出会い
アクセスしていただきありがとうございます。
駄文ではありますが、精いっぱい物語を作らせていただきますので、どうか応援よろしくお願いします。
毎週金曜日に更新予定
──そうだ、昔話をしよう。
これは俺が……薄尽 珠洲がまだ高校生だった時のお話。
幸せな日々が永遠ではないことを知りながら……
いや、知っていたからこそ誰よりも人生を謳歌していた頃のお話……
「……んぅ……もう朝か」
枕元の目覚まし時計の叫び声で目を覚ます。俺は目覚めはかなり良い方だ。
眠気が無いわけじゃないのだが、ただそれでも眠いとは思わない。この体質のお陰で俺は今まで1度も寝坊をしたことがない。
いや、体質という言い方は違うかな…持病のおかげで俺は時間を無駄にしなくて済んでいるのだから皮肉なものだ。
さて、モーニングルーティンは欠かせない。机の中の薬を飲み、お笑い番組で笑う。
朝のお笑い番組は俺にとって1日の気力をくれる最高のルーティンだ、ひとしきり笑ったところで朝食を食べにリビングへと向かった。
「あら珠洲、おはよう」
「……」
丁度朝食が完成したようで、食器を並べる母の薄尽 澄香と、ホワイトボードを取り出す父の薄尽 閑太郎。
「あぁ、母さんも父さんもおはよう」
ホワイトボードに記されたのはおはようの4文字。何故わざわざホワイトボードで会話を行っているのか?その原因は薄尽家の異常な特徴にある。
薄尽家の人間は代々、先天的に奇病を患っている。現代の医学化学では理解の及ばない症例の数々。父さんはその中でも消舌症と呼ばれる病を患っている。
まぁ、平たく言えば、父さんは人と口を開いて話すことができないのだ。だからこう言った日常会話でよく使う言葉は予めホワイトボードに記してあり、それを示すことで基本的な会話が行われているのだ。
父さんは人と会話するのが好きな性格なので、何か話したいことがあれば出来るだけこちらから話しかけて応答を待つ形式が普通になっていたりする。
手間に感じることもあるが、それ以上に父さんとの会話には価値があるし、楽しい。こんな病にかかっても諦めずに家族とのコミュニケーションを取ってくれる父さんは間違いなく俺の誇りだ。
「『薬は飲んだか?』もちろんだよ、これがないとまともに過ごせたもんじゃないからね。」
「本当に、2人ともいつも大変ねぇ……珠洲も、辛いことがあったら遠慮なく母さんに頼っていいんだからね?」
「わかってるわかってる、俺は身体的な病じゃないから頼る機会があまりないだけで、母さんが頼りない訳じゃないんだから」
「そう? ならいいんだけどね♪」
母さんは薄尽家の血筋では無いためこう言った奇病は発症していない。そのため、愛の力とやらで父さんの言いたいことが顔を見たらわかるらしい母さんは、いつも父さんと共に活動してはコミュニケーションの補助をしている。それだけで俺からしたらすごくありがたいのだ。
が、母さんはいつも俺の手伝いもしたい、なにか出来ないか?と聞いてくる。当然ながら俺も奇病を患っているのだが…
──俺の奇病であるロストエモーション症候群。これは「感情を出しにくい」というものなので、生活に強く影響がある訳でもなく、手伝って欲しいことが本当にないのだ。
「母さんが父さんの手助けをしてくれるお陰で俺は安心して日々を過ごしてる。間接的に俺の事も助けてくれてるんだよ」
そんなこんな談笑しながら朝ごはんを食べる。
俺の朝ごはんはいつものジャムトースト2枚。俺はこういった質素な朝ごはんが幸せだし、これでも問題なく活動もできるため、母さんの負担を少なくする意味でもいつもこれをお願いしている。
母親が作ってくれると言うだけで自分で作るより2倍くらい美味しく感じるのは気のせいだろうか?
