表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竪琴宇宙のサクシード  作者: MAD-WMR
15/82

2-1 リラ6軌道ステーション入港[潜入]

「こちら軌道ステーション。ガーランド23、固定を確認しました。

 管制終了を終了します。上陸手続きに移ってください。」


「固定確認、管制終了確認しました。通信終了。」


ちょっと緊張した。

リラ6軌道上のステーションに入港終了。

ここは軌道エレベーターとほぼ直結した港だが入港する事はほとんどない。

船の港になっている係留ステーションや工業ステーションと比べると管制もしっかりしている。

本来のやり方でちゃんと管制されるから緊張する。

他の所だと船乗りばっかりでもうちょっと適当なんだけどな。


港とはいうが密閉された場所ではなくて長い柱に横づけした形。

旅客船じゃなくて輸送船とかが利用する場所だ。

エアロックに接続された通路を使って港へと降りるが直ぐには出られない。

通路の出口では検疫が行われるから少し待つ。

問題は起きず入港許可、そのデータは船に送り自分の持つ端末にも記録。

この記録が無いと問題にされる事が多いからだ。

これで船を動かすことは無いからロック、さらにセキリティを最大設定にし稼働は最低限。


白中心で塗装された通路に出るけど今この港には俺しかいない。

他に船は泊まっていないから静かなものだ。

軌道エレベーターの時間は調べてあるからそれに合わせて移動すればいい。

ステーションは下部に軌道エレベーターの発着場、その上にステーションの中心部。

その上に港施設と3段構造だ。

港は中央から外へ広がるように作ってあるのでひたすら中心に向かって歩く。

軌道エレベーターの宇宙にある部分は融合病で破壊されなかった。

作られた時の観光施設としての役割は今も果たしている。

ただ海賊たちが来てからは観光客も減っていてステーション部分でも人は少なかった。

まあリラ6の住民だと小さい頃から学校行事とかで来るので珍しくもないんだよな。

人が少ないからどっちかと言えば定番のデートコース。確実に周辺にばれるけどな。

セリナに説明した時の事が思い返される。

ちなみに俺は10歳の時から通っているから珍しさも何もない。

ここはほとんど施設が変わらないから余計だ。

アーコロジーの新施設の方が行ってない場所が多い。


中央部分まで来れば後はエレベーターで移動出来る。

さてまだ問題は起きてないからセリナはうまく行動しているんだろう。

指示された事はやってしまおう。

ステーションの情報端末で最新の情報をダウンロード、宇宙船用にもうひとつ。

それが終わったらステーションに連絡して船のコンピューターに転送。

ステーション内ならデータのやり取りは可能だ。

この転送についてはわざわざやる必要が無い。

コピーしたデータを船に持ち込むからだが時間指定したセリナの指示。

船側で色々とやっていてデータを得る為だとか言っていた。

正確には船への通信を拾うとかなんとか。


作業は終わったから後は軌道エレベーターでリラ6に向かう。

うまくやっているかどうかは下に降りて合流してからだ。

無理だった場合は明日出航してから合流になる。


単独行動はセリナから言い出した事だ。

大体リラ6に降りる必要が本当にあるのかは疑わしい。

興味があるから降りたいだけなんだろうが俺に止める権利も無いだろう。

機械部分の融合病対策は万全にしていたし2万人も人間が居れば誤魔化せるとか自身満々だった。

単独行動なのは何かあっても俺に迷惑がかからないようにだ。

帰還中に色々と話して計画はされているが俺は内容をほとんど知らない。

知らない方が良い事も多いらしいが非合法な事も沢山やってそうだ。

まあリラ6に不法侵入する段階である意味非合法だから黙認する。

まだセリナの存在は隠しておきたいからな。

上手くやっているだろうから気にせず下に降りてしまおう。



地球とはかなり違いますね。

目視出来たリラ6、その惑星は陸地が全体の67%と海面積が少ない惑星。

宇宙から見ると全体的に茶色く見えてAIセリナの記録では火星や金星に近い感じでしょうか。

他に観測した惑星がいくつか類似候補に上がります。

すでに惑星の観測は終わらせているので風景としての感想です。

宇宙を漂うゴミ、デブリに捕まって進んでいるのももうすぐ終わり。

軌道エレベーターステーションへの侵入を開始します。

