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-246-:雲を突っ切るよ!

「そんなの、正気の沙汰じゃないわ」

 オトギはタツローの決断を理解できずに激しく否定する。


「分かってる。それにごめんなさい。本来なら、合体を解除して僕だけが戦えば済む話なんだけど、コールブランドだけじゃあ、あのアルルカンに太刀打ちできないんだ。君を降ろせなくて、本当にごめんなさい」


「私は謝ってもらいたいんじゃない。こんな馬鹿げた争いを一刻も早く終わらせたいだけなの」

 言い分は間違っていないし、食い違ってもいない。


 オトギはなおも訴える。

「この戦いに、私たちが命を賭ける理由なんて、何一つ無いのよ。だから、さっさとロボを仕留めて終わりにしましょう」


 コントロールを奪われたにも関わらず、オトギは操縦桿をガチャガチャと操作し、フットペダルを強く踏み込んだりしている。その行為は空しく、コントラストはどの箇所もオトギの操作を受け付けてはくれない。


 一向に振り向いてもらえないオトギは最後の手段に出た。


「タツローくん!私を見て!貴方が無茶な戦いを挑んで倒されてしまうと、私も犠牲者になってしまうのよ。それでも良いの?私を道連れにしてしまっても」

 自身を人質にして脅しを掛けてきた。


 タツローはようやく、オトギへと振り向いた。


 しかし、その眼差しはオトギが求めていたものとはかけ離れており、冷めたものだった。


 タツローは、そんな脅しに屈することはなかった。

「君には申し訳ないと思っている」

 ただ、それだけしか答えてくれない。


 オトギの唇がわなわなと震える。


「グラムッ!!」

 グラムを呼び付ける。


「私たちだけで人狼(ワーウルフ)を仕留めます。この状況、あのようなバケモノを相手すれば、こちらの被害は計り知れません。ならば、ロボを仕留めてアンデスィデを強制終了させた方が得策です」

 理由を並べて分離を図るも、グラムはオトギの命令を聞き入れはしなかった。


「どうして?グラム!貴方も安全よりも危険を選ぶというの?」

 正しい事を言っているはずなのに、誰も耳を傾けてくれない。


 疎外感に苛まれ、オトギはついに唇を噛んだ。


 無垢なる白が、ほんの一点だけ黒に染まる瞬間だった。




 アルルカンの爆砕攻撃の破片が、ガンランチャーが隠れているビルを凄まじい勢いで削ってゆく。


 破片の嵐が止むと、すぐさま躍り出てはハンドガンをアルルカンの顔面にブチ込む。


 まったく効いていない…どれだけ顔面に弾をブチ込んだのよ…。


 通りを渡って別のビルの影へと滑り込む。


「参っちゃいますねぇ、ホント。あんなバケモノ、私たちに倒せる訳がありませんよぉ」

 音を上げるガンランチャー。


「まったくだわ」

 そこはガンランチャーに同感。


 とにかく、あの爆砕攻撃は何とかならないのか?思った矢先、「あれ?」


 クレハは、ある事に気付いてしまった。


「リョーマくん!アイツ、射撃武器で攻撃してきた事ある?」


「最初に口から凄まじい破壊力の火の玉を吐いてきた。それが?」

 応射を続けながら、クレハは思案に入った。「それって、どれくらいの頻度で撃ってきたの?」


「単発だった。とにかく破壊力が凄まじ―」

 要点だけ聞けば、それで十分。


「みんな聞いて!全員、雲を突っ切るよ!」

 皆に指示を送った。


「クレハさぁん。そんな事をすれば、良い的になるだけですよぉ」

 我が身愛しさに無茶を聞き入れようとしない。


 だけど。


「何の的になる?よぉく考えてごらんなさい。私たちが難儀しているのは、あの爆砕攻撃であって、奴のパワーや防御力なんて二の次よ」

 厄介なのは、散弾銃のような爆砕攻撃だ。


 その散弾銃のような攻撃も、ビルが無ければ、ただの強力なパンチに過ぎない。


 しかも、アルルカン2は図体は大きいけど、スピードは以前のまま。逃げられない速度ではない。


 つまり、当たらなければどうって事は無い。


 それに。


 空に上がれば、360°全天周から攻撃が可能だ。


 死角を突きまくってリョーマにチャンスを作ってやれる。


 クレハの指示に従い、白側全騎空に舞い上がった。


 空の彼方へと飛んで行く3つの騎影を見上げるアルルカン2。


「気付くのが遅せぇよ。ったく…」

 シズカが舌なめずりをした。


「これでしばらく時間が稼げるな。第三形態(ファイナルフォーム)になれる時間を稼げるってモンだぜ」

 アルルカン2が荒れ果てたビル群の真ん中でうずくまった状態に入った。


 クレハが見抜いた弱点は、シズカにとって、願っても無いチャンスを与えたに過ぎなかった。


「見ていろよ、テメェら。本当の地獄ってヤツを味あわせてやるぜ」

 ほくそ笑んだ、その時。


「有難う。動きを完全に止めてくれて」

 シズカが耳にしたのは、聞き覚えのある声。


 何でテメェが!!


 今さっき上空へと飛び立ったはずの!


 ダナがどうして、目の前で野太刀を振り被って立っているのだ!?


攻撃魔法(アタックマジック)幻影(ゲンエイ)。貴方に幻覚を投影して見せたのです」

 ご丁寧に、ダナが説明をくれた。そして、ダナの足元には、すでに緑色に光り輝く浮遊素が大量に散布されていた。


 うずくまった頭部は、丁度野太刀が届く場所に。


 ダナの踏み込み。


 周囲の浮遊素は、まるで地表から舞い上がる月夜に照らされた雪のよう。


 ドォォォンッ!!


 雷鳴が轟く。


「マジかよ…」


 アルルカン2に、冬の一発雷が落雷した。


「テメェ…とんでもないヤツだな」

 攻撃を受けると同時に飛び出してきたアルルカン3(ファイナル)の左腕を、リョーマの冬の一発雷は見事斬り落としていた。


 常時クロックアップの能力を誇るアルルカン3でさえ、冬の一発雷の剣速からは逃れる事は叶わなかったのだ。


 が。


 同時に、ダナの要撃戦兵装(ストライクパック)も一瞬にして、アルルカンによって繰り出された突き(ラッシュ)によって粉砕されてしまった。


「クロックアップ!」

 ダナが10倍速の世界に入門。


「面白れぇ!どこまでやれるか、付き合ってもらうぜ!」

 アルルカン3とダナの壮絶な戦いの火蓋が切って落とされた。

 



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