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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[21] はじめてのアンデスィデ
222/351

―213-:“トロイの木馬”という策も念頭に置いた上で申し上げます

 アルルカンのパイロットは真島・導火ではない。


「どういう事だ?ココミ・コロネ・ドラコット!」

 リョーマからの通信に、ココミは焦りに焦りまくっていた。


 黒玉門前教会内で魔導書(グリモワール)を広げるココミの目の前に、真島・導火本人が現れたからだ。


「あ、あの…私に、何か御用でしょうか?」

 戸惑いを隠せず、恐る恐るドウカに訊ねる。


 しかし、顔の半分を覆うテクノサングラスからは彼の表情は拾えない上に、何の返答も無い。


 正直なところ、目の前に立たれると邪魔で仕方がない。しかし、それを口にする訳にもいかず。



 すると、後方からやって来たライクとウォーフィールドが、ココミが座る長椅子とは通路を挟んで並ぶ長椅子に座った。


「どうしたんだい?ココミ」


「あ、ライク。あの…彼は」

 ライクに訊ねつつ、おずおずと目線をドウカへと向ける。


「彼なら、今朝クビにしたんだよ。ノブナガに、彼よりも霊力の強い“シズカ”を紹介してもらったのでね」

 そんな簡単に首を()げ替えてしまって大丈夫なのかと、敵ながら心配してしまう。


 だけど、お役御免となったドウカが、敵方の御大将の前になにゆえ姿を現したのか?いささか疑問。


「ココミ。未だにすべての駒のマスターを揃え切っていないそうじゃないか?だからさ、彼に君の側に付くように指示したのさ」

 思いもかけない敵からの申し出。だけど。


 あくまでもライクは対戦相手。敵に塩を送るつもりか?だけど、素直に受け取る事など断じてできない。これには絶対ウラがある。


「とても有難い申し出ですが、“トロイの木馬”という策も念頭に置いた上で申し上げます。“お断り”しますと」

 キッパリと断って見せた。そして。


「加えて、“大きなお世話”」

 それはドウカを見据えて答えた。


 しかし、ドウカは動じる様子も無く、また表情を変えぬままココミへと向いている。

(この男性(ひと)、素顔はどんな顔をしているのだろう?)


 好奇心は掻き立てられるけれど。


 しかし、ライクには痛い所を突かれてしまった。


 未だ装甲防御特化仕様騎のアーマーテイカーのマスターを得ていないのは事実。


 

 オロチのおかげで残りの駒のマスターを得たとはいえ、どんくさいクレハに、白黒両軍承認のヘタレ野郎のタツロー、そして鼻持ちならないオトギと、果たして戦力に値するのかさえ分からない連中を参戦させて、今回のアンデスィデを勝ち進めるか不安でならない。


 ドウカがドサッと落ちるようにして前列の長椅子へと腰かけた。そして、体をねじらせてココミへと向く。


「俺が信用できないというのは百も承知の上さ」

 マッチョな男性ならいざ知らず、ぽっちゃり体型へとくずれてしまった男性が、何を格好をつけているのか?滑稽でならない。


「だが、アンタが言ったトロイの木馬とやらは、“現在行っている”このグリチェスでの事に過ぎないのだろう?」

 セカンドゲームを見据えてと言うのか?それならば、戦力になり得る。しかし。


「それでも貴方を信用して契約を結ぶ訳には参りません。だいたい、今朝契約を破棄された者をこちらで引き受けるなんて、非常識にも程があります」

 正論を並べる。



「ココミ・コロネ・ドラコット!」

 返答を催促するリョーマの声。


 ココミは慌てて。


「あっ、リョーマさん。真島・導火は現在(いま)、私の目の前にいます。今朝方にライクから(いとま)を申し付けられたとご本人とライクから報せを受けました」

 ようやく報告に至った。



 敵のマスターが変わっている!?


 事実を知るも、リョーマは対峙している敵の能力以上に、敵の身体能力を警戒していた。


 今まで徒手空拳相手に剣を振るった事は一度も無い。


 リーチで勝っているとはいえ、両手両足を凶器へと変えて攻めてくる相手に、どう対処すべきか…。


 アルルカンが両手の拳を包帯でグルグル巻きにして“グローブ”を形成した。


 不安は的中。あの包帯は厄介だ。


 霊力を注入すれば硬質化し、剣にも盾にもなる。


 それが今、攻防一体の武器へと形を変えたのだ。



 インファイトに持ち込まれたら、ひとたまりもない。



 ダナが剣を正眼に構えて…ゆっくりと上段へと構えを移行させる。



 お互いに浮遊素を大量散布させて足場を形成。そして。



 アルルカンが動いた!


 姿勢を低くして接近、まるでボクサーのように瞬時にして懐へと入り込んできた。



 その時、上下から刃の一閃がアルルカンに襲い掛かる。



 巌流ツバメ返しの凶刃が牙を剥くも、狼の牙は獲物に食らいつく事は無かった。



 アルルカンは両の腕で、上下同時に襲い来る剣を弾き返したのだ。



 さらに。


 腹部への前蹴りをカウンターで放ってきた。



 ダナの騎体が矩形に歪んで蹴り飛ばされてしまった。



 アルルカンのパイロット“シズカ”は、高速の剣を“手数”でねじ伏せたのだった。






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