第49話:蓋作って諸々設置して帰りました。
「よし、こんな所だろう」
回収するモノを回収し縦穴から抜け出た俺達は、この物騒な遺跡に続く縦穴を塞ぐべく蓋を作っていた。シリカとツバキの協力があれば、さして時間もかからずに出来上がるというものだ。
適度な大きさの石をシリカに加工して貰っている間に、俺は縦穴の形状を整える。ツバキには蓋を引っ張る為の取っ手と最低限の雨風が凌げるような簡単な東屋を作って貰った。
材料類を集めたのは加工業務の無いクランメンバーで、気絶から復帰したアルが『私にも活躍の場を!というか、本当に今日の私役に立ってないから汚名返上の機会をください』との事で、かなり精力的に動いてくれた。
縦穴に蓋をはめ込んだ後、次々と出来上がる東屋のパーツを地面に打ち込み、組み立てていく。そして今さっき出来上がった所だ。
「ハァッ・・・ハァッ・・・もうムリ」
「お疲れだアル。今の作業で面目躍如って所だろう・・・残った片付けとかは俺らがやっとくから、ちょっと休んでいるといい」
肩を激しく上下させて息を整えているアル。いい働きっぷりだった。お疲れさん。尚、気絶の要因を作ってしまったカシアは、あの後ちゃんと説明ししっかりと反省させ、アルの目が覚めた時にちゃんと謝っている。耳がペッタリと垂れてシュンとしているカシアにアルはイチコロで『大丈夫、気にしないで!私が耐性低いのが悪いんだから!でも、次がある時は気をつけてね~?』とだらしない顔でカシアの頭をナデナデしていましたよ。
使えそうな端材などをバックパックに放り込み、アルの呼吸が落ち着いてきた所で俺達は移動を開始する。先に脱出を果たした面々に追いつくのは無理だろうが、こちらも急ぎで戻るとしよう。
道中運悪く俺達と遭遇してしまったモンスターが、一部バックパックの肥やしとなったりカシア達に追い立てられる等あったりしたが、概ねトラブルも起こらず遺跡都市へ繋がるゲート前まで戻ってくる事が出来た。
遺跡側の最終防衛ラインを監視しているミリアさんに挨拶を済ませ、俺達はバンクへと報告を済ませる。すぐさま例の会議室へと通された俺達は、レオナの母親とその付き添いをしているのであろうレオナ本人を除いた面々と無事再開する事が出来た。心底心配してくれていたのかガルドさん達は俺ら全員が無事だと分かると、近場にあったイスに座ってグッタリしだしたほどだ。何かスイマセン。
「この度は本当に迷惑をお掛けしました。こちらのメンバーが誰一人として欠けずに済んだのは、ここにいる皆さんのお陰です。ありがとうございます」
リカルドさんがまずクランのリーダーとしての謝罪をその場にいる皆に行い、その息子さんであるレオナのお兄さん、クランメンバーの双子の女の子達からも謝罪やお礼を俺達は受け取った。
レオナのお兄さん、名はカイムさんと言うのだが、この人もレオナの兄らしく大変誠実な人だった。一人一人にキチンと謝り、そして大変感情の籠ったお礼をしていたのでとても印象深かった。
尚、お兄さんはレオナをイケメンにしたらこうなるという見た目をしている。
更にその父親であるリカルドさんは、そんなイケメンお兄さんの髪をオールバックにして顔を中年風味に老けさせ、顔を横断するように刻まれている古傷が大変印象的でチョイとワル気味な感じだ。
どちらも秋田犬そっくりな耳をしており、その両耳の内側から角が2本突き出ており、途中から後方へと折れ曲がる様な感じで伸びている。
レオナは丁度角が生え代わっている時期だそうで。それで角が無かったわけか。
クランメンバーである双子の女の子達は姉の方がミアン、妹の方がニーナという名だ。この双子姉妹は正しく猫というイメージだ。見た目的にも性格的にも。
何処となくサッパリとした性格をしているのが姉のミアン、活発な性格をしているのが妹のニーナ。妹さんはどっちかというとカシアに近いイメージか。
どちらも黒髪黒耳黒尻尾で姉がショートヘア、妹がセミロング。お胸はどっちも標準サイズのような気もする。この2人は珍しい事に角が見当たらない。レオナの様に生え代わりの最中という気配もない。
この双子達は皆に謝罪とお礼を言った後、角が無い俺とカシアとマグルが気になったのか、
「ねぇ、貴方達の戦闘を見た時、角が無いにも関わらずフォースを使っていたよね?アレってどうやっているのか・・・教えてもらう事って出来るかな?」
お姉さんのミアンが俺にそう聞いて来た。妹の方は何やらカシアとマグルと一緒に雑談をしている感じだ。
で、ミアンからの質問についてなんだが・・・どうするか?教える事は出来るが俄かに信じがたい内容であるし、そもそも俺の手に触れずに出来るのかが不明である。
そうだな・・・テストケースというわけじゃないが、俺の手の力無しで習得できるのか試してみるのも悪くないか。勿論、説明をして向こうが納得すればの話だが。
「そうですね・・・教える事は出来ます。けど、出来るようになるかは保証できませんよ?後、内容が内容なので情報を他人に漏らせないよう契約をして貰う事になりますが・・・どうします?」
「じゃ、契約しましょう」
決断早いなっおい!
