説明しよう!
説明しよう!
”世界樹”とはその根によってこの世界を支える5本の巨大な魔法樹という魔法生物の事だ。
自分たちが生活しているこの大地は世界樹の上につもった土で出来ているーーとは聞いていたけれど自分がそれを身をもって体感したのはこの対抗戦の時だった。
もしかしなくても:腰かけていた木の根。
まさか本当に地面を掘った(?)ら物理的に木の根があるとは思わなかった。
あらゆる現象に対し過干渉をもたらすくせにあらゆる対象に不干渉を強いる世界の絶対的ルール。
魔法生物と言ったが現状意志等は確認されておらずその影響に関して特に法則性などはないものとされている。
ならば何故生物なのか。
答えは簡単。
世界樹は今も尚成長し続けているからだ。
自分が観測しているだけでもここ5年程で街2つ分程成長している世界樹もある。
・・・意志はないと言ったけれど、過去の観測記録を見てもここ数年の成長はあまりにも規格外で何かしらの意志かあるいは外部からの何かしらの干渉が(続きは黒く塗りつぶされておりこれ以上は読めない)
話を戻そう。
世界樹は全部で5本ありその根元にはそれぞれの世界樹を守護する精霊が住みついている。
東の世界樹【フレア】を守護する炎の精霊【サラマンダー】。
北の世界樹【アクア】を守護する水の精霊【ウンディーネ】。
南の世界樹【ガイア】を守護する地の精霊【ゲノーモス】。
西の世界樹【エア】を守護する風の精霊【シルフィード】。
――そして、中央の世界樹【マギア】。
【マギア】を守護する精霊は他の精霊達とは違い【隣人】どころか今まで一度も人間の前に姿を現した事がないらしく現在においては実は存在していないのではないかと言われている。
ただ、他の精霊に聞くといつも『いる』というニュアンスの答えがーー【サラマンダー】からも【ウンディーネ】からもーー返ってくるので実在そのものはしているらしい。
もみじいわく、【ゲノーモス】は中央の精霊を【最も神秘に近しいモノ】だと形容したらしい。
その真意は今の所わからないが、他の精霊が口をつむぐような話を【ゲノーモス】は少し踏み込んでもみじへと話した。
その事実こそが今一番特筆すべきだろう。
転じて、彼女の話をしよう。
【ゲノーモスの愛し仔】、十六夜 もみじ。
特別な精霊に特別に愛された子供。
もみじの特異性を語る前に、そろそろいい加減俺のーー俺達【精霊の隣人】について話しておこう。
【隣人】と【愛し仔】の最も大きな違いは時間ーー単純に、精霊の元で過ごした時間の長さが違う。
好奇心に勝てずにあくあに【隣人】になった時の事を聞いてみた事がある。
「【隣人】になった時・・・【ウンディーネ 】と初めて会った時って事よね・・・うん。勿論覚えているわ。アタシはあの日【ウンディーネ】に命を救ってもらったの」
厳しい冬が訪れる北の国では天気の変化も突然起こる。
晴れた日に親と共に出掛けていた少女は突然の吹雪に襲われ両親とはぐれてしまったーー悲しいが、よくある話だ。
北の国ではこの現象を「精霊がつれていく」と言うらしい。
事の真偽は不明だが両親とはぐれた少女ーーあくあは体温を奪う吹雪の中で【ウンディーネ】と出会った。
「【ウンディーネ】はアタシを【アクア】の根元へと連れていって一晩体を休める事を許してくれた。水で出来た体は冷たい筈なのに、【ウンディーネ】の体は温かった。きっとアタシの為に頑張ってくれたのね。翌朝になって雪が止んだ時に、【ウンディーネ】はアタシを家まで届けてくれた。「また会える?」って聞いたアタシに彼女は優しく微笑んで「いつでも一緒にいるわ」って言ってくれたの。うれしかったし、何よりも理屈とかそういうのを抜きにして本能的にすぐに判ったわ。アタシは【ウンディーネの隣人】になったんだって」
彼女の心の中にアタシがいるんだって!
そう興奮しきった様子で熱弁したあくあはその興奮冷めやまぬままにいつぞやの関のように延々と【ウンディーネ】の素晴らしさについて語っていたが・・・まぁ本筋には何の関係もないので全カットさせていただくとして、だ。
「精霊がつれていく」と言われる程にいままで多くの子供たちを救ってきた【ウンディーネ】はーーそこに何がしかの理由があったのかそれともただの気まぐれかは知らないがーー一晩共に過ごした少女を己の唯一と定めた。
あくあの存在を許容した。
【フレア】の根元で倒れていた自分を【サラマンダー】が否定しなかったように。
【サラマンダー】が、自分の為にその身の熱を抑えてくれていたように。
けれど、もみじと【ゲノーモス】はその比ではない。
正確な時間はーーこれは自分もそうだがーーもみじ自身にもわからないらしいが、少なくとももみじが物心がついた時には彼女はもう【ゲノーモス】と共にいた。
もみじは南の精霊に育てられた人間。
【ゲノーモスの愛し仔】とは文字通りの意味でもあるのだ。
【隣人】だなんて称号じゃ冷たすぎる。
もみじのーーもみじだけのもの。
【ゲノーモス】に特別に愛された子供。
それが、十六夜 もみじという魔法使いである。




