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-242-:遊びの時間はお終いよ

 防御ビットに守られながら、戦場のど真ん中で魔神コントラストは茫然と立ち尽くしていた。


 突然コントロールを振られても困るんだよね…。


「マスター」

 コールブランドが声を掛けるも、タツローは何をどうやって操作したらよいのか?判断できずにいた。


 生まれてこの方、長柄の武器など持った事もない。


 せいぜい掃除用のホウキかデッキブラシくらい。しかし、それらはとても武器と呼べる代物ではない。


 中学生の頃は同級生たちとふざけ合ってチャンバラの真似事をした事もあるけれど。


 あんなもの、せいぜい“ごっこ”でしかない。


 根本的に素人なのだ。


「マスター。この騎体は貴方達二人のデータを基に構築されています。ですから、マスターが扱える武器がきっとどこかに装備されているはずです」

 魔者たちでさえ十分に把握していない騎体構成。


 …ですよねぇ。いきなり融合合体したのだもの…。


 タツローはタブレットを操作して騎体情報を確認した。


「大丈夫。タツローくんならやれるわ」

 オトギの背中を後押ししてくれる優しい声に励まされる。


「気安くマスターに話しかけるな!ビッチ!」


「なんですってぇ!!」


「恥じらいも無く人前で股をおっ広げて、しかも男子を誘惑する魂胆見え見えに胸元までさらけ出して、それをビッチと言わずして、何をビッチと言うのか!」

 罵声と共に、具体的なオトギの今の出で立ちを並べられ、タツローは思わず振り向くも、やはりオトギに顔を足蹴にされて拒絶されてしまった。


「我がマスターに何て事を!」

 激昂するコールブランド。


「どうでも良いが、あったぞ。小僧」

 騒がしい中、グラムが武装インデックスから、内臓装備を示してくれた。


 手頃な武器を両腕に内臓している模様。画像を見る限り、回転ノコギリの類を腕の中に収納しているようだ。


 手を塞ぐかも知れないので、ひとまず薙刀を背腰部に収納する。


 早速、武器を起動。


 すると。


 腕の中からアームのようなものが跳ね起きて、先端部には回転ノコギリがあるかと思いきや、何か見覚えのある物体が付いていて、それが両手に握るように渡されると、ガチン!何かが接合する音が聞こえた。


 手に納まる円盤状のモノを両手に携えて。


 斬り掛かってくる2騎のイヌ頭を照準に捉える。


「で、コレをどうやって使うんだ?」

 物は試し。取り敢えず敵に向かって投げると。


 手に納まる円盤状のモノは激しい回転をしながら、オレンジ色光の線を引いて敵に激突!すぐさま手元に戻ってきた。


 命中はしたものの。


 たいしてダメージも与えていない。


「何だったんだ?」

 不思議に思い、もう一度敵に向かって投げてみる。


 敵は大ダメージを被らないと見ると、盾防御すらせずに、真っ直ぐコントラストに向かってくるではないか。


 思わぬ敵の接近に、円盤状のモノは敵の後ろへ。


 タツローは慌ててそれを引き戻す。が。急に敵が上昇したばかりに光の線が敵に接触。敵の体を切断してしまった。


 再び円盤状のモノが手元に戻ってきた。


「これって…もしかして」

 たった今、円盤状のモノとオレンジ色の光の線で繋がっていたのは、薬指にはめている指輪だった。


 今度は敵に直接ではなく、敵の脇腹を掠めるように投げて見せた。


 オレンジ色の光の線は糸。しかもただの糸ではなく、敵を切断する熱線だ。それは発砲スチロールを切断する伝熱線を彷彿とさせる。


 しかも。


 回転速度を上げれば上げるほどにオレンジ色の光は増す。


 円盤状のモノの回転速度によって威力は高まるし、逆に落ちてしまう事もある。


 これはまさしく。


 ヨーヨーだ。


 ただし。


 イヌの散歩はOKだけど、ブランコなど直接ヒモを指で触れるような技は使えない。指を切断してしまう。


 この武器が頼もしく思えると同時に、タツローは子供時代に夢中になって遊んだ記憶が蘇り、注意事項にあった、“人に向けてはいけない”を気兼ねなくできる状況を心から満喫していた。


 コイツはスゴいや。


 近づく敵を片っ端から両断!葬ってゆく。


 カタチこそ滑稽なれど、十分なまでの鬼神っぷり。


 パシィッ!


 敵を薙ぎ倒す為に放ったヨーヨーが掴まれてしまった。


 パシィッ!もうひとつもキャッチされてしまった。


「遊びの時間はお終いよ」

 人狼(ワーウルフ)のロボ復活。


 しかもヨーヨーを掴まれてしまい、回転も止まってしまったためにオレンジに光る線は消えて、ただのワイヤーとなってしまった。


 さらに!


 一気に引っ張られてしまい、ヨーヨーを指輪から引き抜かれてしまった。


 だが、コントラストは怯む事無く、すぐさま背腰部から薙刀を取り出して、ロボに向けて下段の構えを見せた。


「タツローくん。この女の相手は私が。貴方に知り合いを傷付けさせる訳にはいかない」

 コントロールが再びオトギに委譲された。


「やめて!オトギさん」

 振り返って訴えるも、オトギは恥ずかしさに身をよじりもせず、顔を染める事すらしない。


 ただ、険しい表情で、目の前の敵だけを見据えている。


「参ります!」

 オトギから仕掛けた。


 下段からの薙刀の突き上げ。しかし。


 ロボはスイッチするかのごとく繰り出された薙刀の突きを体をコマのように回転させてすり抜けて、裏拳をコントラストの顔面に叩きつけた。


 オトギと違い、格闘技の心得など無いシンジュではあるが、バスケで培ってきたフットワークを活かした間合い取り程度はお手の物だった。

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