「ごちそうさま、美味しかったよありがとうじゃあ俺準備してくるね」
「お皿はちゃんと片付けるのよー」
「わかってるよ〜」
シンクの中にお皿を漬けて朝の準備を済ませる。
「じゃあ、行ってきまーす」
「行ってらっしゃい、気をつけて行ってくるのよ〜!」
「……あの子、本当にいつも明るいわね」
「……えぇ、そうね、あの子には今のうちに人生を楽しんで欲しいわね〜」
「覚悟はしてるつもりだけど…奇跡を願わずには居られないわ……ねぇ、貴方?」
「──もしもこれが誰かが作り上げたお話だったとしたら、きっとハッピーエンドになるわよね?」
現在時刻は8:00キッカリ、学校までは10分ほどで到着するので、授業開始より20分程度早い到着となる。俺は学校が好きなのでいつも早めに行くのだが、中々この感性を理解しては貰えない。気持ちのいい朝の日差しを浴びながら、俺は通学路を1人歩いていくのだった。
正門前には20分前だと言うのに生徒指導の先生が立っている。
「おはよう薄尽!今日はいつもより少し早いな?」
「ネツセンおはよう、今日から高校3年だから楽しみでちょっといつもより早足で来ちゃったかも」
「おぉそうかそうか!先生は嬉しいぞ!学校を面倒くさがる生徒も多いからなぁ、お前みたいな生徒がいると先生達は元気が貰えるんだよ」
彼は生徒指導兼体育担当の山本先生。いつも熱血だから生徒からは親しみを込めて「ネツセン」と呼ばれている。どうやらいつも俺に会うために授業開始20分前になると1度わざわざ出てきてくれているらしい。
「確か1組だったよな?」
「うん、よく知ってるね」
「なに、お前は優等生だからなぁやっぱり目立ってる生徒の所在はみんな気になるだろ?それは先生達も同じなんだよ」
正直成績は上の下くらいなのだが、なぜか先生方……特にネツセンからは好印象を貰えている。素直に嬉しいものだ。ネツセンと軽く言葉をかわし、教室へと向かうことにした。
「おおっ、てっきり1番乗りかと思ってたよ」
教室で本を読んでいると、1人の男の子がドアを開けて入ってきた。この学校では1番の有名人だろう。
「あ……おはよう……薄尽くんだよね?」
「うん、薄尽珠洲。君の名前は?」
「九紫ラン、九紫さんでもランさんでも好きなように呼んでね」
「じゃあランで、ランって可愛い名前だね」
「……へ? あ、あぁ……よろしく……?」
私の名前は九紫 ラン。何の変哲もない普通の女子高生。彼とは初対面だが、一方的に存在を知っている。
彼が有名な理由は、その笑顔だ。
彼はいつでも楽しそうな、嬉しそうな表情をしている。おそらくこの学校の生徒で落ち込んだ顔や怒った顔を見た事がある人は1人もいないだろう。
だからこそ彼は教師や友人からすごく好かれており、優しくて人懐っこい性格も相まって常に人だかりの中心にいるような人物なわけなのだが……
「……」
「あはは、初対面だと緊張しちゃうよね〜」
「そ、そうだね……」
……私は彼が苦手だ。厳密には苦手と言うより怖い。
冷静に考えて、学校の誰もが笑顔しか見たことがない生徒なんているだろうか?彼に関する悪い噂やネガティブな話を私は1度たりとも耳にしたことがないのだ。
そのうえ、彼に告白した人は何人もいるが、みんな振られているにも関わらず必ず楽しそうに帰ってくるのだ。そんな彼を私は少し不気味に感じている。
そんなことを考えていると廊下は段々と騒がしくなっていた。
「じゃあねラン、また話そうね」
そう言って彼は自分の席に戻り、初対面のクラスメイトにも積極的に挨拶をしている。
「……なんなんだろ、この違和感」
少しずつ人の集まる彼の周りをぼんやり眺めながら、彼の笑顔に少しばかりの違和感と拭いきれない不安感を覚えるのだった。
患者番号 A015
薄尽 閑太郎
年齢:51歳
病名:消舌症
概要:人と口を開いて話すことができない。
「?????????????。」
「?????????????。」
備考:「?????????????。」
段階:ステージ5
完治確率:0%
患者番号 D003
薄尽 珠洲
年齢:17歳
病名:情忘症(ロストエモーション症候群)
概要:「?????????????。」
「?????????????。」
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備考:「?????????????。」
段階:ステージ4
完治確率:0%
患者番号 θ001
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病名:?????
概要:「?????????????。」
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備考:「?????????????。」
段階:?????
完治確率:0%




