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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[15]アルマンダルの天使たち
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-160-:可哀想なヤツだったな

 アイツ(ウッズェ)さえ仕留めれば。


 ダナもベルタもアンデスィデの終了と共に、この場から姿を消してくれる。


 そうなれば。


 彼らのマスターが、いかに優れた剣技を振るえたとしても。


 盤上戦騎(ディザスター)を失えば、ただの人間。


 じっくりと蹂躙した後、抹殺してやれる。



 まさに、赤子の手を捻るよりも簡単。


 ガクンッ!


 青写真を描いている最中に、今度は両脚の膝関節を、横一閃に走らせた野太刀によって斬!


 払い斬り。鮮やかなまでの刀さばき。


 敵でなければ教えを乞いたいくらいに、その剣は見る者はおろか、受けた者までも魅了する。


 速さを追求すれば、無駄なモノはことごとくそぎ落とされる。


 草間・涼馬の剣には一切の無駄が無い。


 動きに無駄の無い人間は、発想そのものが合理的だと想像に難しくない。


 だから。


 ガァァン!

 鈍い音を上げて、次に放たれたダナの剣撃をカイトシールドで弾き返す。


 予測は簡単だった。


 彼ら、ココミ・コロネ・ドラコットが従える騎士たちは、“人を殺す”事はしない。


 彼女の意志を尊重しているかのように。


 命を奪う事なく、こちらを沈黙させる事を最優先としている。


 狙ったはずの左腕に装備しているカイトシールドによって、弾かれたダナは体勢を大きく崩して、のけ反った状態となった。



 今だ!



 カイトシールドに仕込んだカルバリンの砲口をウッズェへと向ける。



「チッ!ウソだろ。野郎…」

 倒せるかもしれないダナではなく、自分たちを狙うオフィエルに舌打ち。


「そんな…アレックス!どうして!」

 オフィエルの真意を悟った二人は狼狽した。


 それでもシンシアはオフィエルの中のアレックスを信じて止まない。


「分からないのか。私だ!アレックス。目を覚ましてくれ!」

 必死に訴えるも。


 カルバリンの砲口が赤く光る。


 ッ!?


 オフィエルの視界視界に影が差した。


 左側面からの影。クィックフォワードの騎影が!


 直線機動特化仕様騎の本領発揮。


 クィックフォワードはエプシロンを倒した後、一直線にオフィエル目指して全速力で突っ込んできたのだ。


 音速の壁を突き破って最接近。


「止めろ、高砂・飛遊午!コイツは僕が倒す!」

 告げて、両肩のガトリングポッドの照準をオフィエルの頭部にロックオン。


「そんな事を言っている場合かよッ!」

 リョーマの制止になど耳を貸す事なく、籠手剣(パタ)のバックハンドがオフィエルの首筋目がけて唸りを上げる。


 盾でガードするか!?


 いや、カルバリンの弾速なら、首を刎ねられる前にウッズェを貫ける。


 選択するまでもない。


 発射だ。


 トリガーに掛けた指が、う。動かない!?


 オフィエルは、人間の体がこれほどまでに不便なものかと痛感した。


 でも、動かなかったのは、ほんの一瞬だけ。


 トリガーを引く。


 右側面から突如として現れた、木乃伊(マミー)のアルルカンの放ったボレーシュートキックを頭に食らった後に。


 オフィエルは。


 頭部をダナのガトリングによって蜂の巣にされ。


 そして、アルルカンに蜂の巣にされた頭部を蹴り飛ばされ。


 最後に、蹴り飛ばされ千切れたオフィエルの頭は、パタを空振りしたクィックフォワードの頭にカンッ!「()てっ」ぶつかり、やがて光の粒となって消え去った。



 間もなく、3騎も光に包まれ始めた。


 乱入者を排除したのに、消えようとしている。まだ勝負は―。



 それぞれがウッズェを見やる。


 ウッズェは。


 コクピットのある胸部に空いた穴から煙を立ち上らせて。


「チッ!最後はお仲間に撃たれるとは…。いけ好かない女だったけど、可哀想なヤツだったな、シンシア。チッ!」

 それでも、オフィエルが一瞬でも躊躇したのは、宿主にされたアレックスという男がささやかな抵抗を見せてくれたのだろう。


 そう願い、ウッズェはフッと笑いながら消えてゆく。



 h4白騎士(ナイト)をテイクしたg5兵士(ポーン)のウッズェ(騒暴死霊(ポルターガイスト))撃破により、アンデスィデ終了。



 第27手の棋譜は。



 白:Qc1


 黒:gxNh4→gxNh4(ただし、返り討ちに遭ったので赤文字表示に変更)


 と、なり、盤上からg5の兵士(ウッズェ)の駒だけが姿を消した。 


 







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