59話 死線を越えた仲間と共に
「メンバーは15人だ。作ろうぜ、俺達の最高を!」
アザミの掛け声に他の5人が「おー!」と応える。
どうしてこのようなことになったのか。それは2週間前に巻き戻る。
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「……っぷはぁ!」
「おい! アザミたちが帰ってきたぞ! 誰か先生を呼べ!」
「――いい。これ、を……」
「これ? この杖はまさか……」
「預かって、くれ……」
「分かった! おい、大丈夫――」
ドサッとアザミの体が地面に崩れ落ちる。
「あ、あれは……」
生徒の一人がクリムパニス大墳墓の入り口を指差す。
そこには浮遊魔術によって残りの5人がフワフワと浮いていた。
「……と、いうわけで、お前はボロボロになって意識が朦朧としている中、瓦礫の下敷きになっていたアック、グリム、エイド、ダグラスを助け、シトラを抱きかかえてダンジョンを逆走してきたってことだな」
病室。そのベッドの上に寝ているアザミにハイルが経緯を説明する。
アザミは身に覚えも記憶もない話をどこか上の空で聞いていた。
覚えているのはダンジョンをクリアしたこと。クリムパニスを倒したこと。そして青い蝶と精霊石。そのあとは思い出せない。
「――他の、みんなは、、」
「大丈夫だ。君と違って他は軽傷だったから、エイドさんの治癒で治した。今は、、授業中かな?」
「シトラは……」
「心配かい? さすがお兄ちゃんだね。って、当たり前、か。彼女も無事だよ。まあ、右腕が粉砕されたかのようにボロボロに骨折しているから、重傷だけどね。大丈夫、日常生活には戻れるし、後遺症も残らないよ」
ハイルの言葉にホッと胸をなでおろす。
もしも、クリムパニス戦の影響でシトラが二度と剣を握れなくなったら。もしも、右腕がもう治らないなんてことになったら。そんな未来を想像してアザミはブンブン! っと首を振る。ズキンッと頭に鈍い痛みが走る。
「イッテぇ!」
「あーあー。そんなに激しく動いたら傷が開くよ。せっかく拾った命なのに……」
ハイルが言うには、かなり危なかったらしい。全身の骨がバキバキに折れ、頭蓋骨も陥没。内臓もぐちゃぐちゃだったそうだ。「恒久の魔眼に“魔力を用いた自己修復”っていうスキルがなければ危なかったかもな」と、アザミはぼんやりと窓の外を見る。騒がしい街がそこにはあった。
「完全回復の術式は『切り傷』、だとか『火傷』だとかには良いけど、君みたいに内部の怪我にはあまりおすすめできないんだよね。そこが戦場じゃない限り、やっぱり自然治癒が一番だ」
そう言ってハイルが笑う。アザミは「はぁ」と息をついてハイルの方を向く。
「先生は、それを言いに来たんですか?」
「まさか。それだけじゃないよ。僕が学園長から受けている指示は3つ。まず1つ目の経過報告は終わった、から次に移るよ」
ハイルが胸ポケットから羽ペンを取り出し、軽く振る。ボワーッとした光の中に先端に赤い玉が付いた杖が浮かぶ。
「これは、、冥王の杖?」
「そうだ。お前たちが大墳墓から見つけ出した“お宝”だ。騎士団や一流の冒険者が何年かけても発見できなかった、な」
ハイルが投影された杖をちょんっと触ると、細部が拡大される。
「検証の結果、この杖は本物だと認められた。よって、所有権は発見者であるお前らにあるわけだが……」
「分かっていますよ。『所有権を放棄しろ』。そう言いたいんでしょう?」
アザミが吐き捨てるように言う。冥王の杖は精霊魔法の研究材料としても、武器としても有用だ。なんせ、先端の精霊石のおかげで魔力なしに炎魔法を使えるのだから。
「……話が早くて助かるよ」
「俺が拒否しても、しつこく要求してくるでしょ......」
「ハハ。それが仕事なんでね。もちろん、御礼はするよ。治療費も負担するし、報酬も出す」
「それは良かったです。それで? 先生。忘れてはいませんよね?」
アザミの顔にようやく生気が戻る。ハイルは少し誤魔化すように「はて、何のことかな?」と目をそらす。
「――所有権」
「あー、分かった。分かったよ。約束したもんな。『冥王の杖を見つけたチームには学校生活での“特権”を与える』って。それで、何を願う。お前のチームの仲間たちは『アザミに委ねる』と言っていたぞ。随分信用されているんだな」
ハイルの言葉に、アザミは少し考える。グリムが自分に委ねてくれたのは少し意外だったな。それでも、やっぱり欲しいものは決まっている。
「俺が望むのは……」
「望むのは? 学食の無料権? テスト免除?」
「――“クラン”を作りたい」
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「――許可を出したのですか?」
「だってぇ、、ハイル先生がそう言うんだからさ。私達に否決はできないよ、アミちゃん」
アミリーはバインダーを抱えたままため息をつく。
「1年生が作る“クラン”ですか。興味はありますが……」
「アミちゃん!? 『シルネストリテ』を抜ける、なんて言わないよね?」
「それはしませんが、、とりあえず今期の新入団員が0人になることを覚悟したほうが良いかもしれません」
「1年生がアザミ・ミラヴァードのクランに入る、か。これはクラン戦も面白くなってきそうだね」
「……それで、クランを新設する特権を得たのかい?」
「ああ。本来は3年生しか作れず、厳しい審査もあるらしいが、、今回は『教師の力』があったからな」
そう言ってアザミがニヤリと笑う。
「んで? 今日俺達が集められたのはその“クラン”関係か?」
「ああ。グリム、エイド、アック、ダグラス。俺のクランに入ってくれないか?」
場が静まる。4人が「どうする?」といった感じに顔を見合わせる。
「まあ、そうだな......。急に入ってくれなんて――」
「いいぜ」
「え?」
グリムが立ち上がり、笑う。
「いいって言ったんだよ。ああ、入ってやんよ。てめぇのクランによ」
「いい、のか? 危険な目とか……」
「それは今更だろ? アザミ。それに、僕らは確信してるんだ。新人戦も、迷宮攻略試験も、君たち双子とチームを組んで、そしてどちらも勝利した。きっと、君たちといれば何だって出来る。危険? そんなもん、この学園に入った時点で覚悟はしていたさ」
「……私も、入るよ。アザミくん。私、試験ではあまり役に立てなくて、足をひっぱちゃったけど、そんな私でも誘ってくれるなら、やってみたい!」
「ぼ、僕も入る! 僕だって、やれば出来るんだ!」
「そのくせには試験でバテバテだったじゃねえかよぉ」
「みんな………」
グリム、エイド、アック、ダグラス。4人がアザミに拳を突き出す。
「よろしくな。クランリーダー」
「――ああ。こちらこそ」
ガツンッ! と骨と骨がぶつかり、アザミの拳が衝撃でジーンとしびれる。
でも、
「ハハッ」
ずっと欲しかった。こんな仲間が。
一緒に戦って、一緒に笑って、一緒に泣いてくれる。そんな仲間が。
「――そういえば、何人ぐらいにする予定なんだ? フリー募集とかはしないんだろ?」
「ああ。こっちから勧誘する。そうだな、、今の所考えているのは15人だ」
「15人、か。良いんじゃないか?」
「ああ、そうだな。じゃあ、早速勧誘でも行ってみっか?」
「行こう。そして、作ろう。俺達の最高を」
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