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第48話:クランメンバー全員で応戦しました。

※2019/10/29 一部誤字修正。

皆が脱出を終えるまで俺達はここで足止めをする。そして追いついたグロテスクなアイツ・・・いい加減なんか名前つけるか。

 そうだな・・・男性探索者の顔に張り付いていたからフェイスイーターとかでいいか。どうせ仮の名だし。


 フェイスイーターと戦い始めてから数分、既に脱出すべき人達はいない。俺達だけだ。じゃあもう足止めする必要はないな、さっさと逃げるべ。


 って思考に至りたいんだけど、そうも行かないよなぁ・・・。

 こんな危険なモンスターを遺跡の外に放つとか論外。だってこんなのが外に出てきて繁殖でもしようものなら、ちょっとしたバイオハザードじゃね?やめてくれよ・・・まだ全然探索出来てないっていうのに。

 最善がここで倒す事。それが無理なら妥協でこの遺跡内から出ないようにする事だが、入り口が俺らの通って来た縦穴だけどは限らんしなぁ・・・どうにかしてここで倒し、サンプルとして死骸を回収だろうか。


 とはいえ、こういうのは得てして最悪を想定して動くもんだ。コイツが何か別のモンスターからの突然変異体で一匹だけなら潰してハイ終わりなんだろうが、既に遺跡内の何処かで繁殖していて今まさに次代が誕生し増えていたとしたら・・・うんもうヤダ。

 そもそもコイツが一匹とは限らないわけで。何処か別の場所に潜伏でもされていたら、こちらとしてはお手上げである。

 被害拡大を防ぐ為コイツを倒し、速やかに入り口を封鎖。迅速に遺跡都市へと帰還しこの事を公表する。後はもう自己責任で動いてくれとしか言いようがない。


 そして肝心のフェイスイーターとの戦闘はというと、物の見事に膠着していた。


「むぅ、両腕と正面の顔部分だけかと思ったのにそれ以外も硬い」


 不意を突いてフェイスイーターの多脚へと斬撃を見舞ったミズキだがこれも弾かれてしまった。ミズキは手が痺れたのか、顔をしかめて腕を振っている。


「お~・・・やっぱり動きが早いね!上手く近づけない!」


 ミズキと入れ替わりで攻撃を仕掛けようとしたカシアだが、フェイスイーターはカシアの動きを察知し、牽制としてその両腕の刃を放ってくる。カシアはソレを時には避け、両手のガントレットでパリィしてやり過ごす。


「姉さん、直接受けちゃダメだからね?コイツ以外と力も強いから」


 そう言ってカシアがフェイスイーターの攻撃を引き受けている合間を狙って、気配を上手く消していたマグルが強烈な蹴りを真上から放つ。蹴りというより最早踏みつけに近い。遺跡の低い天井を足場にして加速し、自身の重さも味方に付けた一撃だ。

 サソリの様な平たい形状をしているフェイスイーターにはとても有効な一撃だと俺も思う。とても頑丈な装甲を纏っているコイツに斬撃は通り難い。打撃が一番効きそうな感じだ。


 マグルの一撃が入る瞬間を見切ってカシアがバックステップで距離をとる。瞬間、ハンマーを振り下ろしたような一撃がフェイスイーターの全身を襲う。余りの衝撃でフェイスイーターが地面にめり込む程だ。

 すぐさまフェイスイーターの上から離れ、カシアの横へと戻ってくるマグル。ちょっとカッコいいぞ。


 傍から見ていてとてもいい連携攻撃だった。


「カシア、マグル。今の連携はとても良かったぞー。カシアがわざと気配を消さずに攻撃を惹き付けたのが効果的だったな。お陰でマグルは強烈な一撃をタイミングを見計らうだけで放てた。凄いぞ~」


 本当はすぐさま2人に近寄ってナデナデしたかったが、今はフェイスイーターを包囲している状態だ。包囲に穴を空けるわけにはいかない。

 カシアは無い胸を張ってドヤ顔してるが、マグルは何処となく恥ずかし気だ。そんな2人が放つ愛くるしさは例え緊張感漂う戦場であっても薄れる事はない。


 その証拠に・・・ミズキも何やらソワソワしてチラチラとカシアとマグルの方を見やっているし、アルに至ってはフラフラと2人の方へ・・・って、コラ!包囲に穴を空けるんじゃねぇ!俺だって我慢してんのに!ツバキとシリカを見習え!チラッとカシアとマグルを見やるだけで泰然自若としてるだろ。内心は分らんが。


「アルー?それ以上、包囲の穴を広げるつもりなら目の前の怒り狂ってるソイツを1人で相手してもらうぞ?」


 俺がニッコリ笑顔でアルにそう問いかけると、我に返ったアルはすぐさま持ち場へと戻っていく。後でお仕置きですな。


 マグルの一撃は流石に効いたのか、クレーター状になったその場から這い出て来る様子は見られない。が、その代わりとばかりに怒りの気配がグングンと高まっていくのを感じる。


