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59話 死線を越えた仲間と共に

「メンバーは15人だ。作ろうぜ、俺達の最高(クラン)を!」


 アザミの掛け声に他の5人が「おー!」と応える。

どうしてこのようなことになったのか。それは2週間前に巻き戻る。


******************************


「……っぷはぁ!」


「おい! アザミたちが帰ってきたぞ! 誰か先生を呼べ!」


「――いい。これ、を……」


「これ? この杖はまさか……」


「預かって、くれ……」


「分かった! おい、大丈夫――」


 ドサッとアザミの体が地面に崩れ落ちる。


「あ、あれは……」


 生徒の一人がクリムパニス大墳墓の入り口を指差す。

 そこには浮遊魔術によって残りの5人がフワフワと浮いていた。





「……と、いうわけで、お前はボロボロになって意識が朦朧としている中、瓦礫の下敷きになっていたアック、グリム、エイド、ダグラスを助け、シトラを抱きかかえてダンジョンを逆走してきたってことだな」


 病室。そのベッドの上に寝ているアザミにハイルが経緯を説明する。

 アザミは身に覚えも記憶もない話をどこか上の空で聞いていた。

 覚えているのはダンジョンをクリアしたこと。クリムパニスを倒したこと。そして青い蝶と精霊石。そのあとは思い出せない。


「――他の、みんなは、、」


「大丈夫だ。君と違って他は軽傷だったから、エイドさんの治癒で治した。今は、、授業中かな?」


「シトラは……」


「心配かい? さすがお兄ちゃんだね。って、当たり前、か。彼女も無事だよ。まあ、右腕が粉砕されたかのようにボロボロに骨折しているから、重傷だけどね。大丈夫、日常生活には戻れるし、後遺症も残らないよ」


 ハイルの言葉にホッと胸をなでおろす。

 もしも、クリムパニス戦の影響でシトラが二度と剣を握れなくなったら。もしも、右腕がもう治らないなんてことになったら。そんな未来を想像してアザミはブンブン! っと首を振る。ズキンッと頭に鈍い痛みが走る。


「イッテぇ!」


「あーあー。そんなに激しく動いたら傷が開くよ。せっかく拾った命なのに……」


 ハイルが言うには、かなり危なかったらしい。全身の骨がバキバキに折れ、頭蓋骨も陥没。内臓もぐちゃぐちゃだったそうだ。「恒久の魔眼に“魔力を用いた自己修復”っていうスキルがなければ危なかったかもな」と、アザミはぼんやりと窓の外を見る。騒がしい街がそこにはあった。


「完全回復の術式は『切り傷』、だとか『火傷』だとかには良いけど、君みたいに内部の怪我にはあまりおすすめできないんだよね。そこが戦場じゃない限り、やっぱり自然治癒が一番だ」


 そう言ってハイルが笑う。アザミは「はぁ」と息をついてハイルの方を向く。


「先生は、それを言いに来たんですか?」


「まさか。それだけじゃないよ。僕が学園長(オルテウス)から受けている指示は3つ。まず1つ目の経過報告は終わった、から次に移るよ」


 ハイルが胸ポケットから羽ペンを取り出し、軽く振る。ボワーッとした光の中に先端に赤い玉が付いた杖が浮かぶ。


「これは、、冥王の杖(プルーワンド)?」


「そうだ。お前たちが大墳墓から見つけ出した“お宝”だ。騎士団や一流の冒険者が何年かけても発見できなかった、な」


 ハイルが投影(キャスト)された杖をちょんっと触ると、細部が拡大される。


「検証の結果、この杖は本物だと認められた。よって、所有権は発見者であるお前らにあるわけだが……」


「分かっていますよ。『所有権を放棄しろ』。そう言いたいんでしょう?」


 アザミが吐き捨てるように言う。冥王の杖(プルーワンド)は精霊魔法の研究材料としても、武器としても有用だ。なんせ、先端の精霊石のおかげで魔力なしに炎魔法を使えるのだから。


