表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[16]もうひとつの魔導書チェス
168/351

-163-:お迎えに上がりました

 黒側のライクたちも帰った事だし。


 とはいえ、この学園の破壊され様…。


「結構派手にやられたな」

 両手を腰に当てて、困ったとばかりに学園を眺めるヒューゴ。


 校舎それ自体は、1年生たちの1号棟が階段部分をえぐられた程度。


 2年生の2号棟は爆風でガラス窓がすべて粉々に散っている。だけど、壁面にヒビも入っていないので、さほど大した事は無さそう。


 で、3年生の3号棟は…全くの無傷。


 学園のシンボルである時計塔は、もはや取り壊した方が安全と判断するレベル。もう、周囲は立ち入り禁止にせざるを得ないだろう。


「そうかな?思ったよりもダメージは少なそうだよ」

 少し嬉しげに否定しつつ、クレハはヒューゴの隣に並び立つ。


 もう用事は済んだので、二人は学園へと向かう事に。だけど。


「よぉ、草間。お前が来てくれてホント助かったぜ。有難うな」

 ヒューゴは振り向いて礼を述べる。


「勘違いするな、高砂・飛遊午。僕は君を助けた訳じゃない」

 フッと小さく笑うと、リョーマは乗ってきたマウンテンバイクに跨った。


 ―!?


 ふと、ダナを見やる。


「そうか。君はどうする?」

 訊ねた。


「私はマスターの御意思に従います」

 本来なら護衛として同行すべきなのだが、突然の出現に、リョーマを困らせはしないか?ココミの方をチラリと見やり困惑している。


 彼女なりの配慮なのだと。


 そんな困り果てているダナとココミを交互に見てリョーマは。


「君が来てくれると助かるよ。丁度父が家政婦さんを派遣しようとしていたところだったんだ。見知らぬ人の世話になるよりも、君なら幾分か気が楽になる」

 眼鏡を人差し指でクィッと上げると、リョーマはダナに手を差し伸べた。


「護衛として、そして、メイドさんとして僕に仕えてくれないか?」


「結局メイドなのかよ?」

 クレハのツッコミなどサラッと聞き流して、ダナは「喜んで」暖かい笑みを向けて、リョーマの手を取り握手をした。


「じゃあ、帰ろうか」

 仲良く帰ろうとする二人に。


「自転車の二人乗りは交通ルール違反だぞ」

 ヒューゴが冗談気に二人に告げる。


「分かっているさ。二人で話をしながら、ゆっくり歩いて帰るよ」

 言って、彼らは帰路に着いた。


「羨ましいんかい?」

 からかうように、ヒューゴの前に躍り出てクレハが訊ねる。


「いきなり眼鏡美人だもんなぁ」

 そこは全く否定しない。


 が。


 急にココミへと向いて。


「ココミ。まさかベルタの時みたいに、夜中にクィックフォワードが俺の枕元に現れたりしないだろうな?」

 念を押した。


「今回は霊力に余裕がありますので、あと30分くらいでヒューゴさんの元に現れるはずです」

 30分…それでも突然現れてもらっても困るな。


 だったら、もうしばらくココミと一緒にいた方が良さそうだ(コイツもココミに押し付けよう)。



「ココミィーッ!」

 遠くからココミを呼ぶ声。声の主はルーティだ。


 何だか、とても慌てた様子。


「あら、ルーティ。そんなに慌てて―」


「慌てるわ!アホ!ウチらの家が瓦礫になってるやんけ!」

 天馬教会は、オフィエルによって、ものの見事に木端微塵に吹き飛ばされていたのだった。


「そうでしたね…」

 ココミは困り顔。そして彼女に付き添うベルタも困った顔をヒューゴに向ける。


「お、俺の家はダメだぞ。今回みたいに難癖つけられて破壊されたら、堪ったものじゃない」

 意図を察するなり即座に拒否。断固拒否。


 そんな彼らのやり取りを、クレハはひとり冷静に眺めていた。


 何度も言うけど、天馬教会の神父は、今回の戦いに巻き込まれて命を失っているのだ。


 そこはスルーしてしまうのかい?


 彼らのモラルに問いたい。


「どないするねん…?」

 宿無しの女の子が3人。しかし、クレハもこの問題の打開策が見つけられない。


 本当に困った。




「そんな事だろうと、我が主も危惧されていました」

 ココミの傍に、彼女に向いて片膝を着く男性がひとり。



「誰?」

 訊ねるココミに。


「お前、何をしている!?って、どこから現れた!?」

 本格的に夏を迎えようとするこの季節に、フェイクファーの袖のベストを裸の上にまとった、寒いのか?暑いのか?分からない恰好をした男性。


 人狼(ワーウルフ)のロボの突然の登場に、クレハは思わず声を上げた。


「我が主の申し付けに従い、お迎えに上がりました。ドラコットの姫君」


「お迎え?」

 彼女たちの動向が気になり、学園へと戻るに戻れなくなったクレハであった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