ん?」
とりあえず、スキルの付与は成功したようだ。
まさか、【クラフト】したスキルを他人に付与することも可能だとは、この【クラフト】はチート級のスキルだよな。
「ドラゴンパンチ」にしても「ドラゴンクロー」にしても、俺が使うより遥かに威力が高いのは、リアサのもつ魔力の『属性』とスキル『属性』の、タイプ一致ボーナスみたいなものだと思う。
とすると、「ファイアブレス」はとんでもない威力と範囲で火が生み出されかねない。
慌てて止めたのは、その火による事故を起こさないためだ。
「これから良いところなのに止めないでとむくれる気持ちはわかるけど、いったん落ち着いて」
「ん」
「さっきの二つのスキルでわかったと思うけど、リアサが使うと俺が使うよりも桁違いに威力が出ます」
「ん。あたし強い」
「その勢いのまま火を吐いたら、木に燃え移るとかリアサ自身がヤケドするかもしれない」
「たしかに、そう。かも」
「なので、開けた場所で、まずは威力を抑えて使ってみようか」
危ないから使うなとは言わないが、できる範囲で最大限、安全を確保したい。
「ん。わかった」
火を噴くのに適していそうな場所へ移動し、万が一に備えて周囲の下草を刈り取り、木も伐っておく。
乾燥しているわけではないので、用心しすぎな気はしているが、備えあっても憂いは生まれるのがこの世の常だ。備えすぎておくくらいでいいだろう。
「よし、ここまでやれば大丈夫だろう」
さらにインベントリから水をすぐに取り出せるよう、心の準備もして、リアサに頷いて準備完了の合図を送る。
「ファイア、ブレス」
ごおおおおおおっというような効果音が見えるくらいの威力で火を噴くリアサ。
「おお」
リアサは、自ら生み出した火力にご満悦な様子。
「もう一回やる!」
楽しそうに火を出し続けるリアサ。
「待って、そろそろ危ない!」
と止めようとしたが遅かったようだ。
火を吹けなくなり、リアサがふらふらとし始める。
魔力欠乏状態に陥ったリアサを視て、慌てて駆け寄る。
「おっと」
倒れ込む前に抱きとめることができた。
「さすがにやりすぎ」
意識を失っているし、「回復」付きのポーションを飲ませることもできない。
とりあえず、地面に布を敷いて――そこに寝かせるわけにもいかないか。
俺が足を投げ出して座って、そこにリアサの頭をのせて寝かせる。
膝枕ってやつだ。――膝枕って言うけどこれ膝じゃなくて太もも枕だよね。
魔力の回復を促すために、「回復」を付与した大きめのタオル地の布――ややこしい言い回しをしたけどタオルケットだなこれ――をリアサに掛ける。
もっと早く止めなきゃダメだったなあ。
これはさすがにリアサのお父――ユーヒに怒られたとして、当然の事態か。
横になっているリアサの魔力を視る。
すごい勢いで回復しているなあ。
俺の「回復」による作用というより、リアサ本人の資質かねえ。
さわやかな風が吹き抜けていく。
手持ち無沙汰なので、なんとなくリアサの頭、髪を撫でる。
転生者がよくやる、シャンプーみたいなものも【クラフト】しなきゃかなあ。
何をどうすれば髪の汚れを落としつつ、ツヤや潤いを保たせるものを作れるのかよくわからんのがなあ。
手当たり次第、髪に良さそうなものを集めて、【クラフト】先生に自動で作ってもらうしかないか。
「ん?」
と、その前に、それこそ家よりも前に【クラフト】しておくべきものに、今更になって気付いた。
衣食住の「衣」、服だ。
真っ先に「住」からいってしまったのは、職業病ってことにしておこう。
あまりまじまじと見てなかったが、よく見るとリアサの服はつぎはぎだらけだ。
獣人たちはあまり器用ではないと本人たちが言っていたのだが、裁縫はそれなりにできているように見える。
裁縫が得意な人か、得意な種族がいるのかもしれない。
何にせよ、獣人たちに衣服を用意するといっても、俺には買うだけのお金もなければ、仕入れ先もない。
となれば当然、【クラフト】による自作ということになり、糸が大量に必要になってくる。
そこで、糸を大量に集めるのに適した植物を育ててみようかなと思う。
今後やるであろう、農業に向けての実験でもある。
転生者による異世界農業といえば、種蒔きから収穫まで数日で終わらせるような、スーパー農業スキルによるチート農業というイメージがあるんだが、それを【クラフト】の『特性』によってやってやろうと目論んでいる。
そのために、「成長」とか「促進」とか「時短」とか「倍速」とか「短縮」のような『特性』を発現させたい。
種蒔きから収穫までの一サイクルを短縮化して、生産量を増やすなり、種を増やすなり、品種改良するなりしてやるつもりだ。
まずは『特性』を発現させるところからか。
一応、習得途中の「加速」という『特性』はあるが、これを植物の栽培にも応用できるのだろうか? できるならそれでもいいんだがなあ。
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