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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[18]女王の掌の上で
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-188-:合格よ

 伝七の瞬間移動魔法は、非常に限定的で、行きは行えるものの、帰りには使えないとの事。


 なので、ココミは歩いて黒玉門前教会へと戻る事となった。


 途中までは、皆と同じ道。


 それにしてもと、クレハは後ろを振り返る。


「次にさっきみたいなマネをしてみろ。貴様の腕も、その脚みたいに焼き切ってやるからな!」


「だったら、その女を私のマスターに近づけるな!汚らわしい!」「手前ェ!」


 ずっと、こんな調子でいがみ合っている。本当に賑やかなコトで。ため息が漏れる。


「で、その人たち、どうするの?」

 オトギとタツローに訊ねた。


 それぞれの主と下僕とが目を合わせる。


 どちらも、主の判断を仰いでいるようだ。


「お、俺は、できればマスターを傍で護りたい。で、でも、ダメだって言うのなら、他の手を考えるまでだ」

 グラムは顔を赤くしながら、目を逸らせて答える。


「で、タツローくんは?」

 タツローはクレハの問いに、速攻で首を横に振って見せた。


 いきなり見ず知らずの女性が上がり込んでくる以前に、彼女に難癖つけられて家族を殺されかねない。まさに地雷女。


 すると、コールブラントが「ますたぁ」すがるような眼差しをタツローへと向けると。


「ご迷惑でしたら、私、透明化してマスターをお護り致します。だから」

 正直、だからも何も、恐ろし過ぎて、傍には置いておけない。


 車椅子が道路の段で止まってしまった。タツローは思わず、ハンドルを手に取り押してやる。


「ありがとう、マスター」色っぽい顔立ちの笑みを向けられ、タツローは顔を赤く染める。

 だけど、いつ何時、理由を付けて周囲の者に危害を加えるか知れないと思うと、すぐさま首を横に振って、彼女へ抱いた淡い想いを振り払う。


「やはり、コールブラントは私の所で預かりましょう」

 ココミの申し出に、タツローは胸を撫で下ろした。「そうして頂くと、助かります」


「いえいえ。私としても、とても助かります」

 確かにココミの傍に置いておいた方が、落ち着くと言うか、彼女は現在、敵の真っ只中で暮らしている。少しでも味方の駒を傍に置いておいた方が安全だ。


 ココミはグラムへと向くと、「貴方はどうします?」


 グラムはオトギへとチラリと見やった。


「グラム。貴方、人間の姿の他に、何か別の姿になれるの?」

 オトギが訊ねた。


「ま、まぁ、なれない事も無いが、犬か猫が良いのか?」

 オトギは「そう」驚くも、「我が家には、すでに大型犬が2匹います。それに猫を飼うとなると、家族の許可が下りないでしょう」


 シビアな答えが返ってきた。


 グラムにとって、本物の犬たちと仲良く過ごすのは精神的に堪えるし、ペット扱いされるのも困る。


「マスター…」「オトギで構わないわ」

 名前で呼ぶ許可を得ると、グラムは咳払いひとつして。


「本物の犬と犬小屋暮で、一つ屋根の下となると、俺的にはツライんだが…」

 オトギは、グラムが高い知性と教養を身に着けた生物である事に気付くと、「ごめんなさい」一言添えて。


「でしたら、生物以外の何か。例えば“ぬいぐるみ”になるなんて、どうかしら?」

 想いも寄らないオトギのムチャ振りに、クレハは唖然とするも、グラムはそれは妙案と、意気揚々と頷いた。「よし、分かった!」


 早速、グラムが“クマのぬいぐるみ”に変身した。


「これでいいか?」

 訊ねた。


 が、当のオトギは頭を悩ませている。


「もっと可愛い方が良かったか?」

 額に手を当てるオトギを、見下ろしながら訊ねる。


「あのね、グラムさん。それじゃあ、ゆるキャラの着ぐるみだよ。ぬいぐるみが二足で歩く姿は以外とコワいものだよ。しかも、片腕無いし」

 クレハが代わりに理由を告げてくれた。


「そ、そうか。マスター、済まなかったな。では、これならどうだ」

 今度は黒いドラゴンのぬいぐるみ。腕から生えている羽が片翼なのは、この際、目をつむるとしよう。


 オトギはグラムを目線の高さまで抱き上げると、急に目を輝かせてまじまじと見つめた。


「え、ええ。合格よ」

 声を上ずらせながら告げると、ぎゅううぅぅとグラムを強く抱きしめた。


 傍から見ても、ぬいぐるみ姿のグラムは、オトギのハートを射抜いたのが良く解る。


 取り敢えずは問題解決。


 しかし。


「ねぇ、お二人さん。どうしてアナタ達、そんなに仲が悪いの?」

 クレハが訊ねた。


「それがですねぇ」

 代わって答えようとするココミへグラムが。


「丁度いい機会だから、皆に話しておくぜ」

 ぬいぐるみが喋り出した。

 

 


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