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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[21] はじめてのアンデスィデ
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-219-:まるで“頭隠して尻隠さず”ですよォ

 ガンランチャーの頭部の耳部分に当たる環境センサーを立てた。


 気温、湿度、それに風力を計測。ビルが立ち並ぶ街中、やはりビル風が激しい。


「市役所前に来いとは言ったけど…。ここからじゃ、ちょっと視界が悪いのよね」

 基幹道路を挟んで向かい側に行けば視界も良好だし射線もしっかりと通っている。


「レーダーや監視カメラから周囲に敵の存在は見当たりませんよ。今なら信号も青ですし渡っちゃいましょう」

 ガンランチャーからGoサインが出た。しかし。


 敵に見つかってはマズいと、クレハはガンランチャーを匍匐(ほふく)前進させて、通りの向こう側へと渡った。


 ビルの影に隠れると、再びステルスシートを張って後方から自騎を見えなくした。


 ビルの上に陣取れば視界はさらに良好なのだが、それでは敵に見つかる恐れがある。


 なので。


 ビルの横っ腹をブチ抜いて、そこから狙撃を試みる。


 こうすれば、通常の狙撃と同じく、ライフルスコープのレンズに映る反射光が周囲に見つかる事もない。


 狙撃手(スナイパー)は決して室内から銃身を晒す事はしないのだ。


 そして、長距離射撃の場合、片膝を着いて射撃するよりも、腹這いになったほうが体にかかるストレスはなお一層軽減される。


 傍目から見れば非常に不格好ではあるが、両膝を地に着けてガンランチャーの上半身をビルの中に突っ込む体勢を取る。


「クレハさん?これじゃあ、まるで“頭隠して尻隠さず”ですよォ」

 不満をたれると想像はしていた。


「わかっているわよ。だからステルスシートでしっかりと見えないようにしているでしょ!」

 小声で反論。すでに狙撃手気分に浸りきっている。


 ライフルスコープから覗く目標地点は。


 ちょっと下過ぎたかな?少しばかり仰角を取る必要に迫られた。


 フロア内の天井との距離が狭まってしまうが、銃架を立てての狙撃となった。


 銃床(ストック)を胸部に押し当てて射撃時の反動を殺す。発射時に銃身が動いてしまったら、点の攻撃である射撃だと、的を外す確率が大きく跳ね上がってしまう。



 あとはリョーマたちが敵をおびき寄せてくるのを待つだけとなった。



 一方のココミは。


 本を眺めて難しい顔をしていた。


「むぅぅ…。どう言えば、リョーマさんは素直に市役所前に行って下さるのでしょうか?」

 未だに作戦を伝えられずにいた。




 通信から聞こえてくるリョーマのピンチに、タツローは一層の不安を抱えていた。


 リョーマが負けてしまったら、クレハとオトギを守るのは自分しかいない。


 タツローは両手の掌を見つめた。


「男の僕が戦わないと、彼女たちが殺されてしまう。だけど、僕は人を殺してしまうのか…」

 両手をギュウと握りしめたいが、手が震えてしまって、思うように握りしめる事が出来ない。

 

 一方で、一度握りしめたら、今度は再び手を開く事ができなくなるのでは?別の不安を抱えてしまう。


 そんな時に、着信を知らせる呼び出し音が鳴った。


「つ、繋いで・・下さい。コールブランド」

 つい敬語で伝えてしまうタツロ-に、コールブランドは微笑むように小さく笑うと「緊張なさっているのですね、マスター」と伝えて通信を繋いでくれた。


「タツローくん、いい?」

 オトギからの通信だった。と、タツローは慌てて天井へと向くと「切らないで!」コールブランドに懇願した。


「何を言っているの?タツローくん」「いや、こっちの事で。ハハハ」笑ってごまかす。

 コールブランドがオトギを嫌っているのは明らか。切るなと言わないと、勝手に遮断しかねない。


 気を取り直して「何ですか?御陵さん」


「オトギ。名前で呼んでくれると嬉しいな…。私はすでに貴方の事を名前で呼んでいるのに」

 とはいえ、相手は学園の人気者。彼女の事を気安く呼ぼうものならば、学園全てを敵に回しかねない。そんなリスクは負いたくない。


 散々考えた挙句「オトギさん。これで勘弁して下さい」

 取り敢えずは名前で呼んで“さん”付けすれば周囲の敵対心も和らぐ事だろう。


「ええ」幾分か声が上ずっているような返事を得て、再び気を取り直すと「それで、どうしたんですか?オトギさん」


「どうやらリョーマさんたちの旗色は悪いようですので、今の内に伝えとこうと思って」

 神妙な声にして、決意を秘めたかのような言い回しに、タツローは背筋が伸びる思いをした。


「タツローくん。貴方の事は、私が全力で護り抜きます」


 そ、その台詞は!


(僕が君たちに言おうとした台詞じゃないか…)


 悔しさよりも、情けなさを感じてならなかった。




 

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