35話 シトラズハッピーバースデー
2章「迷宮攻略編」
「……来てくれたんだ」
ある日の放課後、アザミはシャーロットに呼び出されて屋上に繋がる階段へと来ていた。
聖剣魔術学園では屋上への立ち入りが禁止されているため、そこに繋がる階段は秘密の話をしたり、定番の告白スポットになっている。
「まあ、呼ばれたからな。で、なんだよ。大事な話って」
アザミが上着の内ポケットから手紙を取り出す。
そこには「大事な話があるので 今日の放課後 屋上前階段で待っています シャーロット」と書かれている。
「あ、あの……明後日って、なにか用事あるかな?」
夕日に照らされ、シャーロットの頬が赤く染まる。
「明後日、、学校終わりなら何もないぞ。それがどうかしたのか?」
「明後日ね、良ければなんだけど……」
目をつぶり、モジモジと手をいじるシャーロット。
その仕草にアザミが思わずゴクリとつばを飲み込む。
シャーロットの薄紅色の唇がすっと開く。
「――明後日はシトっちの誕生日なんだけどなにかプレゼントあげるの?」
「……はぁ?」
想定外の答えに素っ頓狂な声を上げ、目を丸くするアザミ。
それを見てシャーロットがニヤニヤと笑みを浮かべる。
「どうだった? 告白されるとか、ちょっと期待しちゃった?」
「いや、まったく。……流石にあいつの誕生日だってのは予想していなかったがな」
どう、どう? と見上げて近寄ってくるシャーロットの顔を押し返しながらアザミがそっけなく返す。
「ちぇっ……つまんないの、、」
「シャーロットがそんな乙女チックなキャラだとは思わなかったぞ」
「ひ、ひっど〜い!! それは失礼だよ? アザミくん」
「――悪い」
しばしの沈黙が流れる。少し照れくさそうに頭を掻き、階段に腰を下ろす。
「……お前も知ってんだろ? 俺の正体」
「ええ、もちろんよ。魔王シスル。私も300年前、騎士団に所属していたもの。シトっちとは支部が違ったから会ったことはなかったんだけどね。それにしてもあなた達って300年前から全く顔が変わらないのね……」
そう言ってシャーロットもアザミの隣に腰掛ける。フワッとバラの香りが広がる。
アザミはシャーロットとの距離を少し開け、口を開く。
「……どう思う?」
「どうって、、あなたのこと? そうね・・・・・・」
シャーロットが「うーん」と首を傾げて考える。
「……いいんじゃない? あ、人として、だからね? 恋愛対象としてとかじゃないからね!? 先に断っておくわ。ごめんなさい」
慌てて否定し頭を下げるシャーロット。
勝手にフラれたアザミが「はぁ」とため息を付き、
「別に俺も恋愛対象としてみていないから安心しろ。で、俺が魔王だと知って、お前はどう思うんだ?」
じっとシャーロットの方を見つめる。
「だからいいんじゃない? って。もしあなたが人界を滅ぼすつもりならシトっちは今ごろ生きていないだろうし。あの子とあなたの関係を見ていたら、あなたにそんな気がないことぐらい分かるわ」
そう言ってシャーロットは優しく微笑む。
「そう言ってくれると助かる。俺とシトラは人界の居場所を守るために共闘してるんだ」
「なるほど、ね。それなら私も協力してあげるわ。シトっちの友人としてね」
シャーロットが「任せといて!」とピースサインを作る。
それを見てふと思い出したようにアザミが口を開く。
「そういえばさっき、『明後日はシトラの誕生日』とか言ってなかったか?」
「そうよ? 知らなかったの?」
「知るわけ無いだろ。俺達双子の誕生日は冬で、今は春だ。300年前の誕生日なんて祝ったこともない」
「……まあ、あの子もそんな事を自分から言うタイプじゃないわね」
「あれ? 待てよ……あいつって確か、自分の名前とか出身とか、全く知らないんじゃなかったか? どうして誕生日なんて――」
「簡単よ。私とシトっちが初めて出会った日を誕生日にしたの。5月17日よ」
「へぇ、、てかあいつって何歳なんだ? 今は同い年だが、300年前は……」
「ちょっと、女の子に歳を聞くのは失礼よ!」
『もう』っと頬を膨らませ、シャーロットがプンプンと怒る。
「あー、、そんなもんなのか? 悪いな、、」
「冗談よ。兄妹なんだからいいんじゃないの? で、質問の答えだけど、シトっちが聖騎士になったのが18歳。それであなたと戦ったのが5年後だから、、23歳ね。あ、今は転生してるからもちろん次で16よ。決して累積して39歳になるわけじゃないわよ!」
「そんな計算に行き着くわけ無いだろ」とアザミがため息をつく。
「へえ、そうだったのか。もう少し下だと思っていたんだがな」
「そういうあなたはいくつなのよ」
遠くを見つめ何かを考えている様子のアザミに今度はシャーロットの方から尋ねる。
「俺? 俺は25だ。2つ年上だな」
「え……えぇぇぇええ!? あんた、年上だったの? 同い年だと思っていたわよ」
驚いた表情でシャーロットが話す。アザミはそうか? と首を傾げる。
「あ! で、誕生日――」
「おっと、そうだったわね。つい話が逸れてしまったわ。それで、明後日がシトっちの誕生日なわけだけど、あなたはなにかあげるの? あの子、私以外の人からプレゼントを貰ったことは無いはずよ」
「そう言われてもな……。あいつが喜ぶプレゼントなんて分からんのだが」
「でしょうね。はぁ、全くこれだから男は……」
やれやれと言いたげな顔をするシャーロット。
「でも、明日は学校休みでしょ。何か見に行ってみたら? プレゼントなんて、あなたから貰えたら何でも喜ぶわよ」
「いや、変なものをあげるわけにはいかない。こっちにもプライドがあるんだ」
そう言ってアザミがシャーロットの目を真っ直ぐに見つめる。「な、何よ……」と目をそらすシャーロット。アザミがその手を取り、
「ということで明日、買い物に付き合ってくれよ」
と真顔で告げる。シャーロットの思考が停止する。
「・・・・・・は?」
「だから、俺と一緒にプレゼントを買いに行こう。シャーロットのアドバイスがあればきっと、あいつの喜ぶプレゼントが買える!!」
「い、嫌よ! 第一、私は王女よ!? もしあなたと二人っきりで買い物してるところなんてバレたら、セントニア中のいいゴシップネタになっちゃうじゃない!」
真っ赤になってブンブンと首を振るシャーロット。
それを見たアザミが「なるほど」と手を打つ。
...........
「そうか、二人っきりじゃなければいいんだな」
「ええ、そうよ・・・・・・え?――」
アザミが立ち上がり、「じゃあな」と言って階段を降りていく。
「待って!」と声をかけるも、すでにアザミの姿は無かった。
「ま、まさか……」
この小説を見つけてくださったあなたに感謝します。
是非コメントや評価のほうもよろしくおねがいします。励みになります!
「続きが読みたい」と思ってくださった方はブックマークもくださると本当に嬉しいです!!




