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-195-:必ず僕が君を守ってみせる!

 金星のハギトは、完全にはヒューゴたちを敵とは見なしていなかった。


 長柄武器を持っていながら、先手を取って攻める事をしないのが、何よりもの証拠。


 木刀を通して霊力の攻撃が通れば、魔者であろうとダメージは与えられる。


 ヒューゴは、いつも以上に慎重に相手の隙をうかがう。


(それにしても、ベルタやダナさんの甲冑よりも、体表面を守っている面積が多いな…)

 これも、より上位の駒の特徴なのだろうか。


 リョーマが薙ぎ払うように、横一閃の剣を放つ。


 ハギトは難なくこれを払うと、今度はヒューゴの剣が足元、腰部と続けざまに放たれた。


 左右からの攻撃。


 だけど、まさか長柄の中央部を軸に回転させて防御されてしまうとは。


 扇風機にボールを投げて弾き返されたような感覚だ。


 さすがはクレイモアから選りすぐった戦士の身体能力を受け継いでいるだけの事はある。


 2対1のハンデをものともしない。


「どうした、お前たち。本気でかかって来ないと、10分以内に私は倒せないぞ」

 余裕を見せて、再びハルバートの石突を床に叩きつける。


 すでに二天撃を一度放っているヒューゴには、霊力の余裕は無い。


 ヒューゴはリョーマへと視線を移すと、彼は首を横に振る。どうやら彼の方も己の必殺剣を連発できないらしい。


 しかし、突破口は彼の超音速の剣“冬の一発雷”だけだ。


 コイツにそれをどうやって当てるか…。



  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



「う、う・・うぅん」

 強風が肌をすり抜けていく中、ミサキが目を覚ました。と。


 お姫様抱っこされている現状に慌てて、恥ずかしさのあまり、思わず両手で顔を覆ってしまう。


「や、止めて!もう下して!恥ずかしい」

 耳まで真っ赤。


 それでも、一向に下してもらえず、つい、「下してよ!高砂くん!」


 顔を上げて訴えたら、(誰?)別の顔があった。


 思わず絶句。


 何が何だか分からない状況で、ミサキは周囲を見渡す。


(ど、どうなっているの?私、お姫様抱っこされているのよね?なのに、何?この超スピード)

 もしかして、オープンカーか何かに乗せられて、お姫様抱っこされているのかしら?


 地面を見やる。

(近っ!)


 信じられない事に、乗り物に乗っている訳ではない。なのに、走行中の車やバスをスイスイと追い越してゆく。


 改めて自分を抱きかかえている人物の顔を見る。


 銀色がかった長い金髪の、緑色の瞳の男性。しかも顔立ちが整っており、かなりのイケメン。


 だけど、着ているものは…甲冑?それともマンガかアニメのコスプレ?


 ミサキは混乱するあまり、状況を理解できずにいた。

(ど、どうなっているの!?何で私、コスプレをしたホストに抱き抱えられているの!?)


「!、気が付いたか」

 男性のグリーンの瞳が向けられ、ミサキは思わず赤面&息を呑んだ。


「このまま黒玉前教会とは反対方向へ進むが、どこか人気(ひとけ)の無い場所を知らないか?」

 気が付くなり訊ねられてしまった。


 が。


 冷静に考えてみたら、これは!意識を失っている間に拉致されて、しかも人気の無い場所?誘拐犯に最適な監禁場所を訊ねられるって、どんなシチュエーション?


「下して!早く私を下して!」

 男性の腕から逃れようとミサキはもがくが、しっかりと抱きかかえられている為、逃れることができない。



「暴れるな!落ちたらケガでは済まないぞ」

 それでもミサキは暴れる事を止めない。いま落っこちてしまえば、骨折は免れないというのに。


「頼む。大人しくしてくれ。私は君を守らなきゃならないんだ。どうか、大人しくしていてくれないか。頼む」

 再三の懇願に、「私を守る?貴方が?」ようやく彼の言葉に耳を傾ける気になった。


「君は魔者に襲われたんだ。だから高砂・飛遊午から君を守るよう命令を受けた」

 男性と一緒にいる理由は何となく分かった。だけど、どう見てもヒューゴよりも年上なのに、命令を聞いている理由が解らない。何か弱みでも握られているのか?勘繰ってしまう。


「あの…魔者って…」訊ねようとしたら、「私たちを、はるか後ろから追いかけている男が見えるか?」

 男性の言葉に従い、後方へと目をやると。


 車の屋根から屋根へとピョンピョン飛び回りながら、接近してくる男性の姿を捉えた。


「な!何なの?アレ。私、夢でも見ているの?」

 人間とは思えぬ跳躍を見せる男に驚くあまり、両手で口を覆ってしまう。


「アレが魔者だ。何者かは解らないが、心配はいらない。必ず僕が君を守ってみせる!」

 女性ならば、誰もが一度は異性から言われたい台詞ではあるけれど、さすがに、あんな人間離れした相手からだと言われると、血の気が引いてゆく。


「舌を噛まないように何か咥えておけ」

 男性からの指示。


 咥えるも何も…しょうがないので胸元のリボンを束にして噛む。目で「これでいい?」訊ねると。


 男性が跳んだ。


 車の急発進のような体を引っ張られるような感覚…そして一瞬だけ空中で制止したかと思えば降下を始めて。


 そして、着地した先は屋根の上。しかも、それで終わりではない。


 彼までもが屋根から屋根へと次々とジャンプを繰り返す。


 おもわず、「フィィィ~」リボンを噛みしめながらの悲鳴。


(コ、コイツも人間じゃないじゃん)

 今更ながら気付いた。


 ついでに。


 彼の、尋常じゃない脚の速さを見過ごしてしまっていた事にも、今更ながら気付いた。




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