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三十八話

 バタバタと先刻までの傲慢を帯びる優雅さを吐き捨てて、必死に藻掻くバンパイアを山頂の方角に放り投げる。首を絞めた程度では死なないし、地位的有利よりも民草の安全を優先である。態々帝都から離れたのに、戻られては溜まったものではない。


 しかし、妙だな。首を掴んだ瞬間から相手の魔力抵抗を無視して解析して得た結果と、技術力から発せられる威圧感。この二つが釣り合わない。


 知能有る魔物であるバンパイアならば、自己鍛錬を積んでいるモノが多いのだが。事実、武芸者を志していたドリアードが『(ウチ)』の隊にいる。暗殺者に転向してるけどね。植物を由来とする魔物だから、毒塗りの剣使いである。


 さて、この戦闘は遅延すべきか、速攻とするべきか。現在進行形で帝都を囲い城壁を攻撃している魔物共は恐らく、異常を察知した騎士爵達によって挟撃されるだろう。そして奴らは壊滅する。


 ゲホゲホと咳き込みながら、後方に後退するバンパイアを眺めつつ、思考を巡らせる。心配しなくとも、半径五百メートルで球形の結界を貼ってある。逃す気は無い。


 索敵情報を片っ端から解析にかけていき、持ち得る知識を持って可能性の行動を脳内に配していく。現在の帝都に在留している戦力の中で出撃可能戦力で打開不可能な力を持つ魔物はいないと。


 私が殲滅するのも、若干の問題があるのよな。一応、私が聖者として、任されたのはこの大陸の安寧の意地だがら介入はできるんだけどなぁ。聖者になったばかりだから、貴族としての帝都防衛の役を優先する訳にもいかない。


 ………片づけて、傍観に徹するかな。後は、今回の奴らの黒幕を探し出すかな。


「貴様ァ!ココデ、葬ってクレル!!」


 放置に痺れを切らしたのか、バンパイアが血で出来たと思われる赤黒い剣を振りかぶり、此方に突進してきた。


 芸のない、唯の突き。やはり、コレも捨て駒か。恐らくだが、元の身元はそんじょそこらの現状に不満を持つ平民であろう。


 果てさて、この日のよく当たるイスタール地方にバンパイアを引き込んだのは誰なのかね。明確な弱点故に、克服は至難を極めているのだ。バンパイア本人も乗り気では無かった筈。余程の報酬か、個人の恨み辛みだろう。


 私に、イスタール帝国がバンパイアに喧嘩を売った要因に覚えは無いが、何らかの政策が裏目に出たのかもしれない。


 どっかの馬鹿か、薄汚い鼠共か、単なる魔物の進行か…………それとも、協会内部犯か。


 会場では、外国の使者含め貴族達が揃いも揃って拘束状態だった。素人の平民に対してだ。そのおかげで、彼らが連れ寄った護衛は肉壁同然だったのだが。


 まぁ、奴らは確実に当日の護衛配置を知っていたのだろう。人の口に戸は立てられぬと良く言うし、漏らした輩は半殺し位で手を打とう。


 バンパイアの下半身を〈ウィンドボム〉で消し飛ばしながら、そんな事を思った。

 

スランブ感がね……去年の暮れぐらいから否めなくなってきたね……一回、設定を見直す時間を作っときます。

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