「お父様、今の攻防で打撃が有効と判断したわ。今の内にちょっと加減無しで一撃を加えてみてもいいかしら?」


 シリカが俺に許可を求めて来る。体を得て日が浅い為、最大出力での動きは控えるようにして貰っていた。理由は簡単、単純に危ないからだ。自身で作った体だからスペックは把握してるだろうが、想定外の事はやはり起こる。遺跡都市に入るまで駄々洩れ状態だった気配が代表例だ。それ以外にも最大出力で動いた結果、自壊する恐れだってあるはずだ。

 本当ならそれら諸々のテストを行うはずだっただろうが、そんな暇なく今に至っている。俺はそこら辺を踏まえた上で決断をする。


「最大出力での一撃はやっぱ許可出来ない。けどその手前・・・そうだな、9割くらいの出力でならオッケーだ。分かってると思うが、結果は直に教えてくれ。嘘はダメだぞ?」

「わかったわ。もうお父様は本当に心配性なんだから」

「娘の心配をしない父親なんぞ、父とは認めん」

「ふふ、こんな私を娘として愛してくれるお父様には感謝してもしきれないわ」


 シリカはそう言ってフェイスイーターの元へと近づいていく。


「皆、警戒は怠るなよ?シリカも一撃離脱でよろしく頼む」


 皆が頷き、シリカがクレーターへと到着する。おもむろに拳を振り上げたと思った瞬間、凄まじい衝撃波がこちらへと突き抜けて行く。ほぼ同時に地面の揺れと爆音が聞こえた気がしたが、それどころじゃ無かった。


「どわぁぁぁぁっ!?」


 俺は迫り来た衝撃波で軽く吹っ飛んだ。すぐさま伏せてやり過ごしはしたが、それでも数メートルは吹き飛ばされた。アブねぇ!そしておっかねぇ!!これで全力じゃないとかどんだけだよっ!

 ・・・そうだ、皆無事かっ!?俺は辺りを見渡す。煙が舞い上がっており、良く見えねぇな畜生!あっ!こんな時こそ念話を・・・って、あぁぁぁぁっここって電波?が届かないのか念話が使えませんでしたねっ!?

 軽くパニくる俺。想定外もいい所だ。これ程までに火力があったとは・・・見た目がラスボスなだけにチビっちゃいそう。もう勝てる気がせん。シリカが味方処か俺の娘で本当に良かった。敵だったらと思うと・・・誰が倒せんだよ?絶望して即座に白旗上げる自分しか想像できないわ。

 そんな感じでオロオロしている内に煙が晴れていく。


「お父様!皆!ちょっと大丈夫!?」


 シリカの慌てた声が聞こえて来た。向こうもここまでとは思っていなかったんだろうな。動作テストって大事だよね・・・つくづくそう実感したわ。


「あ~・・・俺は大丈夫だ。多少吹っ飛びはしたが」


 俺は無事である事をアピールする。それに続く形で、


「ビックリ。シリカ、凄いね」

「あはははっ!シリカ姉すごーい!」

「耳が・・・耳が痛いです」

「あっぶな~。盾で守らずに伏せて正解だったよ」

「むぅ、シリカであれ程の出力となると僕もマズイよねぇ・・・いやはや、トンデモナイね」


 ミズキ、カシア、マグル、アル、ツバキの順で無事である事を知らせて来る。


「ゴメンなさい!まさかこんな事になるなんて・・・」


 シリカが申し訳なさそうに謝ってくるが、許可を出したのは俺だ。俺の見込みが甘かったのであって、責任という事であれば間違いなく俺にある。


「シリカが謝る必要はないさ。許可を出したのは俺なんだからさ、だからそんな泣きそうな声を上げないでくれ。大丈夫だ、皆分かってるから」


 俺がシリカを宥めていると皆も集まって来てシリカを宥めだす。カシアのそれはただ単にじゃれついているようにしか見えんがまぁいいか。

 既に包囲もクソも無くなっているが、流石にアレは耐えられんだろ?更に深くなったクレーターの方を一応は警戒しつつ、落ち着きを取り戻したシリカの状態を確認する事にする。


「シリカ、体の方はどうだ?」

「大丈夫よ。衝撃で破損したりヒビが入る事も無かったわ。お父様に言われた通り、9割くらいの出力で攻撃してみたけど、硬い物を砕くような手ごたえがあったの。すぐに離れたから結果は分からないけれど」