ガーランド23から離脱後、ステーションに接近するデブリと共に接近。

ステーションは脅威とならない大きさのデブリには反応しません。


望遠観測で周辺の状況を確認。

スケジュールに従って作業しているようで外部作業をしている人間は居ません。

デブリを足場としてステーションに向けて加速。

宇宙服があれば作業員に紛れるのは簡単でしたが証拠が残るのは避けます。

でなければ単独行動の意味はありません。

工業ステーションに入港した時にすでにこのステーションの情報は得ました。

進入路は外部作業で使用されるエアロック。

出入りは記録されますが作業の為に回数しか記録されません。

作業員たちの死角になる位置へと着地して素早くエアロックへ。

中に入れば無人、ここで鉢合わせするかもしれないのが不確定要素でした。

内部に繋がる扉の窓から見ても今は人が居ません。

まずは天井を床として着地、その床、天井にあるメンテナンス用のハッチを解放。

唯一持ち込んだ作業道具の入ったポーチは工業ステーションで調達済み。

固定されている解放用レバーの蓋を外して操作すればハッチが少し開かれ手動で残りを解放。

外したレバーの蓋は戻して後はエアロックに空気を入れる。

1分程でエアロックの色が変わりまだ人はここに入って来ません。

本来梯子などで移動する天井の通路に向かって跳躍するのは今の脚なら簡単。

通路に捕まりその中へと身を潜ませるとまずは身体をハッチから出します。

人間では閉じられないハッチは内側にも解放用の回転式レバーが存在。

それを握り静か持ち上げて閉じれば暗闇になりました。


ここまで来れば計画の半分は成功です。

視覚を調整すれば明かりが無くても活動は可能です。

少し不便ですが照明を使用して発見されるよりは良いでしょう。

潜入工作についてはあらゆる情報を検索しました。

人間では無い機械の身体は潜入についてはかなり優秀です。

宇宙服無しでの宇宙遊泳、人間よりも高い身体能力。

船の管理では余剰でしたが今は便利なので感謝しておきましょう。

まだ時間はあるので次の目的地へと移動開始。

2ブロック先に稼働している作業用端末があります。

端末は操作権限がないと起動しません。

リラ6に登録されている市民であれば問題ありませんがまだAIセリナにはありません。

予想していた作戦時間で行動実行中、手首から接続ケーブルを伸ばし端末に接続。

イストがガーランド23にデータを転送する信号を利用して端末を起動。

端末つまりコンピューターが動いて使えればAIセリナにとって難しい事はありません。

接続ケーブルをすべての端子に繋ぎ接続を確認、情報速度しては40%くらいですか。

今回は身体的な入力ではなく直接データをAIで操作しますが40%は予想よりも低い。

端末の性能がそれほど高くありません。

合流時間は長めに設定してあるので寄り道しても余裕はあります。

ここからの作業は基本的な事だけで危険性を下げましょう。


さてどうでしょうか。

正直ここからの作業は非合法です。

コンピューターを使ったクラッキングですからイストには知らせていません。

まあ知られても構いませんし察しているかもしれません。

すでに必要なプログラムは幾つも用意してあるのでそれらを実行。

ステーションのコンピューターへのアクセスを開始。

稼働中の端末を経由して経路の撹乱、逆アクセスへの対抗策などの防衛策。

確実に繋がっている情報端末を経由してステーション中枢へ。

人間が身体とその思考で作業をするなら時間が掛かります。

AIセリナの演算能力は人間の遥か上。

さらにAIとしてプログラムで稼働しておきながらプログラムを作る、実行する、制御する事が可能。

現在使用しているシステムを構築して秘匿した研究者神山女史には改めての称賛を。

別にAIがプログラムを作るのは普通の事ですけど。

幾つもの経路を辿ってアクセスは確保、侵入は見つかっていないようです。

まずはステーションの記録を閲覧、端末を使用しても問題ない人物を確認して情報をコピー。

問題はなさそうですので記録の改竄開始。

軌道エレベーターの乗客数はすべて記録されているので1人増加。

リラ6に降りた人数が増えていれば問題になるからです。

さすがにここからはリラ6の中枢へのアクセスは難しそうですから住民記録などは改竄出来ず。

どうせ似たようなシステムでしょうからコンピューターのセキリティ関連をコピー。

他にいくつか必要な作業を実行。

リラ6では情報はかなりオープンにされています。