「……話が早くて助かるよ」


「俺が拒否しても、しつこく要求してくるでしょ......」


「ハハ。それが仕事(頼まれていたこと)なんでね。もちろん、御礼はするよ。治療費も負担するし、報酬も出す」


「それは良かったです。それで? 先生。忘れてはいませんよね?」


 アザミの顔にようやく生気が戻る。ハイルは少し誤魔化すように「はて、何のことかな?」と目をそらす。


「――所有権」


「あー、分かった。分かったよ。約束したもんな。『冥王の杖(プルーワンド)を見つけたチームには学校生活での“特権”を与える』って。それで、何を願う。お前のチームの仲間たちは『アザミに委ねる』と言っていたぞ。随分信用されているんだな」


 ハイルの言葉に、アザミは少し考える。グリムが自分に委ねてくれたのは少し意外だったな。それでも、やっぱり欲しいものは決まっている。


「俺が望むのは……」


「望むのは? 学食の無料権? テスト免除?」


「――“クラン”を作りたい」


******************************


「――許可を出したのですか?」


「だってぇ、、ハイル先生がそう言うんだからさ。私達に否決はできないよ、アミちゃん」


 アミリーはバインダーを抱えたままため息をつく。


「1年生が作る“クラン”ですか。興味はありますが……」


「アミちゃん!? 『シルネストリテ(銀翼の雛鳥)』を抜ける、なんて言わないよね?」


「それはしませんが、、とりあえず今期の新入団員が0人になることを覚悟したほうが良いかもしれません」


「1年生がアザミ・ミラヴァードのクランに入る、か。これはクラン戦も面白くなってきそうだね」




「……それで、クランを新設する特権を得たのかい?」


「ああ。本来は3年生しか作れず、厳しい審査もあるらしいが、、今回は『教師の力(チート)』があったからな」


 そう言ってアザミがニヤリと笑う。


「んで? 今日俺達が集められたのはその“クラン”関係か?」


「ああ。グリム、エイド、アック、ダグラス。俺のクランに入ってくれないか?」


 場が静まる。4人が「どうする?」といった感じに顔を見合わせる。


「まあ、そうだな......。急に入ってくれなんて――」


「いいぜ」


「え?」


 グリムが立ち上がり、笑う。


「いいって言ったんだよ。ああ、入ってやんよ。てめぇのクランによ」


「いい、のか? 危険な目とか……」


「それは今更だろ? アザミ。それに、僕らは確信してるんだ。新人戦も、迷宮攻略試験も、君たち双子とチームを組んで、そしてどちらも勝利した。きっと、君たちといれば何だって出来る。危険? そんなもん、この学園に入った時点で覚悟はしていたさ」


「……私も、入るよ。アザミくん。私、試験ではあまり役に立てなくて、足をひっぱちゃったけど、そんな私でも誘ってくれるなら、やってみたい!」


「ぼ、僕も入る! 僕だって、やれば出来るんだ!」


「そのくせには試験でバテバテだったじゃねえかよぉ」


「みんな………」


 グリム、エイド、アック、ダグラス。4人がアザミに拳を突き出す。


「よろしくな。クランリーダー」


「――ああ。こちらこそ」


 ガツンッ! と骨と骨がぶつかり、アザミの拳が衝撃でジーンとしびれる。

 でも、


「ハハッ」


 ずっと欲しかった。こんな仲間が。

 一緒に戦って、一緒に笑って、一緒に泣いてくれる。そんな仲間が。


「――そういえば、何人ぐらいにする予定なんだ? フリー募集とかはしないんだろ?」


「ああ。こっちから勧誘する。そうだな、、今の所考えているのは15人だ」


「15人、か。良いんじゃないか?」


「ああ、そうだな。じゃあ、早速勧誘でも行ってみっか?」


「行こう。そして、作ろう。俺達の最高(クラン)を」


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[一言] あんま主人公強くないのね
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