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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[18]女王の掌の上で
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-177-:いっちょボコらせてもらうわ

 相手はスタンガンを手にしている。


 あんなの食らったら一撃でTHE.ENDだ。


 消火器をブチ()けようにも、さっき連中の方へと蹴ってしまったので向こう側にある。


 バチバチ。


 再びスタンガンから蒼い火花を散らせながら、男がゆっくりと近づいてくる。


(逃げよっかな…)

 しかし、足元にはタツローが倒れている。


 このまま置いて逃げれば、彼は袋叩きに遭ってしまう。


 スタンガンの男がもう目の前にまで迫ってきている!どうする?


 クレハは瞬間的にしゃがみ込み男の懐へと。


「甘いわ!」


 しかし、男はヒョイッと後ろへと跳んで間合いを開けて、スタンガンをお見舞いしようと、クレハに向けてスタンガンを押し付けてきた。


「ホント、甘いわ」

 スタンガンを押し付けられたにも関わらず、クレハは健在、ニヤリ顔。


 男の驚いた眼差しがスタンガンへと向けられる。―!?


 蒼い火花を散らすスタンガンが押し当てている先は、革靴の底。


 クレハは相手にタックルを仕掛けた訳ではなく、一瞬しゃがみ込んで、さきほど床に叩きつけた男の足から革靴をはぎ取っていたのだ。それを絶縁体に、スタンガンを攻略した。


 ついでに。


「おりゃあ!」

 もう一つはぎ取った革靴の底で、スタンガンの男の顔面にフルスィング。


 ブッ飛ばした。


 瞬間!


 ガッ!と背中に強い痛みが走った。


「痛ってぇ…」

 振り向くと、いきなり木刀による振り下ろし!


 咄嗟に手にした革靴で防御するも、革靴は飛ばされてしまった。


「木刀は反則だわ…」

 背中の痛みを堪えて、再度構えて見せる。


 木刀の男が、木刀を肩に担いで勝利を確信した笑みを浮かべながら近づいてくる。


 女の子相手に容赦の無いコト…。


 クレハは、こんな男、最低だと感じた。


 負ける訳にはいかない。だけど、先程倒したばかりの他の連中が、今にも復活しようとしている。


「んじゃ、いっちょボコらせてもらうわ」

 木刀とブンブンと振り回しながらクレハに迫る。


 え?


 木刀の男の背後に人影アリ。


 ブンブンと振り回していた木刀が、突然ピタリと止まった。


 どれほど力を込めようが、全く動かない。木刀は。


 止まったのではなく、背後から現れた人物によって掴まれてしまっていた。


「だ、誰だ!」

 振り向いた先には、白髪の老婆が。


 だけど、スパンコールをあしらった、ミラーボールのような派手な衣装に、顔面を覆い尽くすほどの大きな度付きサングラス。


「あ、あぁぁぁ」

 クレハは指差して正体を明かそうとするも、どうしてこの人物がここにいるのか?信じられなくて、つい言葉が思うように出てくれない。


 ゴクリと唾を飲み込んで。


「あ、貴女、“市松の母”じゃない!?」

 老婆の正体を明かした。


 市松の母とは?


 市松市の歓楽街や商業区に夜な夜な出没するという、謎の占い師の老婆。


 よく当たると評判で、ローカル放送にもちょくちょく顔を出すようになった、県内限定の超有名人。


「な、なんだと…この婆さんが!?」

 どうやら名前は知っているようで、彼も何故市松の母がこの場にいるのか?動揺を隠せない。


 そんな男に老婆は。


「おやおや、大の男が女の子相手に木刀を振るうのかい?」

 男は、木刀を離さない老婆に業を煮やし、自ら木刀を手放すと、今度は老婆に殴り掛かってきた。


 が。


「うそ…」


 次の瞬間には、すでに男は壁に叩きつけられていた。



 カウンターに放った老婆のストレートが男の顔面に炸裂。そのまま腕を振り切って壁に叩きつけたのであった。


「そっちから殴り掛かってきてくれたおかげで、ホラ、こんな婆さんの細腕でもカウンターでこ奴を壁に叩き込むことが出来たわい」

 理由を述べてくれても、不自然極まりない。


 この破壊力、明らかにパワーで男を打ち負かしたものだ。


「あ、ありがとう。市松の…母…さん」

 唖然としながらも、何はともあれ、礼を述べる。


「お礼ではなく謝ってほしいもんだよ。まったく」

 吐き捨てられた。


「謝る?わ、私…何か悪い事でもしましたか?」

 戸惑いもって訊ねる。


「ヤレヤレだね。折角この病院に張り巡らせておいた結界を、あちこち破ってくれてさ。ふぅ。おかげで、また結界を張るのに手間が掛かっちまったよ」

 何言っているんだ?この婆さん。


 あちこち(・・・・)って?…確かに自動ドアを無理に手で開けはしたけれど、あちこち(・・・・)ガタが来るなんて、手抜き工事もいいところだ。


 まさに欠陥(ケッカン)病棟だわ。言い掛かりにも程がある。


 およそ一般人が口にしないであろう“結界”をクレハは見事に“欠陥”だと聞き違い。


「ケッカイ?」

 再度訊ねるも、老婆は「ひ○にゃん!」突然声を張り上げた。


 すると、再び立ち上がった男に、真っ白い猫が突進!そして体当たりを食らわせると、再度男をダウンさせた。てか。


「お、お婆ちゃん!今のはNG(ネヌジー)。ダメだよ、ダメ!。ゼッタイに駄目!」

 すかさず注意に入る。


「いくら大事なペットでも、ゆるキャラの名前をモロにパクるのはマズいよぉ。ここは彦根じゃないけど、大きく括れば地元だし(滋賀県だし)」

 さすがに人気者に乗っかる名前はマズいと思う。


「奇をてらわずに、見た目通りにシロとかタマとかにしてあげなよ」

 白猫ならば、それで十分。キラキラネームは誰も幸せになんてならない。


「でもなぁ、以前はそれらの名前を名乗っていたんだよなぁ」


 突然の男性の声。


 ―!?


 他にも誰かいるの?


 声の方へと向いたが誰もいない。


 ただ、ゆるキャラの名前を付けられた白猫がいるだけ。


「ホレ見た事か。俺も、この名前はマズいと思ったんだよな」

 白猫が後ろ足で首筋を掻いている。


 え?


 えぇぇぇーッ!!


 ね、ネコが喋ってるゥーッ!!





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