↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

冬が去り終わる ー耳に残る言葉はただ一つー side:Woman



冬が去り終わる。


寂しくて一人で居たくないと


そう涙なく泣き叫ぶ子供のような季節。


どこか、坊や似ているようなそんな季節。









十二月に入ってしばらく、


坊やの衝撃的な質問から、


仕事にカッコつけて、


一切、お見舞いにいってなかったから


もとい、行きづらかったから


ほぼ一月ぶりに、お見舞いにいった。


一緒に暮らしていた頃、


欲しいと言っていたパソコンを片手にだ。


仕事で使っていて、今は使っていないのを、


あたしが自分で、ラッピングした。


『うわ、すんごい、ラッピング。


 ・・・・・・え、パソコン、貰っていいの?』


最初は、うだうだ言っていたけど、


就職してから、返せば良いって言ったら、


嬉しそうに、パソコンを抱いていた。


それは、年相応というよりは、


少し、幼い感じで、微笑ましかった。


それから、また、週に何回か、お見舞いにいくようになった。


仕事で、心がささくれだっても、


航に会うだけでも、


すーっと、癒されて言った。


大好きな時間だった。


とてもとても、大切な時間だった。













お屠蘇気分も、ようやく抜け始めた頃。


そんな頃に、七海から、連絡がきた。


航がICUに入った。と言われた。


その電話を受けた時、


クラッキングをしていた。


思わず、警備プログラムに引っかかりそうになった。


でも、超特急で、仕事を終わらせ、次の日、病院に言った。


本当は、仕事が終わってすぐ行きたかったけど、


家族でもないのに、夜中に行っても追い返されるだけだ。


・・・・・・・その日ほど、時間が過ぎるのが遅く感じた日は無かった。


航は、酸素マスクは付けていたけど、それなりに元気そうだった。


『へへへ、ライナさんが、心配してくれるなら、倒れるのも悪くないかも。』


そんなことを言うぐらいに、調子は良さそうだった。


少なくとも、その時は。










でも、そのあと、普通病棟よりも、ICUに居る時間が


段々、長くなっていった。


『うん、いいね。


 何時もは、病室からだけど、今年は木の下で見たいなぁ。』


『あ、そうだね。


 京都に行きたいな、それか温泉。』


たぶん、私は笑顔では居なかっただろう。


だけど、励まし続けた。


信じたくなかった。


また、ぬるま湯みたいだけど心地いい日常が戻るって思ったから。


大爺からの情報で、それも崩れたけど。


梅が咲く頃には、もう航は、ベッドから身を起こすことも出来なくなっていた。


『ごめんね、ライナさん。』


そう言っていた。


約束なんかどうでも良い。


生きてくれ。


ただ、生きてくれればいいんだよ。









それから、十日もしないうちに、


最後になった、発作が来た。


ちょうど、私が、お見舞いに来ているときだった。


ナースコールを押そうとした私の腕を


信じられない力で、航は引いた。


そして、一言。


『礼凪さんが一番大好きだよ。愛してる。』


息が止まったかと思った。


そして、航は二度と目を覚まさなかった。


その後はよく覚えてない。


気付いたら、大爺がいた。


航の葬式が終わった後、倒れたといわれた。


一週間、眠り続けてた。って。


その時の夢に、航が、出て来たような気がする。


『僕ね、ライナさんに出会えて幸せだったよ。』


『ライナさんには、泣き顔よりも、笑い顔のほうが、似合うと思うんだ。』


『だから、笑ってライナさん。』


『笑ってて欲しいな、ライナさん。』


『ごめんね、約束果たせなくて。』


そんなことを言われた気がした。


でもね、航。


私に、笑うことの大切さを想い出させてくれたお前が


お前が、居ないのに、どうやって笑えば良い?


誰の為に、笑えば良いんだ。




それから、私は、元の『鮮血のライナ』と呼ばれる女に戻っていった。


航の死を忘れたかったのかもしれない。


そうじゃないのかもしれない。


だけど、仕事にのめり込んだのは事実だった





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。