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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[24]白き闇、黒き陽光
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-258-:お肉の方が良かった?

 白側陣営に、“休戦協定”が結ばれたと御触れが回ったのは、昼を過ぎてようやくの事だった。


 やはり、ココミ・コロネ・ドラコットはシンジュが懸念した通り、皆に知らせるのを後回しにした挙句、すっかり忘れ去っていたと謝罪と共にメールで伝えてきた。


 会社の回覧メールでこのような怠慢な行為に至れば、上司から即刻厳重注意を食らってしまう。


 だが、そこは、やはりココミという事で済まされてしまった。


 各々が呆れ返っているのは言うまでもない。


 敵同士でありながら、クレハは半ば強引にシンジュを食堂に誘った。


 ついでと言っては何だが、高砂・飛遊午と猪苗代・恐子も誘って。


「休戦協定は結ばれはしたけど、いきなり馴れ馴れしいんじゃない?」

 しかも、シンジュにはメニューを選ぶ権利すら与えられずに、魚がメインのBランチを注文されてしまっている。同じメニューなら出来上がりが早いと考えての事。


「お肉の方が良かった?」

 いまさら聞かれても変更は効かない。シンジュは少しムスッとして「お魚で結構よ」


 キョウコはガッツリチキンソテーとちらし寿司、ヒューゴは割と小食で天ぷらうどんであった。


 皆が揃ったところで「いただきます」

 手を合わせて食事に入った。


「鈴木さん、高砂・飛遊午は分かるけど、どうして彼女が?」

 名前は知らないが顔だけは知っている。紹介すらしてもらえなかったので、自ずと他人行儀とならざるを得ない。


「ああ、キョウコちゃんね。猪苗代・恐子ちゃん。ウチのクラス委員長だよ」


「彼女の紹介はいいの。いや、こちらこそ」とりあえずキョウコに頭を下げて挨拶をする。


「クラス委員長がどうしたって言うの?協定に関して何か聞きたい事があると思ったから、付いてきてあげたのに」

 クレハの意図が理解できない。


 そんなシンジュを前に、クレハは食事を優先してしまっている。


 野菜を食みながら「キョウコちゃん、盤上戦騎(ディザスター)を覚えていられるのよ」


 そんなクレハに対してウンウンと頷くと、納得できないと表情に出して、サバの煮付けにグサリとお箸を突き刺した。

「だから何?」


「彼女、お前んところのジェレミーアに襲われた事があって、今でも怯えているんだよ」 

 代わりにヒューゴが事情を説明してくれた。


「あの下衆野郎はコントロールが効かなくて、ライク様も手を焼いているの。マスターのケイジロウの目が届かないところで人間を襲ったりして、本当に困ったヤツよ」

 肩をすくめて見せる。


 すると、ヒューゴが身を乗り出して、顔をシンジュに近づけた。


「近いって…」

 困惑するも、ヒューゴが辺りを見回してから、小声で語りかけてきた。


「貝塚さん。君をここに呼び出したのは、その事を訊きたかったからなんだ。休戦協定が結ばれたとしても、それは俺たち白側とであって、一般人の安全は保障されているのか?心配でならなかったんだ」


 及ぼす被害を“自然災害”の仕業に仕立て上げてしまう盤上戦騎同士の戦いが起きないのは心から歓迎する。


 しかし、それ以外の、魔者元々の犯行は抑えらえるか?何一つ保証はされていない。


 答えは依然野放しのままという解釈しか、しようがない。


 だとすると、例え休戦協定が結ばれていようとも、発見次第、始末しなければならない。


 この答えを知りたいとベルタからの達ての願いでもあり、それは元のマスターであるシルヴィアが心残りとした懸念の材料でもあった。


 “本当に困ったヤツ”それすなわち、手に負えないと解釈しても構わない。


「それだけ聞ければ十分だ」

 ヒューゴは後は何も言わずに食事に専念した。


「え?え?まさか、ジェレミーアとやり合うつもり?高砂・飛遊午、貴方ポーンのマスターなんでしょう?ポーンがナイトに敵うとでも思っているの?」

 ヒューゴがやろうとしている計画には、敵ではあるけど賛同できない。


 格が違うし、それはあまりにも無謀過ぎる。


「やると言うなら、あえて止めはしないけど、忠告しておくわ。アイツ、ああ見えてメチャクチャ強いわよ。どんな卑劣な手を使ってくるか予想もつかない」

 正直、ジェレミーアを仲間とは思いたくもないし、共闘を余儀なくされても、断固として、こっちから願い下げだ。


「別に、こちらから仕掛けるつもりは無いんだよ。ただ、一般の人に被害を及ぼすようなら、協定だろうが、そんな物は無視してヤツをブッ倒す。それで文句を言って来るようなら、『キチンと手綱を引いてくれ』とライクに伝えて欲しい」

 要は伝言役という訳だ。


 シンジュはなるほどと感心した。


 ココミを通じてライクに伝えてしまったら、協定違反になりかねない。しかし、部下が事前に釘をさす提言を申し出ていたら、それは戯言と片付けられてしまっても、後々管理不足に問われるのはライク自身だ。


 ジェレミーアが勝手な行動さえ起こさなければ、事は丸く収まる以前に、事は起こさずに済む。


 だけど、シンジュがなるほどと感じたのは、それだけではなかった。


 ベルタは、ジェレミーアが動き出す事を期待している。そして、自らの手で仕留める事を熱望しているのだと。


 確たる自信があるのなら、彼らの手でジェレミーアを始末して欲しいと願う。

 

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