表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[14]騎士と兵士
142/351

-137-:それができていれば苦労なんてしませんよ

 もう1騎の盤上戦騎が戦ってくれたら、ヒューゴを戦わせる必要は無くなる。


 そう考えたココミではあったが。


 肝心の、ダナのマスターを得ていないこの現状、抜け穴を見つけたはずなのに、誤って落とし穴に落ちてしまった気分だ。


「そうでした!」

 閃いたかのごとく思い出し。


「ライク!私は約束通りにヒューゴさんにクィックフォワードと契約を結んでもらっただけでなく、彼にアンデスィデに参戦してもらっています。今度は貴方が私との約束を果たす番です」

 非難するかの如く、ライクを指差すと、「約束?」繰り返して訊ねてきた。


「今すぐに、あの包帯の盤上戦騎(ディザスター)をこの空域から退かせなさい」

 命令口調で告げる。


「え?アンタたち、何か約束事を交わしていたの?」

 訊ねるクレハに「クレハさんたちが授業に励んでおられた頃の話ですから」素っ気なく追いやられてしまった。


 すると、ライクはクスクスと小さく笑い。

「ああ。そうだったね。だけど、約束自体は忘れていたけど、僕は君との約束を違えたワケじゃないよ」


「何を言っているのです?こんなに人が集まっている場所で戦ったら、たくさんの被害者が出てしまうではありませんか」


「じゃあさ」

 辺りを見回し、ライクは街へと通じる桜並木へと指差して。


「街の方へ戦場を移すかい?」訊ねてきた。


「そんな事をすれば、さらに被害が拡大してしまいます」

 反論した瞬間!ハッ!とココミはある事に気付いた。


 天馬学府は確かに人が溢れている。


 だけど、街と比べると、その数は圧倒的に少ない。


「やっと気付いてくれたようだね。僕は“最も(・・)被害が少ない場所に戦場を移す”と約束したはずだよ」


 茫然と立ち尽くすココミは頭を振ると。


「そんなの、ただの言葉遊びではないですか!早々に上空へ移るなり、もっと遠くへ行くなり、あなたの駒に命令しなさい!」


「何だか知らないけど、ココミちゃん、ライク君に一杯食わされたのね」

「クレハさんは黙っていて!」

 首を突っ込むも、またもや追いやられてしまった。


 しょうがないのでライクの元へと寄ると、彼の魔導書はチェス盤のページが開かれたままだった。


 チェス盤を覗きこむ。


「これ、どうしたの?」

 盤面を指差して訊ねた。


「何か?」

 ウォーフィールドが不躾にも、質問を質問で返してきた。


「この隅っこでアンデスィデが発生しているんだよね?」


「そうですが。何か?」


「お互いに騎士(ナイト)兵士(ポーン)が各1騎ずつ。なのに、いま学園にいるのは1騎ずつ。お互いの残りのディザスターは今どこで何をしているの?」

 クレハの質問に、ココミは頭を悩ませる。


「それができていれば苦労なんてしませんよ」

 皆まで聞くまでもなく、未だにマスターを得ていないのだと察した。


 で。


 ライクへと向き直る。


「シンシアなら、あと5分くらいで到着するんじゃないかなぁ。渋滞にでもハマっているのかもしれないね」

 何をおバカな事をおっしゃっているのか?


 盤上戦騎は空を飛んでいるのでしょう?そんな空想科学兵器が渋滞にハマるなんて。

 小馬鹿にしたような笑みでライクを見やる。


 すると。


「ライク!貴様ぁ、何なんだ?この騎体は!?」

 ライクの魔導書から、シンシアの怒鳴り声が聞こえてきた。


「どうしたんだい、シンシア。そんなに荒れて」

 またもやため息。


 そんなライクを見やり、彼はつくづく幸せを逃す性質(たち)の子供なのだなと思う…。まだ子供なのに。


「この盤上戦騎、飛行できないじゃないかよ!しかもキャタピラ走行なんて、鈍足にも程があるぞ!」

 クレームを付けている。


 ココミは遠い目をしてライクとシンシアのやり取りを眺めていた。


 道路に沿って移動していた理由がコレだったのね…。


 無限軌道(キャタピラ)とはいえ、ことごとく建物を踏みつけて来るよりも、道路を走ってきた方が遥かに早いものね。


 現在、時速何㎞で走行しているのかしら?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