表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
288/351

-279-:高砂・飛遊午の彼女ゲットだぜ

「ハロ~」

 迫る変態騎士ジェレミーア。


 クレハは、もう半歩退こうとするも、トンッ!後ろに壁なんてあった?


 もうこれ以上後退できない。


「高砂・飛遊午の彼女ゲットだぜ」

 背後から聞えた声に、思わず身を翻して距離を取る。


 ジェレミーアのマスター、ケイジロウまでもが姿を現した。


 下品な笑いを(たた)えてクレハに迫りくる男二人。


 クレハは二人の男に前後を塞がれるカタチとなった。


「お嬢さん」

 撫で声で話かけるジェレミーアへと向いてしまう。


 と。


 彼の頭が腰辺りにまでストンッと落ちた。


 !?


「え?」

 クレハ自身も驚いていた。


 自身が落ちたジェレミーアの頭を、フライで飛んできた球をキャッチするように手に取ってしまったのを。


 そして、無意識の内に体を捻り重心移動させている。


 さらに大きく振り被って。


 それは、まるで投球フォーム。


「たあぁりゃぁぁあぁーッ!!」

 ブン投げた。


 ジェレミーアの頭を遥か遠くへとブン投げてしまった。


 投げ飛ばされたジェレミーアの頭が、空中で突然姿を消してしまった。


「バカな!固有結界を突き破っただと!?」

 傍らでケイジロウが消えて無くなったジェレミーアの頭を必死で探し回っていた。


 クレハの霊力が強いが為に、いとも簡単に、意識する事なくジェレミーアの固有結界を破ったのだった。


 ブゥン!

 背後から抱き付こうとしてきたジェレミーアの体を、クレハはくぐるようにして躱した。


 と、ジェレミーアの背後へと回り込み、股の間に手を回して股間を鷲掴み。


 声すら発する事はしないが、明らかに悶絶しているのは手に取るように分かる。


 クレハの手を引き剥がそうと手を回すも、「オラァ!」グィッと掴む手を引き上げて、さらに股間を強く握りしめる。


 あまりの激痛に、引き剥がそうとしていた手は離れ、何とか背後へと回り込んだクレハを捕まえようと、腕をバタバタさせる。


「ジェ、ジェレミーア。落ち着け!この女は俺が捕まえる」

 傍で見ていて、何て滑稽なのだろう?


 頭が無いという事は、つまり耳も無い事。


 聴覚を失った相手に語りかけても指示は伝わらない。


 それよりも、投げ飛ばされてしまったジェレミーアの頭はどうしているのだろうか?


 マスターであるケイジロウよりも、その事が気になるクレハであった。



 一方のジェレミーアの頭は…。


 投げ飛ばされた先が、不運にもダンプカーの荷台だったために、そのまま廃棄処理場へ直行となった。


「ノォォォォーォォッ!!」

 荷台で一人、股間の痛みに悶絶していた。


 なお、体は繋がっていなくても、痛みは感じる模様。



 目隠しした相手に掴まるものですか。


 しかも、頭部が無いので視覚はもちろん、臭覚も聴覚も無い。ついでに言えば味覚も無い。


 今のジェレミーアの頼みは触覚のみ。だけど、股間を思いっきり強く鷲掴みされているために、その感覚は痛みに集中してしまい、クレハを探すのは困難と言えた。


 未だに捕まえられずにいる。


 振り回す腕が危なっかしく、マスターのケイジロウも迂闊に近づく事ができない。


「止めろ、ジェレミーア。大人しくしてくれないと、その女を捕まえられないだろ!」

 怒鳴ろうが、相手は耳はおろか、頭部そのものが無い。当然聞こえるはずも無い。


 そうこうしている内に、なにやら白い煙が立ち上ってきた。


「ん?」

 クレハは煙の元が、掴んでいるジェレミーアの股間である事に気付いた。


「な、何なの?コレ。一体、どうして煙が立っているの?」

 慌てながらも、未だに股間を鷲掴みしたまま。


 魔者の防護壁を破って、クレハの霊力が直接ジェレミーアにダメージを与えている事など、彼女が知る由もない。


 煙が出ているのに、一向に熱くならない。


 コレは何かが燃えている煙ではないのを、クレハは察した。


 だったら、何が何でも手放すものですか!


 さぁ反撃だ。


 それにしても、さっきからガチャガチャと金属音がうるさい。


 音源はジェレミーアの腰辺り。


 クレハは気付いた。

(コイツ!腰に剣をぶら下げているじゃん!」


 剣を抜かれてしまっては、ひとたまりも無い。


 さらに!クレハを窮地に立たせる事態が引き起こった。


 ケイジロウがスマホを手にしているではないか。


「やばっ、ここで召喚なんてされたら、確実にこっちの負けだ」

 ジェレミーアの股間を掴んでいる手を引き上げて、彼の足元を崩し、誘導しながらケイジロウへと近づく。


 痛みのあまり、狂ったように腕を振り回すジェレミーアを誘導するのは、とても骨が折れる。何と言っても、言葉が通じない相手だから、なおさらだ。


 何とかケイジロウの近くへとやって来た。が。


 すでに電話帳を開いて呼び出しを掛けているではないか!


 ヤバイ!先を越された!


 先手を打たれてしまった。


 もはや打つ手ナシ。


 すると、着信音楽が鳴った。


 クラシック音楽?やけに壮大なオーケストラだけど。


「あっ!」

 驚きの声を上げるケイジロウ。


 それは、クレハが聞いた事も無いゲーム音楽だった。おそらくダウンロードしたものだろう。


「え?誰の?」

 初めて聞く着信音楽は、ジェレミーアから聞えてくる。


 ケイジロウの犯した失態に、クレハは心の中でガッツポーズ。


 確か召喚は、電話をして、電話に出た魔者が承諾しないと成立しないはず。


 この場合、召喚しても応じなければ(電話に出なければ)、召喚は成立しない。


 つまり、ジェレミーアの頭は戻って来れないのだ。


 完全勝利に、おもわずほくそ笑んでしまうクレハ。


 そんなクレハを大きな影が覆った。


「何?」


 向いた先には、漆黒色の馬が上体を起こしながら(いなな)いた。


 鮮血のような狂馬の目がクレハへと向けられる。


「ドナテルロか!?」

 ケイジロウが叫ぶ。


 厄介な事に、ジェレミーアは愛馬を召喚したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