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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[13] ミドルゲームスタート!!
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-121-:どうかしてるぜ

 シンシアの発砲を受けてシンジュの体がふわりと、フェイダウェイシュートを放った時のように、軽く後ろへと跳んだ。…ような気がした。


「シンジュちゃん!」

 思わずクレハが声を上げた。


「いきなり“ちゃん”付けで呼ばないで。馴れ馴れしいわよ」

 クールな彼女は、銃弾を受けて跳んだ訳ではなかった。


 その事に関して、ひとまずは安心。


 が、なぜ、彼女は跳んでいるのか?


 その答えは、ぼんやりと姿を現した影によって導き出された。


 シンジュは誰かに抱きかかえられている。


 先ほどまで透明だった誰かに。



「チッ。早速現れやがった。オイ、シンシア!まさか、俺にロボの旦那と戦えって言うんじゃないだろうな?」



 アイツがロボ!?


 姿を現したその男性は、これから夏を迎えようとするこの季節に、ファー袖のベストを裸の上にまとっており、しかも、パンツはフィット感のあるレザーパンツに同じくファーの付いたブーツを着用。


「あの人、暑いの?寒いの?」

 シンジュをかばって、背中に受けた銃弾をものともしない強固な防御力など、ふと頭をよぎる疑問がすべて吹き飛ばしていた。


 クレハが漏らした「大丈夫?」なる心配は果たして何を指してのものなのか?


「魔者だから銃弾が効かないのか?アイツが人狼(ワーウルフ)だから効かないのか?どっちなんだ?」

 隣で、当たり前の疑問を口にするヒューゴ。



「チッ!味方に銃弾をブチ込むなんて、どうかしてるぜ。チッ!」


「同じ勢力ってだけで、私はあの子を味方とは思っちゃいないさ。強いて言うなら、“競争相手”ってところかな。強いヤツが弱いヤツを食らうだけのハナシさ」


 会話から察するに、『弱肉強食』だと言いたいのだろうが、この場合、『共食い』が妥当な表現ではないだろうか?

 ヒューゴはしみじみ思う。


 ジャキッ!と今度はヒューゴへと銃口が向けられた。


 ヒューゴの視線は依然銃口へと向けられたまま。そして引き金に掛けられる指先に全神経を集中させる。


 弾速など到底計算できないが、指が動いた瞬間に左右どちらかに跳べば銃撃をかわせるのではないか?一縷(いちる)の望みをかける。


「シンシア、チェックメイトだ」

 ロボが向き直る事もせずにシンシアに告げた。


「何をほざいているんだ?そこから私を仕留められるって言うのかい?」

 拳銃を手に余裕を見せるシンシアに対して、ウッズェ(元ウォレス)は何かに恐れを抱いているようにキョロキョロと周囲を見回している。


「オイ、シンシア!ロボの旦那を怒らせるな。チッ!旦那の言う通り、少しでも動いたら、俺たちはあの世へ直行しちまうぞ!」

 何を必死の形相で言っているのやら?クレハたちは焦るウッズェに首を傾げる。


「ウッズェ!腹を括りな」

 告げて、もう一度銃口をシンジュへと向ける。


 だが。


「チッ!止めてくれねぇと、俺まで巻き添えを食らっちまうんだよ。チッ!」

 拳銃を手に、シンシアは顔をしかめる。引き金にかけた指が動かせないでいるのだ。

 どんなに力を込めようとも、全く指は動かない。


「ウッズェ、貴様ぁ、私を金縛りに掛けたな!」

 テレキネシスの応用技といったところだろうか。さらに。


 シンシアの体が、打ち上げ花火のようにビューンと勢いよく飛んで行った。

 彼女に続いて「チッ!!」一際大きく舌打ちを鳴らしてウッズェも飛翔。

 


「高砂・飛遊午ぉーッ!今日の3時半だからなぁー」

 飛び去りゆくシンシアの声がだんだんと小さくなってゆく…。


 なんて賑やかな。

 クレハは、ただ、そう思う。


「だが、こっちがまだいる」

 ヒューゴの声に、クレハはシンジュとのやり取りを思い出した。


「タカサゴ!ベルタさんを呼ん―」

 告げようと向くも、ロボが、すでに眼前に迫っていた。


 恐るべし魔者の身体能力!


 しかし。


 ロボのこめかみに流れる汗を目にすると。


「やっぱり暑いんじゃないのか?」

 恐怖など感じる暇なく、ヒューゴは訊ねてしまった。


「暑くない!」

 毅然とした態度で言い切るも、体は正直。キラリと汗が光る。



「シンジュちゃん。彼、暑さで死にそうだよ。ちょと休ませてあげたら」

 シンジュへと向き直り告げると、「せめて薄着にさせてあげたら」付け加え。


「人の心配をするよりも、自分たちの心配でもしたら?」

 シンジュの腰背部に下げている、尻尾を模したファーのスマホストラップがふわりと舞った。


「貴方にその言葉を、そのままお返しします」

 シンジュの首筋を一条の汗が流れ落ちる。


 背後からベルタが彼女の首筋に脇差の刃を突き付けていた。


「ロボ。ベルタの透明化が見抜けなかったの?」

 絶体絶命の危機に瀕しながらも、シンジュはロボの手落ちを指摘した。


「今の彼女に、そのような芸当は不可能だ。おそらく、高砂・飛遊午が座標を指定して召喚したのだろう」


「座標を指定ですって!?」

 信じられないと、目を見開いた。


「自分の位置から君のいる方位と距離を指定してベルタを召喚したのさ。先日、カムロとの戦いで学ばせてもらったものでな」

 ヒューゴは、スマホを手に説明をくれてやる。


「いつの間に電話をしたのかしら?」

 唾を飲み込む事すらできない状況で、シンジュは説明を求める。


「君が有名人だと聞いた時に写真を撮っておこうとスマホを取り出したところに、あのシンシアていう女が現れて―」「ちょっと待って!」

 説明をしている最中、シンジュが割り込んできた。


「それって、私を盗撮しようとしたの?」

 状況は一変!思わぬ嫌疑を掛けられてしまった。



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