「そうかそうか、何はともあれシリカが無事ならそれでいい」


 俺はシリカの無事を確認し終えるとフェイスイーターがどうなったのか確認するべく、クレーターへと近づいていく。中を覗き込んでみると、


「・・・うん、これはこれでグロイ」


 そこには腕や足やらがモゲて全身にヒビが入り、至る箇所から体液を噴き出しているフェイスイーターの姿があった。

 皆もクレーターを覗き込み、口々に感想を述べていく。


「結局私の攻撃は通らなかった。悔しい」

「黒いモンスターの方が強かったー」

「それは姉さんが単独で戦ったせいです。今回は全員で袋叩きなので」

「うーん、ツバキどう思う?リミッターとか付けた方がいいかな?」

「難しいよねぇ。僕達の匙加減だとは思うんだけど、如何せんうっかりミスが・・・」

「・・・キモッ!」


 逞しいな皆。1人を除いて。俺が手を出す必要も無かったわけだが、フェイスイーターの耐久力は驚異的と言える。

 これはガルドさん達じゃ歯が立たないか?いや・・・今回は物理でゴリ押ししたが、何か弱点とかあるかもしれない。一定以上の温度は耐えられないとか冷気に弱いとか感電するとコロッと死ぬとかそんなの。

 何はともあれ止めを刺してバックパックにぶち込み、ガルドさん達を含めた皆でアレコレ検証する必要があるな。問答無用で襲い掛かってくる存在だ、身を守る為にもしっかりと回収し対策を取らせて貰う。


「というわけで、アル。あの瀕死で気持ち悪い奴に止めを刺す栄誉を与えよう。さぁ行くのだ」

「・・・え?キョウ、冗談だよね?」


 アルが俺の事を信じられないという目つきで睨んでくる。


「今日のアルは良い所がひとっつも無いからな。さっきの攻防も飛び掛かってきた時だけ迎撃するだけで、積極的に攻撃してたわけでもないし。斬撃が通り難い以上、有効そうなのは打撃か貫通攻撃なのに・・・全く、アルにはガッカリだ」


 俺が本日のアルの成果をそう表する。ぐうの音も出ないアルは泣きそうな表情になり、


「だって、だって~・・・気持ち悪いんだもん!」


 アルがグロ耐性マイナスなのは良く分かっている。が、皆が頑張っている中1人へっぴり腰で見ているだけなのは流石に看過できん。いい機会なので、少しでも耐性がプラスに傾く様ここで訓練だ。

 皆もそれが分かっているのか苦笑いだ。カシアだけは良く分かってなさそうだが、そこはご愛敬。


「だまらっしゃい!そんなアルのグロ耐性を上げる為にも、この落とし穴と化したクレーターへと飛び込みそのランスでブスっと一突きしてくるのです。勿論、一突きで止めを刺せなかった場合は何度でも突いて貰います。なぁに、ちょっと全身体液塗れになるだけです。危険は既にシリカが排除してくれたので、簡単なお仕事ですよ?」


 俺がそう語った内容を想像してしまったアルは、


「い、いやぁぁぁぁっ!ヤダっ!絶対に嫌!ムリムリムリッ!お願いだからそれは勘弁して下さいお願いだからぁぁぁぁ~・・・」


 遂に泣きが入ってしまうアル。うーん、流石にここまで来ると可哀そうになって来たな?けど、このままじゃ何時まで経ってもアルのグロ耐性はマイナスなままだ。

 俺がどうしたもんかなと悩んでいたら、カシアが何を思ったのかクレーターへと飛び込んでしまう。そして芋虫状態へと形態移行してしまったフェイスイーターを掴んだかと思うと、それを抱えてカシアが戻って来た。未だに全身から体液が噴き出ており、弱弱しくギチギチ鳴いている。


「ねぇ、あるじ!コイツどうするの?」


 そんな動きを予想していなかった俺は咄嗟に答えが出なかったんだが、その前に


「にぎゃぁぁぁぁぁぁっ!?・・・うーん」


 そんな叫びを残してアルが気絶してしまった!あまりにもあんまりな光景にとうとう意識がシャットダウンしてしまったようだ。


「アル姉!?どうしたのっ?」


 カシアがビックリしてアルを心配しているんだが・・・何と説明したものか。尚、気絶してしまったアルは咄嗟にマグルが支えたので無傷である。ナイスだマグル!


「そうだな・・・うん、とりあえずカシアはソレを地面に置こうか」

「は~い」


 何とも言えない微妙な空気が流れるが、アルが気絶してしまった以上仕方ない。俺は頭をガシガシと掻きながら最早虫の息であるフェイスイーターへと近づき無言で止めを刺した。


「カシア済まんけども、クレーターの底にあるコイツのパーツを回収してきてくれるかな?」

「いいよ~」


 元気よく答えて再度クレーターへと飛び込むカシア。アルには悪いが、子供特融の無邪気さによる行動なので叱るに叱れん。怒るとか論外だ。

 後でカシアには何でアルが気絶したのか説明はする。あとは当人達で解決して貰うとしよう。


 俺はそう考えを纏め、バックパックにフェイスイーターであった物を収納していくのであった。

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