「・・・一応、リカルドさんから許可貰って来てもらえます?後々クラン同士で問題になるの嫌なんで」
「わかったわ」
そう言うや否や、リカルドさんの所へと行き二言三言話をするとこちらへ戻ってくる。
「探索に影響が出なければ好きにしていいってさ」
軽いなリカルドさん!もうちょっとこっちの事を警戒したりしませんかね、普通。
「じゃあ後で契約しましょうか」
「え?今すぐ契約して。すぐに試したいから」
せっかちだなっおい!段々頭が痛くなって来たぞ?俺の顔がちょっと崩れかけそうになってきた所で妹のニーナとカシア達がこっちにやって来て、
「ねぇねぇ、あるじ?私達が使ってる力の事を教えて欲しいって言われたんだけど、ニーナに教えてもいい?」
カシアがこっちで話してた内容とほぼマンマな事を俺に伝えて来る。そっちもかい。まぁ、カシア達クランメンバーは俺からの許可が無いと、この手の話は出来ないように契約している。
妹さんの方にも同じ説明を行い同じ流れになったので、リカルドさんからオッケー貰ってきての旨を伝えた所、今度はニーナがリカルドさんを引き連れてきて、
「話はわかった。あれだ、キキョウ君。もう面倒くさいからクラウドを結成してしまおう」
向こうから謝罪とお礼を受けた時にお互い紹介しあったから名前はもう分かっている。が、それにしてもだ・・・今面倒くさいって言ったな!?クランで頭張ってる人がそれでいいんか?流石に適当すぎやしないかと、これからお付き合いが続いていきそうな当方としては不安で不安で堪らんのですが。
「クラウド?それは何でしょうか?」
聞き覚えの無い単語が出て来たのでリカルドさんに質問をしてみる事にする。
「おっと、キキョウ君達は最近できたばかりの新人クランだったね。クラウドというのは、クランが集まって出来上がる集団の事だよ。メリットは結成したクラン同士で念話が出来るようになる事。単体のクランでは難しい案件でも達成可能になる事。デメリットは・・・自由な時間が削られる事だな!」
話の後半部分で妙に感情が籠って聞こえたな。あれだ、自分の時間が他人に吸われるのを嫌がるタイプと見た。にしては、所帯持ちで妻子持ちと矛盾してる気もする。
「以前結成していた事があるんですか?」
結成経験があるのなら、是非ともその時の話を聞いておきたい。俺がその話をリカルドさんに振ってみると、
「あぁ・・・昔ね。あの時はちょっとした経験のつもりで一時加入した事があってね。1日の行動は制限され、探索で得た収入の一部はクラウドに納め管理される。その代わり、クラン単体では難しい強いモンスターにも挑めるようになるし何よりも生活は安定する。それだけ収入が増えるんだよ。でもうちのクランとは相性が良くなかった。今まで通り自由に探索できる方がいいという声が上がってね。先方からは引き止められたが、脱退の意思は最後まで変わらなかった。そして今に至っている訳だよ」
ほうほう、なるほど。その話を聞いた限りじゃうちのクランも相性は悪そうだ。メリットらしいものはそれこそ念話くらいしかないレベルで。
「で、先ほどミアンとニーナの話を聞いていて思ったんだが『それなら俺達に合うクラウドを作ればいいのでは?』となったわけだ。具体的には、都合のいい時だけ互いの力を借り合える限りなく制約の緩いクラウドって所だろうか」
あぁ、リカルドさんはただ面倒くさいのが嫌なだけの人じゃない。ちゃんと色々考えて行動できるタイプでもあるんだな。
「その、これから作るクラウドにうちのクランも参加して欲しいと言う事ですね?」
「そうなる。これから作るクラウドだから、今なら互いの話し合いで納得のいく形で結成出来る。クラウド結成に伴う細々とした手続きは言い出しっぺであるこちらが引き受けよう。どうかな?」
