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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[13] ミドルゲームスタート!!
131/351

-126-:彼ならば!


 ―1年前―



 滋賀県高校剣道春季大会(インターハイ予選)にて。


 場内は時にどよめき、時に時間が止まったかのような静けさに包まれる事態に陥っていた。


 下馬評で断トツで優勝するだろうと噂された選手たちを破る大番狂わせが、立て続けに発生していがらだ。


 一人は、医療専攻校として創設された城砦西高校の1年生、草間・涼馬(くさま・りょうま)


 そして、もう一人は、お嬢様学校として有名な、本年度より共学校となった天馬学府高等部の1年生、高砂・飛遊午(たかさご・ひゅうご)


 天馬学園は、元々女子しかなかった剣道部に無理やり男子剣道部を設立して今大会に参加。ただし部員のうち数名は、バスケット部から助っ人参戦(逆バージョンもあり)している有様。


 そして、城砦西高校は、いままで団体戦はおろか、個人戦でも傷痕一つ残せずに、人知れずトーナメントから脱落していた学校なのに、今年は会場の注目株となっている。



 草間・涼馬の剣は基本を崩さず、ただ驚異的な瞬発力で、まるで雷光を思わせる剣で一本を奪ってゆく。


 それは、剣が2振り存在するかのごとく“振り下ろし”と“斬り上げ”が同時に襲ってくる感覚を抱かせる超高速の剣…。



 その剣を見たものは、誰もがそう思ってしまう。



 アレは巌流(がんりゅう)ツバメ返しではないか、と…。




 しかし、試合以外に、相手に一切目を向けない彼の態度は対戦校全てからひんしゅくを買っていた(彼本人がスポーツ剣道を見下しているから)。



 方や高砂・飛遊午の剣は、尋常でない破壊力を見せつける試合を展開。

 彼の剣を受けた者は、まるで吹き飛ばされるかのように後方へと飛んで一本を献上していた。


 当然のごとく、どの試合においても物言いが付いて、彼にとって会場内はすべてアウェー状態となっていた。

 さらに輪をかけて、彼のふてぶてしい態度は、さらに反感を買いまくる(彼自身に、スポーツ剣道には全く興味が無いゆえ)。


 会場内の誰もが、彼らの敗北を望む中、ついに二人は剣を交える事になる。



 団体戦中堅戦で二人の剣は激突した。


 リョーマの高速での打ち込みを、ヒューゴは双剣を駆使してしのいで見せた。


 瞬殺で勝負を決めてきたリョーマが、この大会で初めて2分以上も戦っている。

 隙を見せれば、あの殺人的な破壊力の剣を食らう事になる。


 リョーマはただただチャンスをうかがう…。


 高砂・飛遊午は通常の二刀流の剣士とはまるで異なる。


 守りと攻めを併せ持つのが通常の剣だとするならば、彼の剣は、まるで二人を同時に相手をしていると錯覚させる攻守に転じる事のできる器用なものだった。

 力押しだと受け流されるし、守りに回れば、どちらから攻めてくるのか予測できない。



 非常に厄介な相手だ。


 だが。


 ヒューゴが左右攻守の構えを入れ代えようと左足を引いた、瞬間!


 リョーマの剣が、まるで獲物に食らいつくサメが大口を開けたように上下から襲い来る。


 ツバメ返し!!


 振り下ろされる(いち)の剣を受け流され、斬り上げられる()の剣を弾き飛ばされた。


 大会が始まって、初めてリョーマの必殺剣を破る者が現れた。



 (コイツ!)

 自慢の剣で仕留められず悔しさ露わにするも。



 未だに勝負を決められないリョーマは焦るどころか、彼との戦いが、とても面白く感じられてきた。


(彼ならば!彼の剣が相手ならば、僕の全力を発揮できるはず!)


 リョーマの心のタガが、今まさに外れようとしていた。





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