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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[16]もうひとつの魔導書チェス
172/351

-167-:俺に選択権があれば、あんなヘンテコな騎体にしちゃあいないよ

 それは端的に説明すれば、霊力出力の向上→消費量の増加という事。


「海に潜る時に、水圧に慣れるように、ゆっくりと―」


「その例えは間違っているぞ」

 ヒューゴの指摘した通り、果たしてそれは、そのうち“慣れ”てしまうものなのだろうか?


「俺は未だに身体がダルいぞ」


「それはヒューゴが私とクィックフォワードとの二重契約を結んでいるからです」


「いや、アイツと結ぶ前から、結構体がダルい」

 すると「ぇぇ…」ベルタはあからさまに困惑している。


 明らかに想定外といった表情を見せている。


「そもそも私たちの生活に、霊力なんて必要なの?」

 クレハが訊ねた。


「実感されていないだけで、必要不可欠なものなのですよ」

 代わりにダナが答えてくれた。


「生命が活動するのに必要なのは、細胞間の電気信号、それも極めて微弱なものですが、その電気さえあれば生命は生きて行けるものなのでしょうか?」

 説明をするどころか、いきなり質問されてしまった。


「人間は電池で動かないから」

 答えに困る。


「その通りです。生命活動は決して電気だけでは成し得ません。根源に“魂”を必要とします。魂そのものが霊力と強く結びついているのです」

 ダナの説明に思わず「宗教的な発想ね」


「つまり、生きているだけで霊力を消費しているという事か」


「はい」

 そんな大切なものを分け与えている事実を、ヒューゴは今になって初めて知った。しかも二人の魔者に。


 そんなヒューゴをベルタは心配そうに見つめている。


「クィックフォワードは、彼は元気にしているのか?」

 ベルタに訊ねて、リョーマは紅茶を口にした。


「心配には及びませんよ。二日も経っていますし、本調子を取り戻しています」

 それは何よりと、ダナは柔らかい笑みを浮かべた。


「そう言えば、クィックフォワードのヤツ、やたらとダナさんを意識していたけど、お二人の間に何かあったのですか?」

 ふと思い出し、ヒューゴがダナに訊ねた。


「同じ土地に住む間柄で、彼は比較的個体数の多い突風翼竜(ガストドレイク)。私は個体数は少ないですが、誰とでも交配できる音速飛龍(ソニックドラゴン)です。そ―」

 ダナの説明途中に、リョーマが慌てて「待った!」を入れた。


「あの、何か?」

 不思議そうな顔を向けてダナが訊ねる。


「ダナ、その…女性の口から誰とでも(・・・・)なんて発するものではないよ」

 リョーマの指摘に、他の3人は意味を察すると顔を真っ赤にして俯いてしまった。


「も、申し訳ありません」

 当のダナも顔を染めて、不適切な発言を反省して改めて説明に入った。


「私たちの種は、お互いに争いもせずに仲良く暮らしていました。そして、彼は上位種の私との血を残そうと、懸命に努力して、私よりも優れている姿を見せようとしていました。普通は他の同性よりも優れていると誇張して見せるものなのに、どういう訳か、私と張り合ってばかりいました」

 クィックフォワードの気持ちも解らないでもない。


 しかし、肝心の努力が明後日の方向に向いているのでは、彼もまた、頭のネジが抜け落ちている輩の一人に過ぎない。


「そのうちに私が超音速飛龍スーパーソニックドラゴンに進化してしまって…。彼、それでも躍起になって、直線飛行だけは負けまいと全力を注ぐようになりました」

 その結果が、“直線機動特化仕様騎”という非常に使い勝手の悪い騎体となった次第である。


「今日もクィックフォワードを誘ったのですが、頑なに断っていたのには、そういう理由があったからなのですね」

 過ぎるくらいに分かり易い男だ。


 ベルタは溜め息をついた。


「しかしだ、高砂・飛遊午。よくもまあ、あんな使い勝手の悪そうな騎体構成をしたものだな。何でも取っ付ければ良いってモノじゃないだろ」

 明らかに“ランタンシールド”の事を言っている。それはヒューゴも同感。


「俺に選択権があれば、あんなヘンテコな騎体にしちゃあいないよ」

 しかも、右腕にはケガをしかねない籠手剣(パタ)ときたもんだ。


 思い出すだけでも、もうあんな変則二刀流はこりごりだ。


 肩が凝る…気分的にも、物理的にも。


「ところでダナさん。まさかとは思うけど、お買い物もその格好で出掛けるの?」

 思った事は訊かずにはいられないクレハであった。


 すると、ダナはお仕着せを見て。


「はい。この姿は仕事着ですから。仕事中は常にこの姿でいます」


 ダナの答えを聞くなり、リョーマへと向くと。


(コイツ、とことんメイドマニアな野郎だな…)

 思うも、言葉には出さない。

 


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