表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
195/351

-190-:ヒューゴの敵討ちだ!

 明けて、6月19日―。


 情報整理にと、クレハは昼休みにヒューゴとキョウコをカフェに呼び寄せた。


 当事者となる1年生たち(イオリ・タツロー・オトギ)はあえて呼び寄せずに。


 そして、昨日の出来事を二人に話した。


 神楽・いおり従えるオロチがアンデスィデで、すでに敵の盤上戦騎(ディッザスター)を食い殺してしまっていること。


 自分も含めて3人が、新たな白側のマスターとなった事も報告した。


 クレハの報告に案の定、両者とも良い顔はしなかった。


 特にヒューゴ。


 だけど彼本人から苦情が出る事は無く、彼が身代わりにベルタのマスターとなった経緯を知るキョウコが、クレハに厳しく当たった。


「そもそも、何で廃病院になんか侵入したのですか?」

 根本的な箇所を今さら責められても、どうにもならない。


 クレハはタツローの軽率な行動を理由にすることもせずに、ただ、申し訳なさそうに苦笑いを返す。


「まあ、今さらどうこう言ってもしょうがないだろ」

 まさに、その通り。解ってくれて、とても嬉しい。


「高砂くんは甘いのよ。鈴木さんも。二人とも直接狙われた事が無いから、悠長に構えていられるのよ」二人に向けてふくれっ面。


「私が契約したボンバートンは、すでにチェスの駒になっちゃっていて、ライフの姿も霊力の供給も無いし、アンデスィデにも参戦しないんだよ」

 心配は無いと告げたつもりなのだが。「でもね、電話でお話しする事は出来るんだ」付け加える最中。


「ココミさんと関わりを持つ事それ自体が危険なのよ!」

 思わずバンッ!と机を叩いてしまい、3人は周囲の注目を集める事となった。


 ごめんなさいと周囲に謝りつつ、キョウコは咳払いをした。


 そして。


「もしも貴女のところにジェレミーアが現れても、誰も貴女を守ってはくれないのよ」

 忠告と言うよりも、脅されてしまった。


「あの変態が!」「やめて!人に聞こえてしまうわ」

 ジェレミーア=変態の構図が出来上がってしまう。キョウコが嫌がるのも無理も無い。


 再び周囲に謝る。しかし、今度はクレハも一緒に。


「落ち着けよ、猪苗代。お前の時と同じように、ライクにスズキは無関係だと伝えれば済む話じゃないか」

 とにかく、その件はそれで収めることにした。


 問題はタツローとオトギの方だ。


 折角、契約を結んだ龍たちが、揃いも揃って体に障害を抱えている。果たして、そんな彼らにタツローたちを護る事ができるのだろうか?それも心配ではあるが。


 コールブラントがいつ何時、誰を攻撃するか分からない危うさを抱えている方が問題だ。


 とにかくタツローに、無暗にコールブラントを呼び出さないよう、厳重に注意しておく必要がある。あとで彼に伝えておこう。


 さて。


「これだけ駒が出揃ってしまうと、アンデスィデ発生時に、果たして被害を抑えることができるのだろうか?」

 不安を漏らしつつ、ヒューゴはコーヒーの入ったカップに口を付けた。


「チェスの中盤戦(ミドルゲーム)は、いわゆる“殴り合い”ですものね」

 キョウコの口から出た、これまた過激な表現。「殴り合い?」


「そう。オープニングゲーム中に駒は中央に集まってきているので、中盤戦は最も駒の取り合いが激しくなるの」


 そうなると、アンデスィデはテイクされた駒の周囲8マスを巻き込んで行われるため、参戦する駒も多数になってしまう。被害を抑えるのは、より困難を極める。


 何が何でもココミに、アンデスィデを発生させずに黒側の(キング)をチェックメイトしてもらわなくてはならない。


 3人はそろってため息を漏らした。


 それが考えられる中で、最もハードルの高い決着手段だから。





  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 

 今日も剣道部に立ち寄ることなく、真っ直ぐに鶏冠井(かいで)道場に向かったヒューゴの仕事は、小学生たち少年剣士たちの指導に当たること。


 道場主の鶏冠井・未散(かいで・みちる)は、今はシニア向けのパソコン&タブレット教室の指導を行っている。


 そして、この後、そろばん教室も控えている、何かとお忙しい身。


 少年たちの打ち込み練習を指導している最中、道場に草間・涼馬が姿を現した。「やあ」軽く挨拶。


 リョーマの姿を目にするなり、少年の一人が彼の元へと駆け寄って行く。


 そして、いきなり竹刀の剣先をリョーマに向けて「ヒューゴの敵討ちだ!」威勢よく勝負を挑んだ。


 リョーマは眼鏡を中指でクィッと上げると。


「それは、この僕が君たちの前で高砂・飛遊午を倒してからにしてもらおうか」

 ついに、リョーマはヒューゴたちの道場に乗り込んできた。が。


「待ちなさい!」

 天馬学府高等部の制服を着た少女が、待った!を掛けた。


 剣道部部長を務める竜崎・海咲(りゅうざき・みさき)が、サイドテールに結った髪を揺らしながら、彼らの元にツカツカと歩んできた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