断る理由は特にないかな。有事の際だけ互いに協力して解決していきましょうというのも有難い。面倒そうな管理業務も向こう持ちというのは中々にポイント高いと俺は感じております。こっちの漏らしたくない情報に関しても一緒に条項として混ぜ込んでくれるだろう。規模こそ大きくないのだろうが、リカルドさんのクランは遺跡都市内の人達からの信用も厚いようだし後ろ盾としてしっかり機能してくれそうだ。
この内容ならクラウドを結成したとしても、行動の自由は確保されそう・・・俺は、ザっとクランメンバーの様子を確認してみる。
ふむ、反対な人は居ないな。一部分かって無さそうなのが居るけど問題は無いとみなす。
「こちらは反対な者も居ないようなのでその話、有難く――――」
「ちょっと待ったっ!」
はい、待ったが掛かりました~。待ったを掛けたのはガルドさん、ロイさん、シエルさんのお三方。異議有り!!3人とも今さっきまでグッタリしていたというのに、中々の再起動っぷりですね。
「そのクラウド結成の話、俺達も加えちゃくれねぇか?」
ロイさんがすかさず意見を述べて来る。俺としては寧ろ後ろ盾の面が更に強固になるから否やはないけれど。そう思ってリカルドさんの方を見てみたのだがこちらは意外や意外、あまり乗り気では無さそう。
「いや、お前達の所は既に各々でクラウドが存在してるじゃないか。そっちはどうすんだよ」
おお、それは確かに最もな事で。間違いなく有名どころであろうお三方がクラウドを結成していないなんて事は無いというわけだ。
「「「解体する」」」
「「いや、ダメだろうそれは」」
お三方が揃いもそろって同じ事を言ったが、俺でも分かるくらいにそれはイカンでしょう。思わず素で答えてしまった。しかもリカルドさんとハモるオマケつき。
「解体は冗談として、俺の方は後進が大分育って来てるからな。そろそろクラン代表を辞して、自由に動こうと思ったわけだ」
ガルドさん、もう隠居するのか。いやこの場合は定年退職みたいなもんか?
「スマン、悪ノリが過ぎたわ。俺の場合はそもそも代表代理なんだよ。流石にクラウドを解体なんてしたら親父に半殺しにされる。で、その親父が近々復帰するんで俺は晴れて自由の身だ。そのタイミングで俺自身のクランを立ち上げようってな」
へぇ、ロイさんって代表代理だったんだ。初めて会った時は代表と言っていたけど・・・あれか、クランが舐められないようにって奴ですかね。
「あら、冗談だったの?私は本気よ」
「「「「え?」」」」
シエルさんがここに来て爆弾発言を投下してきましたね!?どういう事かな?
「そもそもうちのクラウドって身内で枝分かれしたクランの集団なのよ。形ばかりで形骸化しちゃっているし丁度いい機会だわ」
シエルさんは良い口実が出来たと言って、とてもいい笑顔で仰っております。何か根底に色々と溜まってそうだから何も聞かない事にしよう。
お三方の言い分は分かった。結成するのに少々時間は掛かりそうだが、先ほども思った通り俺は無問題だ。リカルドさんの方も特に問題は無くなったようで、
「まぁ、後腐れが無いのなら俺は構わないが。なら、この5人で話を進めるとしようか。あ、ガルドが来るんなら一部管理を丸投げしても構わんよな?」
「丸投げは止めろ丸投げは。俺らが加わる分規模がデカくなるからな・・・まぁそこん所も踏まえた上で話し合いをしようじゃないか」
既にリカルドさんとガルドさんの間で面倒事の押し付け合いが始まっとる。精々俺の所に被害が拡大しないよう極力無言を通させて貰うとしよう。理想は俺とリカルドさんとの間で話してた内容そのままで通る事だが、さてさてどうなる事やら・・・。




