―245-:そんなの、間違っている!
アルルカン第二形態は体の大きさに比例して、防御力そしてパワーまで3倍に膨れ上がっていた。
常時包帯盾を展開しているような相手に、マイクロミサイルではまるで歯が立たない。
「ああ見えても、アイツのスピードは以前のままなんだ」
「いらんわ!今更そんなクソ情報!」
リョーマからの補足事項を一蹴する“鈴木・くれは”。
アルルカン2(セカンド)がリョーマたちとは別方向のビルへと向くと、突然正拳突きを放った。
ビルは一撃で2階以下を残して跡形も無く粉砕された。
さらに。
今度はリョーマの方へと向き直り、傍に立つビルにも正拳突き!!
粉砕された破片が、横殴りの雨のように、リョーマたちに襲い来る。
ダナが全身のマイクロミサイルを放って弾幕を張るも。
それでもコンクリ片の嵐は凄まじく、ダナの装備に容赦なくダメージを与えてゆく。
あっと言う間に装備は機能不全に陥るくらいの大ダメージを食らってしまった。
「これでは殲滅戦兵装の時と同じだ」
すでに同じ攻撃を受けて装備を失っている模様。
「ダナ!武器交換を。要撃戦兵装に換装する」
蒼い魔方陣がダナの体の部位のあちこちに現れては回転し、ダナの全身の装備を変えて行く。
背中に可動式の無反動砲と小型ミサイルポッドを備え、両腕には盾とハサミを。
両脚にも小型ミサイルポッドと追加ブースターを備えた兵装へと換装した。
「アイツもツウラのバカマスターと同じ発想に至っているのか…」
クレハは、さんざんコケにしたイエヤスと同じ着眼点を持つリョーマを、人間的に軽蔑。しかし、このムチャクチャな敵を前にしてしまうと、そうも言っていられない。
「メチャクチャ強いだろう?アタシ。さぁテメェら!こんな私に痺れろ!憧れろ!」
確かにメチャクチャ強いけど、乗っている人は頭が悪そう。
圧倒的な力の差を見せつけられても、クレハは全く負ける気がしなかった。
それはリョーマも同じ。
「全騎散開!各自ビルを影にして、あのアルルカン2の爆砕攻撃に対処せよ!5分!5分だ。それだけ時間を稼いでくれたら、後は僕がヤツを仕留めて見せる」
リョーマが全員に指示を送る。
「なーに仕切ってんのよ!アナタが仕留められないから、ここまであんなバケモノを引き連れて来たのでしょうが!」
文句の一つも言いたくもなる。さらに。
「仕留めるったって、あんなのどうやって倒せるの?」
具体的な打開策を示して欲しい。
「ふっ。僕の“冬の一発雷”に斬れぬものなど無い!」
リョーマは絶対の自信を見せつけた。しかし!
「そんな超危険な技をタカサゴの大事なド頭に打ち込んだのか!」
感情に流されて、ついリョーマを撃ち殺してしまいそうになる。怒りの矛先を変えたハンドガンは、即座にダナから迫り来るアルルカン2の顔面に連射された。
「取り敢えずは、このアンデスィデを終わらせてからよ!」
今は戦力の消耗を抑えなければならない。
「シンジュ!まだやられていなかったのか?」
僚騎の存在などお構いナシに、爆砕攻撃をコントラストに向けて放ってくる。
シズカは気付いていない。
ロボの治癒回復能力はもう、魔力の消耗により全快とはいかない事を。
シンジュは咄嗟にロボをビルの影へと隠れさせた。
「オトギさん。ここは、あのアルルカン2を仕留めるのが先です」
タツローが標的変更を申し出た。
「何を言っているの?タツローくん。この女を倒せば、アンデスィデは解除されるのよ」
「分かっています。だけど、あのアルルカンを残すと、後の戦いで絶対に今以上の苦戦を強いられてしまいます。だから!」
タツローは現在の戦いよりも、後々の戦いを有利に進める道を選択した。
「貴方の言いたい事は分かるけど…」「コールブランド、グラム。僕にコントロールを回して!」
反論する余地も与えずにタツローは強制的にコントロールをオトギから奪った。
「グラム!どうして勝手にコントロールを渡してしまうの?」
疲弊するロボを前に、タツローの意思に従い鉾を納めたグラムを責め立てた。
「オトギ。この坊主は“今以上の苦戦を強いられる”と言ったんだぜ。この坊主は分かっているのさ」
「何を?何を分かっていると言うの?」
「今の俺たちなら、あのデカブツに対処できるって事さ。次にヤツと当たる時、俺とコールブランドが一緒にアンデスィデに参戦するとは限らないだろう。だから坊主は今、あのデカブツを始末しようとしているんだ」
「何ですって?」
手に届く生存よりも、未来の勝利のために、あえて危険を冒すなんて。
そんなの、間違っている!




