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竪琴宇宙のサクシード  作者: MAD-WMR
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1-2 人工知能との対話

どうせこのままここに居ても採掘作業は出来ない。

さっさと採掘機についての話は終わらせておきたい。


「採掘機の情報を見せたいから宇宙船まで戻る。

 情報を渡すにはどうすれば良い?」


「宇宙船というのは小惑星表面にある船でしょうか?」


「そうだ。探査船と比べれば小さいだろうけどな。」


「それでは同行させて頂いて直接確認してもよろしいでしょうか。

 未知の情報が得られるのは久しぶりなのです。」


一緒に来るのはまあ構わないか。

AIだし機械だし多分船に入れても乗っ取るとかそんな事はないだろう。

今の所はAI、機械だし人間を殺したりするのは無いと思う。

星系じゃこういう時には警戒した方がいいだろうから船には入れないな。


「わかった。ついて来てくれ。」


宇宙服の操作パネルから各機械の稼働予定の中止と撤収を指示。

これで自動的に宇宙船まで戻るからそちらで回収して撤収だ。

その作業を終わらせてから採掘機についての事を片付けよう。


歩き出すと機械人形セリナが宇宙空間を静かに飛んで採掘穴へと着地した。

宇宙空間での静止は少し不思議に思っていたのだが細かく姿勢制御をしていたんだろう。

宇宙服で宇宙空間を移動するのと同じようなものだと思う。

特に噴射炎みたいなものは見えなかったし静かだから気体とかを使っているんだろう。

全身が機械だから上手く姿勢制御しているだけかもっと良い技術なのかもな。

宇宙空間というか無重力状態で静止するのはかなり難しい。

相当な技術が使われているんだろうな。


「あれは良いのか?」


宇宙空間に浮かんだままの銀色の円筒形、別にくっついていたんじゃないんだな。

ポッドのように見えるし継ぎ目があるから開閉か展開か出来るのだろう。

各所に小型の噴射穴、おそらく姿勢制御か軌道制御用。

現在の下部にも一部しか見えないが大型の噴射穴があるのは加速用かな。

宇宙での移動が出来るようになっているみたいだしひょっとしたらこれがツキヨミかもしれない。

視線指示でヘルメットの望遠を起動させて上から下まで記録をしながらの感想。


「必要であれば後で回収します。」


こんな所に放置しても他には誰もいないし問題はないのか。

移動に使うのがあっていれば今動かすのは短距離過ぎて無駄だろうな。

押して動かすのも出来るけれどそれなら放置して後から歩いた方が良い。

こちらが採掘穴を歩き出すと数歩後ろで機械人形セリナも歩き出した。


宇宙船までは歩いても数分。

ただ少し歩いてこのまま沈黙しておくのもどうなのかと考える。

じいちゃんがいた頃はこういう時は仕事の事とか話していたな。

ツキヨミについては話せない事も多いみたいでAIの時より詳しい説明は無かった。

何処から来たかとかも話せないのかもしれない。

それを聞いて話せません。で終わると次の話題に困る。

こちらの仕事とかの事を話しても向こうが聞くだけになるだろう。

AI関連なら聞いても大丈夫そうか。

さっきの解説はあったがほとんど理解できていないからな。

そういえば人造人間でもあるとか言っていたな。

機械なのは見ているから確かだと思うし作られたというからには人では無いよな。

生物なのか?機械なのか?

もしかしたら人を機械化している?それなら人間なのか?

その辺りなら機械人形、セリナと会話になるだろうか。


「なあ、セリナは機械なのか?人間なのか?」


名前を意識しないと呼べないのは対人関係としてやはり問題かもしれない。


「当個体であれば機械です。

 生体部品も多く使用していますが人工的に作られた物です。

 これは長期間の航行には人間よりも機械の方が適している為です。」


確かに病気をしたり代謝のある生物よりパーツ交換で直る機械の方が確かに長期間動ける。

人間だと食料も必要で船は大型化、大型になると加速にも大きなエネルギーが必要になる。

完全に機械化した無人宇宙船での深宇宙探査は正しい方法かもな。

機械だと言うのならもうひとつ気になった事。


「セリナに感情はあるのか?」


「感情は模倣しておりますが完全に得ているとは言えません。

 おそらく理解は出来ていると思いますが完全に再現出来ているかは曖昧です。

 感情というのは思考などで制御されるものではなく自然にそうなるものだと考えています。

 まだ自然に発生しているとは言えません。

 感情も人間のように自然な状態で得るというのもAIセリナが目指す目的の一つです。

 模倣ですが感情がある、ないで言うのであればあると言って良いでしょう。」


自然とそうなるのが感情というのは間違いないと思う。

怒るべきだからと考えて怒るというのは怒ってはいるがちょっと違うだろうな。

そういうのじゃなくて考えなくてもそうなっているものなんだろうな。

こうやって感情がどういうものかなんて考えた事はなかったな。

学者とか研究者だと色々考えたりするんだろうな。


模倣ではあるが感情のある機械、人間みたいなAIで身体は機械。

それは人間か機械か?

機械人形セリナは機械と言っているから機械なんだろうけどな。

考えるには難しいしなんだか深く色々思考しそうだから今はやめておく。

ふと気が付いた、思い出した事があった。


「そういえば最初にツキヨミの他にも名乗っていたよな。

 あれはなんなんだ?」


「名乗ったと言うのは自立稼働図書館セリナの事でしょうか?」


「そう、それだ。セリナがAIの名前ならトショカンというのはなんだ?」


聞き慣れない言葉、用語を言っていたと覚えていた。


「図書館とは本来ならば本、書籍などを集めそれを管理したり提供したりする施設です。

 時代が進み書籍は減少しデータとして情報提供する時代が訪れました。

 それ以降は図書館も減少しその名称も使用されなくなってしまいました。

 そういった施設、図書館の管理AIを行っておりました。

 開発者の意向で管理だけでなく情報の集積と積極的な情報収集を行う事になりました。

 その結果、図書館施設が存在しなくても当個体だけで図書館と言える情報、機能を有します。

 ツキヨミとしての個体を得て自由に行動が可能となって以降、自立稼働図書館を名乗っています。

 様々な知識、情報の収集、それらを提供する施設とご理解ください。

 ただ現在の所残念ながら図書館はご利用頂けません。」


情報提供施設というなら情報を得る為の場所、データターミナルか。

端末は都市や施設に設置されていて必要な情報はそこで得られる。

有料、無料の情報がありデータとして得て手持ちの端末にコピーすればいい。

そのデータターミナル端末の自立移動版と考えて良いだろう。

情報を集めてもいるならデータターミナル本体か。

データターミナルも端末じゃなくて情報を集積しているの施設はどこかにあるはずだよな。

トショカンとしての機能を利用出来れば情報は得られるのだろうか。


「利用出来ないのはなぜだ?」


「周辺情報が不足している為です。

 技術レベルや文化、生活環境に影響を及ぼさない様に制限されています。

 周辺環境にとって有している知識がすでに古い物なのか周辺に大きな影響を与えるのか。

 それが判断出来る情報がなく利用が制限されており非常に残念です。

 図書館としての役割は長期間利用されていないのです。」


気になって振り返ってみたら残念そうとか悲しげではなくて普通に微笑んでいた。


「結局この辺りの情報が無いから何も出来ないと言う事なんだよな。」


「ツキヨミとしての制限があり情報開示にはいくつかの条件があります。

 機密漏洩や情報漏洩を防ぐためですのでご理解ください。

 所属先への連絡が出来ており情報を得られればもっとスムーズな対応が可能でした。

 まだ連絡が出来ておりませんのでご面倒をおかけするのはご容赦ください。

 もしさきほどの作業機械についての補填は必要無くこの場を離脱されるのであれば構いません。 

 ただ出来れば偶然の出会いですが新たな知識を直接得られる機会です。

 図書館の機能として情報収集は大事です。

 そこで提案があります。

 提供可能な情報があれば提供して頂けないでしょうか。

 代価が必要であれば出来る範囲で対応します。」


静かに語っていたが後半は少し笑顔になっていた。

情報を得る事が大事なんだろう。

笑顔という事は情報を得るという事が好きなのか。

その笑顔もAIとして機械的に作って表現しているのなら人間に対する反応なんだろう。

でも普通に人間が好きな事や物について話している時の表情にも見える。

色々考え過ぎだな。

機械である事は間違いない。宇宙でもこうやって宇宙服もなく動いている。

もっと過酷な環境でも動けるのかもしれないしな。

AI、人工知能がどこまでのものかは判らない。

どんなものかも細かくは知らない。これからは色々考えない。

気になる事は聞ける時に聞く。

こうして話をしている時は普通に人間と同じようにする。

反応が機械的なものか人間の思考を模倣したものかとかは気にしない。


とりあえず情報を提供して色々と出来ないと言われている事が可能になるのはありがたい。

何が出来るのかどんな情報があるのかは判らないから正確に判断は出来ないけどな。


「情報提供は構わない。

 さっきも言っていたが対価として出来る範囲というのはどういう事だ?」


「まず当個体を労働力としての提供、人間と同様の肉体労働は可能です。

 AIとして行える仕事や作業があればそれも可能です。

 特に宇宙航行については優れた能力を発揮出来ると考えます。

 通貨や経済についても不明ですが確認でき利用出来れは対応可能です。

 資源を対価としても構いません。

 多少時間が必要かもしれませんが調達方法を考えます。」


確かに金が使えるかどうかも判らないなら払うとは言えないな。

労働力は出来る事次第で最悪採掘作業をさせるとかはありか。

採掘した帰りとかで別の小惑星の採掘を任せておけばいい。

そうすれば次はその小惑星に行くだけで回収してすぐに帰還出来る。

なんとかなるか。


「星系の情報は普通に調べれば判る事だから情報だから別に金とかは必要ない。

 気にするなら何か手伝ってくれればいい。正直まだ何が出来るのかも判らないしな。

 ただ採掘機の分はちゃんと支払ってくれ。」


その情報も欲しいと言っているんだから売れば良いんだけどな。

でも労働に対する対価でもないからな。

生きていくには金は必要だけれどあこぎな稼ぎはするものじゃないもじいちゃんの教えだ。


「ありがとうございます。非常に楽しみです。」


弾んだ声での返答と嬉しそうな顔。

楽しい事があるってのは良い事だ。

今の俺にはあまりないからな。


「あれが船だ。ちょっと作業があるからそれが終わるまでは待ってくれ。」


区切り良く採掘穴の終点、出口とその先にある船が見えて来た。


「先にお名前を聞いてもよろしいですか?」


「船名ならガーランド23。なぜそんな名になったかは知らない。」


「すいません。船名ではなく貴方様のお名前です。」


セリナに言われて気が付く。

そりゃそうか、名前と言えば普通に人の名前か。

確かに俺の名前は言ってはいないな。

名前を聞いた時にこちらも言っておけば良かったがそんな状態じゃなかったな。


「俺はイスト。宇宙船乗りで採掘屋だ。」


名前だけじゃなくてセリナのように何をしているかも告げる。

名前だけ言うというのも味気ないかと思ったからだ。


「イスト様ですね。そうお呼びして良いですか?」


「様とかやめてくれ。呼ぶならイストでいい。」


坊主とか小僧とかなら慣れているがイスト様ってなんだよ。

さすがにそんな呼び方はやめて欲しい。


「ではイストと呼ばせて頂きます。

 イスト、作業の邪魔にならなければこの船について説明して頂いてもよろしいですか?

 もちろん機密などがあり情報公開出来なければ断って頂いて構いません。」


期待した顔でこちらを見ている。

やっぱり可愛い。

ついそう思って表情が変わらないように見られないように船に向かう。


「簡単な説明なら構わない。専門的な事は判らないぞ。」


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