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Hollow Altar online  作者: 774のもち
第二章
16/28

03・異邦人

 アンゼスの祠の特徴は薄暗くジメジメした感じと毒沼だ。来る者を拒むそのエリアは多くのプレイヤーから嫌われ、二度と攻略したくないエリアナンバーワンに選ばれていた。しかし、アンゼスの霊廟は違った。


 まず、とても明るい点だ。


燦々と照り付ける日の光が白い建物に反射して非常に明るく、気温も初夏のような温かさだ。若干寒くもあったアンゼスの祠とはまるで正反対である。アンゼスの祠が影であるならばアンゼスの霊廟は光といったところか。


 次に、奇妙な点だ。


 照り付ける日差しの下には人っ子一人おらず、碁盤の目のようにきっちり整備された道には足跡どころかゴミ一つ落ちていない。アンゼスの祠も人がいないという点では同じだがあそこにはプレイヤーを襲う敵がいた。しかし、ここにはそれすらいない。


 また、人が手を加えた痕跡があるのに、生活感がまるでないのも特徴の一つだ。加えて、白い建物に入り口はおろか窓さえついていない有様。あまりにも不自然すぎることこの上ない。


 異国ギリシャのような白い街並みだが、よく見るとどれもまがい物であり、似ているのは本当に外観だけだ。


 まるで五月の昼下がりに、全く人気のない白い建物が並ぶ住宅地へと迷い込んだかのような奇妙な感覚に駆られると言った様子だ。


 しかし、決して居心地が悪いわけではなくむしろ良いほうだ。まるで拠点にいるかのような安心感がそこにはあった。


 三人もこれと同じ感覚を味わっていたのだろう、目の前に広がる光景に対して目をぱちくりとさせ、唖然としていた。当たり前だ。さっきまで薄暗くジメジメしていた場所を歩いていたのに突然明るくからっとした場所に現れたのだ。そう思っても仕方あるまい。


 「えっと、ここはどこだっけ?」


 ハルトがようやくひねり出した言葉でナオとキーンも反応を露わにした。


 「なんか、別の空間に迷い込んだって感じだな」


 キーンはそう感想を述べた。


 「なんだかエルさんの書斎のような感じがします。あそこもかなり異質な場所でしたよね」


 ナオは白い空間であったエルの書斎を思い出したようだ。


 「エルの書斎とはまた違った奇妙さだな。それよりもアンゼスの祠はもっとジメジメしてたよね。なんでこの場所だけこんなにからっとしてるんだ? 謎すぎる……」


 「普通のエリアならどこか似たような場所があるものですけど、ここはまるでそれが当てはまらないというか……」


 「うーん、分からんことが多すぎるな。とりあえずニュード、ニーラの師匠の名前だとカリムだっけか? そいつを探していろいろ聞こう。敵がいないんなら簡単に見つかりそうだしな」


 今回は攻略ではなく訪問だ。いちいちそんなことを推察していたら埒が明かなくなってしまう。ハルトとナオもキーンの言ったことに頷くと行動を開始した。




 アンゼスの霊廟の良い点は歩道が整備されているところにある。それが碁盤の目のようになっているものだから自分が今どこにいるのかとても把握しやすい。


 そのため探索がしやすく、三人の探索もはかどりを見せた。


 三人がアンゼスの霊廟を隅々まで見渡せる小高い丘に登ってみたところ、アンゼスの霊廟はアンゼスの祠の周りにある崖の上に位置していることが分かった。


 なるほど湿地帯とは別の場所に位置しているのならば、からっとした陽気も頷ける。おそらくアンゼスの祠はこの周辺の水分と悪いものが一挙に集まるポイントなのだろう。


 三人はさらに探索を進めた。しばらくすると一番北にある建物にたどり着いた。


 北にある建物は唯一やぐらのような高い造りをしており他の建物には見られなかった入り口と窓が付いていた。小高い丘で見た景色をもう一度確認したいと考えた三人はここに来たのだが、思いもよらぬことが起きた。


