表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
209/351

-204-:アンタ、もう死んでるのよ

「ぐがあぁぁぁッ!!」

 遅れてやってきた痛みに悲鳴を上げたのではない。


 高砂・飛遊午は、本来あったはずの左腕を失ってしまった現実を受け止めるべく、強く声に出して意識を失うのを阻止した。


 しかし、止どめも無く流れ出る血によって、いずれ彼の意識は遠退いてゆく事であろう。


 そんな彼の鉄の意志を酌めないハギトは、ただの悲鳴と勘違いし、「ん~良い響きだ」とご満悦。


 それでも!


 ヒューゴはリョーマの前に立つ。


「下れ!高砂・飛遊午!」

 後ろに立つリョーマの声に、全く反応を示さない。


(こうなれば、草間(コイツ)だけでも残してダナさんの存在を守り抜かねぇと)

 自らの命の灯が風前に晒されているのを実感し、覚悟を決めた。


「下れと言っているんだ!聞こえないのか!?」

 リョーマの声をスタートに、ヒューゴはハギトへと向かって走り出す。


「時間稼ぎのつもりか?しかし!無駄よ、無駄ぁ!。二人まとめて始末してやる!」

 高らかに笑い、ハルバートを下段に構えて。


 ダッシュ!!


 その速度は、およそ人間の二人には捉える事のできない超高速。


 ドガァ!向かうヒューゴの右耳に、大きく破壊音が鳴り響く。


「あれ?」

 二人して迫り来るハギトの姿を見失ってしまった。


 ヒューゴは咄嗟に、後ろに立つリョーマの方へと顔を向ける。だけど、彼も首を横に振ってハギトの姿を見失ってしまったと目で訴える。


 ヒューゴは音の鳴った方へと向き直った。すると。


 そこには、ハギトを肘で壁に押し付けている、いや、めり込ませている、腰辺りまで伸ばした長い髪の、??、モヒカンヘアーの女性の姿があった。


「誰だ!?貴様ァッ!」

 ハギトがモヒカン女性を跳ね除けて、彼女にハルバートを構えて見せる。


 ハギトの表情に、全く余裕は見られなかった。


 それもそのはず。人間では決して追いつくことのできない高速での攻撃を、横から妨害されてしまったのだから。


 直感に頼るまでもなく、このモヒカン女性は“魔者”だと判断できる。


「私か?私は不死身のフェネクス」

 モヒカン女性は名乗ると、右手に魔方陣が展開されて、現れたのは“弓”だった。


「なぁんだ、死にぞこないのフェネクスか。不死身とは笑わせてくれる」

 救世主の如く現れた女性は、名乗ると共にハギトに笑われている。


「今度こそ貴様に、私が引導を渡してくれるわ」

 さらに輪を掛けて、まったく恐れていない模様。


 ハギトがあざ笑う理由は明らかに。


 フェネクスが召喚した弓は、ただの弓ではなく、しならせて射出エネルギーを生み出す部分に当たる“弓腹”なる箇所が刃になっている。果たして、あんな代物で、人を斬れるのだろうか?


 それに加えて、フェネクスが左手に召喚したのはシミターと呼ばれる曲刀だし。


 突然の飛び入りに唖然とする二人は、さらに唖然と口を開いた。

(オイオイ、まさかアレを矢にして射るつもりじゃないだろうな…)


 二人の不安は見事に的中。フェネクスと名乗る女性はハギトに向けてシミターを弓に番え始めた。


 しかも、5メートルと離れていない至近距離で。


 そんな滑稽極まりない戦いが、今まさに繰り広げられようとする時に。


「ダメじゃない」

 またしても女性の声。


 しかしヒューゴには、その女性の声に聴き覚えがあった。


 姉弟子の掃部・颯希(かもん・さつき)の声だ。


 サツキが、風のように二人の前を走り抜けると。


「お客様の手を煩わせるのは失礼だヨ」

 告げて、フェネクスが番えたシミターを横からかっさらって手にすると、ハギトに向かていきなりトルネード回転を披露したかと思えば、彼女の首に刃を突き立てているではないか。


「な?ッ!?」

 あまりにも一瞬で行われた剣撃に、ハギトは目を見開く事しか出来ず、反撃に出ようとハルバートを握る手に力を込めた瞬間!


「アンタ、もう死んでるのよ」

 サツキは静かに告げると、シミターの背部に蹴りを叩きつけて、ハギトの首をズバッと刈り取ってしまった。


 ブシューッ!!!

 床に転がるハギトの首に、クジラの潮吹きのように、大量に吹き出して天井に跳ね返り雨の如く降り注ぐ鮮血。目の前で繰り広げられる惨劇よりも。


「サツキ()ェ!これ、どうすんだよ!!」

 汚れた道場の心配をしてしまうヒューゴであった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