生活や環境なども随分と暮らしやすいようで犯罪率もかなり低いようです。

コンピューター犯罪もあまり多くは無いようで対策はそれほど厳しくはありません。

国同士が対立するような事もないからでしょうね。

すでに作ってある仮のID情報が使用出来るか試してみれば問題なく偽装出来ていますね。

リラ6では全住民がIDを発行されています。

生活自体がこのIDで管理されているのでこれが無ければ何かと不便です。

貨幣もほぼ使用されずこのIDを使用した決済が標準。

その部分についてはかなり複雑なシステムになっています。

厳しいので今は目的優先、手を出すのはやめておきましょう。


他の端末使用も考えていましたがここですべての作業が終わりました。

順調ですからさっさと撤収しましょう。

リラ6に降りられる機会を逃す必要はありません。

新たな情報を得られるチャンスは大事です。


まずはここから移動。

一般人が移動していてもおかしくない区画へ。

作業用の通路を使用しますが当個体のセンサーを稼働させ人間との遭遇は避けるます。

外壁に近い部分から内部へと進みセキリティの緩い場所まで来ればほぼ目的は達成。

周辺に人間が居ないのを確認しまずは来ている服を変更します。

さすがに現地に潜り込むのにイストが見たことが無いと言っていた今の服装ではいけません。

イストから借りている服へと着替え作業道具の入ったポーチと一緒に鞄へと入れます。

後は帽子をかぶって変装完了。


今の場所は緊急避難用の通路。

ここの開閉などに関してはさきほどシステムを調整してあるので一定時間は反応しません。

扉を少し開き外部をセンサーでチェック。動体反応なし。

さっさと外へ出て扉を閉めれば侵入成功。


ここは停泊している宇宙船への連結通路。

内装としては白中心で落ち着いていますが味気ないです。

金属のままよりは良いのでしょう。

見学や見送りの為に普通の人間も入って来れる場所ですが停泊中の船が無い通路。

誰かに遭遇しても迷ったふりで誤魔化すつもりです。

リラ6の時間を確認すればまだ時間に余裕はあります。

無事に潜入出来たので下へ向かいましょう。


最上階という港から中央へと降りるとちらほら人間が居ます。

観光客もいますが職員も多いようです。

港などの管理職員やステーションの職員でしょう。観光施設の職員もでしょうか。

少し歩いてみても特にこちらを気にされる様子はありません。

潜入としては問題ないでしょう。


観光施設の集まっている区画は気になるので立ち寄ります。

歩いてみれば飲食店や3Dシアター、アトラクション系の施設各種。

いくつかお店もあるようです。

それほど多くの人間も居らず閉鎖された場所も何ヵ所かあり寂れています。


イストには行かない方が無難と言われた公園を歩いてみました。

イストと同年代か少し上下の世代の人間がそれなりに居ます。

残念ながらただ歩いて通過しただけになりましたがこれは服装が悪いのです。

当個体は標準以上の外見らしいので魅力が無い訳ではないでしょう。

今は潜入中で目立つ訳には行きません。仕方ないのです。

この公園は若い人間にとっては交流の場所、ナンパする場所らしいのです。

その言語の意味は知っています。

まだ使用されている辺り文化的に大きな変化は無いのでしょうか。

残念ながら体験してみたいという知的欲求は満たされませんでした。


ただ歩いて情報を得ていだけではなく軌道エレベーターのステーションには向かっています。

そちらへ近くなれば人間も増えてきます。

発着場へのゲートは端末やカードで通過していますね。

IDで出入りを管理しているからでしょう。


ここは注意が必要です。

問題があった場合の逃走経路を再確認。

さきほど仮IDをコピーした端末を使って無事に通過。

ステーションには仮IDを登録しているから問題ないですね。

リラ6に降下したらもう一度対策が必要です。


軌道エレベーターは地上と宇宙を繋ぐ大型のエレベーター。

リラ6で稼働中の物は上昇、降下1時間半程とかなり高速です。

これは人員のみの場合で輸送用などはもっと時間がかかります。

内部は何層かに分かれておりそれぞれに座席が並んでいます。

列車や飛行機に近い感じでしょうか。

空いている席を使用し備え付けの端末を使用すれば色々なCMが流れています。興味深い。

ヘッドホンを使用してしばらく旅気分を満喫です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