-149-:マジかよー
「違うんだ。チッ!そうじゃない!チッ!」
ウッズェの舌打ち交じりの指摘は、何故だ!何故当たらない!?と焦りに焦るシンシアに大いなる不快感を与え続けていた。
「チッ!ったく…。腕から射出したビット(遠隔攻撃端末)ってのはな、魚みたいに群がって相手を追い掛け回すんじゃなく、チッ!だから、違うッ!何度も言わせるな!チッ!立体的に広がって、相手を囲んで攻撃するものなんだ。チッ!」
当初の運用方法と異なる使い方をするシンシアに、苛立ちを隠せずにいた。
ビットから発射される弾丸は、絶えず浮遊滑走移動をし続けるダナに、当たるどころか、掠りも、至近弾すら発生させられないwww。
そもそも止まっていても命中そのものが難しい。
「オイ!ウッズェ!こんな見たことも無い武器!絶対当たられる気がしないわ!」
とうとう弾切れを起こしてしまったビットに、遂にシンシアは匙を投げてしまった。
そしてダナを見やり。
「そもそもアイツ…。アイスホッケーの選手のように、常に滑り放しじゃねぇか。この武器の弱点を知っているのか?」
遠隔攻撃端末による攻撃は、アニメの世界において使い古された“手垢まみれ”の攻撃手段である。
使用者が強く見えるイメージを視聴者に与えやすく、作画が楽になる利点もあれば、戦闘シーンがつまらなくなる欠点抱えた、いわば諸刃の剣。
どの作品でも、大体“絶えず動き続ける”事で回避できたり、天才キャラになると初見で撃ち落としたりもする。最近ではモブキャラさえも撃ち落とせないほどに待遇が悪くなっている。
「ウッズェェェ。お前の元のマスターは何を考えて、こんなアホな武器を構築しやがったんだ?」
あまりの使い勝手の悪さに、怒りが込み上げてくる。
チッ!
「ゲンナイなら…チッ!ヤツなら使いこなしていたぜ。チッ!」
「何!?」
「ゲンナイはな。チッ!アイツは建築デザインのひとつ、照明プロデューサーを目指していてな。空間認識力が非常に高くて、照明ばかりか、細い光を放つレーザーでさえ、どの方向に設置すれば何処に当たるか?瞬時に計算していた。アイツは天才だよ」
ゲンナイを語るウッズェの口調は、どこか懐かしむような穏やかなものだった。
「ふん!」
シンシアにとって、それは鼻もちがならない。
だったら!
ウッズェの右腕に、黄色く光る魔方陣が現れて高速で回転を始めた。
手には青竜刀が握られていた。が。
「一体何なんだ!コイツも使えねぇ武器かよ…」
青竜刀は重い上にウッズェの指は3本指。うまく握れない。
文句を言いつつ、振り上げてはガウォーク形態のダナに斬りかかる。
あえなく空を斬るウッズェの青龍刀。
先ほどから、無駄なオブジェクトと思えた航空機形態の時から上部に付いている日本刀の形をした物体にダナが手を掛けた。
斬ッ!!
再度斬り掛かったウッズェの青龍刀が宙を舞っていた。
「アイツ…またカタチが変わったぞ…」
驚愕するシンシアの視線の先には。
人型形態へと姿を変えたダナが、ウッズェの得物を打ち飛ばしたのだ。
ダナは3段可変仕様の盤上戦騎だったのだ。
(マジかよー)
クレハの目は点になっていた…。
戦闘機からガウォークに変形した時点で嫌な予感はしていたが、まさか!まんま“歌と3段可変戦闘機と三角関係”のロボアニメの主役メカを持ち出してくるとは、呆れてモノが言えないwww。
これがアニメならば、原作者からクレームが入って放送禁止かモザイクレベルのパクリ具合。
「戦争屋!剣ぐらい、しっかりと握れ!」
野太刀の切っ先をウッズェに向けてのご説教。
「チッ!コイツ…まったく太刀筋が見えなかったぜ…。チッ!」
本物の強者を前にウッズェは怯む。
「ガキがぁーッ!」刀を拾い上げて、今度は両手で握り直して再度斬りかかる。
キィィィーン。
高い音を響かせて、再度ウッズェの青龍刀が宙を舞った後、地面に突き刺さった。
「戦争屋!これで君は僕に2度殺された事になる」
「馬鹿な!こんな温い温室育ちのガキに、私が負ける訳が無いんだ!」
現実を受け入れられずにいた。