 「あれって人……だよな」


 ハルトが指さすその先には男性が地べたに胡坐をかいて瞑想をしていた。


 その人物は裂傷と思われる傷が何本も顔に残っている初老の男性だった。


 初老の男性は三人に気が付いたようでゆっくりと目を開けるとこういった。


 「エル様の使いの者か。ご苦労だった。このような場所に来てもらってなんだがもてなすことができない。まずはその非礼を詫びさせてくれ」


 初老の男性はそういうとゆっくりと頭を垂れた。そして、続けていった。


 「加えて、我が弟子ニーラの命を助けてもらったこと感謝する」


 彼は再び頭を垂れた。


 不思議な様子を醸し出したままハルトは男性に尋ねた。


 「あなたがニュードさんですか」


 「そう、私がニュードだ。しかし、ニュードとは昔の名。その名を使ってよいのはエル様以外誰もいない。だから、今はできればカリムと呼んでもらいたい」


 カリムはニュードという名に特別な意味を感じているらしく、エル以外の人物に呼ばれたくないとのこと。それだけエルとカリムの関係性が強いのだと窺える。


 それぞれの自己紹介の後にナオがカリムに尋ねた。


 「エルさんからカリムさんに会うよう言われてここまで来ましたけど、ここはなんだか異質な場所というか変わったところですよね。何か知ってることはありませんか」


 ナオはアンゼスの霊廟に来た時からこの場所について疑問を持っていた。だからその疑問を最初に解決したかったのだろう。


 「ここは霊廟、つまりは墓場だ。ここには人形の侵攻で追いつめられた人たちが眠る。ここへ来る途中に白い建物をいくつか見たと思うがあれは全て彼らの棺だ。棺の形が建物なのは彼らが人間として生きていた生活感を出すため自らそうしたもの。現に私の友人だった者もここに眠っている」


 「そう、ですか。ありがとうございます」


 棺と聞いてナオはこれ以上質問を投げかけることができなくなったようだった。


 カリムは続けた。


 「エル様はあなた方の訪問を非常に嬉しがっておられた。あのお方も私と同様に死から逃れてしまった者だからか、人との交わりを欲していたのかもしれない。さて、話を元に戻そうか。私があなた方に問いたいことはただ一つ。異邦人についてだ」


 「異邦人、ですか。そういえば検証ギルドのゼルオスさんがそんなこと言ってたような……」


 「そうか、その単語くらいしか知らないのか。それだと、今から話す内容が長くなってしまうがそれでもいいか?」


 「話す内容? エルからはただ会うようにとしか言われていないのですが」


 キーンは思ったことを口にした。確かにエルはニュードに会えとしか言っていない。何か話されるとは考えていなかったのだろう。


 「そうか、やはりエル様は伝え方が下手なままなのだな。エル様の会うは会って話をするという意味。あなた方もエル様の言葉に振り回されてしまったのだろう。エル様から聞いてはいたが、あなた方はこの世界のことを本当に何も知らないようだ。もしかしたら異邦人の意味すら理解していないと思われる。しかし、この場所で長い話をするのもなんだ。二階に私がこしらえた居間がある。そこへ案内しよう」


 カリムはそういうとすっと立ち上がり二階へ上る階段へと歩いて行った。三人もそれについていき二階に上がった。


 この建物は一本の柱が建物の中央を貫いており、その周りに階段が付属している形をしている。近い形で言うと京都にある五重の塔のような形だ。また、窓が解放されており遠くの景色がよく見えた。


 二階に案内された三人は三脚ある椅子に座った。どうやらカリムがここに来る三人のためにわざわざ作ったそうだ。


 カリムは三人が椅子に座ったのを確認した後に話し出した。


 「この世界における異邦人は嫌われ者だ。この世界に災厄をもたらしたからだ。そして、今もなおその災厄は多くの人々の命を奪い続けている。そして、この世界に再び異邦人が訪れた。今から約半年前だ。私は再び現れた異邦人、その中で特に動き回るであろう探索者を探すためここにいる」


 半年前。それはプレイヤーがゲームの世界に閉じ込められた時と一致する。そして、カリムの口からこぼれた探索者という言葉。三人の表情が一気に引き締まるのにそれ以上の理由はなかった。


 キーンはカリムに尋ねた。


 「何のために、異邦人を探しているのですか」


 カリムの言葉が本当ならばプレイヤーは異邦人にあたる。そして、異邦人は嫌われ者。下手をすれば敵対してしまう恐れもあり得る。キーンの問いは細心の注意を払った質問だった。


 カリムは答えた。


 「異邦人に、元居た場所へ帰ってもらうためだ」


武器種:大剣

名前:グレートソード


身の丈ほどある大剣。両手での使用がメインだが筋力次第では片手で扱えなくもない。

叩き切ることが基本の大剣だが、この武器は先端が尖っているため一応突くこともできる。

打撃、斬撃、刺突の三つが扱える風変わりな武器だが、捉えようによっては器用貧乏にもなり得る。どう扱うかは使い手次第だ。


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