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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[18]女王の掌の上で
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-184-:お久しぶりにございます。第二王女

 生か死か、それは究極の選択。


 生き残るためとはいえ、他者を傷つける、最悪は殺害してしまうかもしれない。


 オトギはというと…承諾しかねると思いっきり顔に出して、オロチたちを睨みつけて唇を噛んでいる。


 タツローは…未だにオロオロしていて、やはり現在置かれている立場を理解していない。


「反論ナシなら、決まりという事で良いね」

 選択肢も与えられていないのに、反論も何もない。


「じゃあ、伝七さん、姫様をこちらへ呼び寄せとくれ」「了解した」

 オロチの頭の上から、トラネコがひょっこり顔を覗かせた。


 いきなりの伝七の登場に、クレハは思わず「まだ、いたんかい!?」


「紹介するさね。こ奴は伝七。通信機器を使わずに遠くの者と話せる思念通話(テレパス)と、障害物を無視して遠くへと一瞬で飛ぶ瞬間移動(テレポート)の能力を持つ、アタシの7番目の頭さね」


「お婆ちゃん、一体、いくつの頭を持っているのよ?」

 説明を聞き終えると、間を置かずしてクレハが訊ねた。


「お前さん、本当に頭が悪いねぇ。ったく…。あたしゃ九頭龍(ナインヘッド)と名乗ったよ。頭が他に8つ有るに決まってんじゃねぇか」

 こうも何度も頭が悪いと言い続けれらると、いい加減まじめに話を聞く気も失せてくる。


 思わず「8匹も猫を飼っているのかよ」ボヤく。


「んだとコラァ!俺たちは飼い猫なんかじゃねぇぞ!」

 またネコが騒いでいると、クレハは、これ見よがしにため息をついて見せた。


 そんな態度に、助六はまたもやご立腹。しかし見た目は所詮ただの猫なので、怒ったところで殺される恐怖なんて微塵も抱かない。


 緊張が走るこの場を収めるべく、オロチが仕方無さそうに助六に周囲を警戒するよう伝えると、助六はクレハに向かって舌打ちを鳴らしながら病室を後にした。


「オロチ殿、第二王女と繋ぎが取れました。これより第二王女をこちらへと御転送致します」

 丁寧な口調のトラネコほど違和感を感じるものはない。


 猫なら、自由気ままにいて欲しいと、クレハは勝手にイメージ。


 伝七の目の前に、銀色の魔方陣が展開されて、中心から魔導書を抱えたココミ・コロネ・ドラコットの姿が浮上してきた。


「あっ、ココミちゃん、お久しぶり」「あら、クレハさん!」

 テレポート完了間近のクレハとココミの、何気ない挨拶に。


 オトギも面識はあるものの、軽く会釈をするだけ。


 どうやら、以前会った時に“賭けチェス”の当事者扱いをしてしまった事が気まずいようだ。


「お久しぶりにございます。第二王女」

 彼女を連れてきた伝七が最初にココミに挨拶をした。「うむ」とだけ返すココミ。


 そして、オロチとイオリの姿を目にするなり、ココミの表情は険しさを見せた。


「まさか、貴女達がいようとは。伝七、何故この二人がいる事を私に伝えなかったのか?」

 いつものココミの、コンニャクのようなあやふやさは無く、毅然とした姫様態度で向いている。


「お伝えすれば、貴女様がここへと出向いて下さらないと思い、つい。何卒、この伝七の無礼をお許し下さい」

 トラネコが頭を下げている構図は、真剣な話をしていても、コントに見えてしょうがない。


 不適切なのは承知でも、クレハはプッと吹いてしまった。が、誰も気にも留めない。


「こうも嫌われているのなら、挨拶は抜きでも構わないね、姫様よ。早速で何だが、姫様がご所望なさっていた、龍の騎士たちを、この度、見つけて参りました」

 オロチはココミを前に、礼儀正しく片膝を着いて、頭を垂れて報告した。


 ココミはクレハ、オトギ、タツローの姿を見回す。と。


「この方たちが?」

 訊ねた。


「左様にございます。我らがこの地で生業としておりました、妖魔退治の際、この者たちは優れた退魔師でなければ見る事も叶わぬ妖魔の姿を目にしたばかりか、こちらの娘は妖魔を退治致しました」

 クレハへと手を差し伸べる。


 ココミは戸惑った表情を見せて、ただ、「そうか」とだけ告げる。


「これは、せめてもの罪滅ぼしといったところですわ」

 イオリは告げつつ、オロチにならってココミへと頭を下げて片膝を着いて見せた。


 そんなイオリの態度が気に入らなかったのか、ココミはイオリを見据えたまま。


「大義であった。しかし、こちらのクレハさんは、私の見た限り、到底戦には向かぬただの娘にすぎません。そして、後の二人に関しても、以前会った限り、必要霊力はクリアしていても、とても実戦に耐える水準は満たしていないものと私は判断致します」

 初対面のはずのココミの話を聞くタツローは、ただオロオロとして話に割って入ることすらできずにいた。


 ココミの対応に、クレハは安堵の表情を浮かべた。ものの、オロチは引き下がらない。


「恐縮ながら、姫様に申し上げます。この者たちが我らと共闘できないとなると、我らの所属する組織の規定により、この者たちを即刻処分するだけにございます。姫様はそれでよろしいのですね?」

 オロチは、ココミに選択する余地すら与えてはくれない。


「な、何を言っているのです!?オロチ。貴女は私を脅すつもりですか?」

 傍目からして一目瞭然の形勢逆転。うろたえているのは、主であるはずのココミの方。


「脅しとは、滅相もございません。私はただ、姫様に、この者たちを処分しても良いか?お伺いを立てているに過ぎません」

 ココミは慌てた様子で「なりません!この者たちを殺めるなど、私が許しません!」


 その言葉を聞き、頭を下げながらイオリはニヤリと笑った。


 そして。


「ならば姫様。この場でこの者たちと、残る龍たちとのご契約をお済ませ下さいませ」

 告げて、イオリはスマホをポケットから取り出した。瞬間!「わ、私のスマホ!どうして貴女が!?」驚きの声を上げたのはオトギであった。


 イオリは顔だけ上げてオトギへと向き、ふふんと笑うと。


「貴女の、その美しい肢体(カラダ)を心ゆくまで、隅々まで堪能していた男から取り戻して差し上げたのよ」

 即応してオトギはイオリへと駆け寄り、彼女の頬を思いっ切り叩いた。


 パシーンッ!乾いた音が病院フロア全体に鳴り響く。


 頬を叩かれ、口の端から血を垂れ流しながらイオリが笑い始めた。


「な、何が可笑しいの!?」

 あまりの不気味さに、オトギは半歩退いた。







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