フェニックス焼き鳥パーティー
簡易テーブルの上に、焼き鳥が並んでいく。
今日のコンセプトは焼き鳥――主役は、もちろんフェニックスだ。
ほかにもダンジョンの下層や深層で取れた、美味しそうなモンスターのお肉を剛腕さんに捌いてもらっている。
かなりの種類を取り揃えた豪勢な食卓だと言えるだろう。
「プハーッ、やっぱりこれだよな!」
剛腕さんが、どこからかビールを取り出し楽しそうに口に運ぶ。
「ダンジョンイーターズの快進撃を祝して、乾杯!」
「乾杯~!」
「お酒、あたいも飲みたいッス~!」
「それは二十までダメです!」
"ただの飲み会始まったw"
"飲酒配信!"
"実際、スキルでアルコールぐらい簡単に分解されそう"
"え、じゃあ酔えないじゃん!"
もちろん私とミライちゃんは、ジュースだ。
剛腕さんは、大人の特権とばかりにキンキンに冷えた生ビールを手に持っている。
いわく、激闘後のこれが最高に美味しいのだそう。
私は一本、フェニックスの焼き鳥を手に取り口に運び……、
「う~ん! これもほっぺたが落ちそうなぐらい美味しいです!」
"いつもの!"
"相変わらず絶望的な食レポw"
そんな感じでくつろいでいる私たち。
一方、マインちゃんは居心地が悪そうに小さくなっていたが、
「あの……、私まで頂いて良いのでしょうか――」
「もちろんです! それに術式による後処理、助かりました」
「お役に立てて良かったです」
マインちゃんは、おずおずとフェニックスの串焼きに手を出し、
「美味しい!」
ぱっと表情を明るくする。
「でしょう! フェニックス、最高です!それに剛腕さんの料理は、世界一ですから!」
「おう、任せろ。どんな食材も、美味しく調理してやるからな!」
"頼もしい!"
"剛腕ニキのドヤ顔草"
"今日は流石にお疲れ様すぎるw"
"その場でスキル生やしてどうにかしたからな、この人"
"プロ意識がすごい"
コメント欄でも絶賛の嵐。
剛腕さんは上機嫌に、
「なあ三人とも? ビールも一杯、クイッとどうだ?」
「ダメですって!」
「いやいや。探索者たるもの、これぐらいは特権さ。何よりフェニックスの焼き鳥をつまみに、一気に生を飲むのが最高の味わい方さ。ダンジョンイーターズの食担当として、俺が太鼓判を推そう!」
(剛腕さん、酔ってるのかな?)
「や、やっぱりちょっとだけ――」
「ミライちゃん?」
「もらっていいですか?」
「マインちゃんまで~!?」
"アカン、カオスな配信はじまる?"
"飲酒配信解禁されたw"
"一応、生配信中だけど大丈夫なのかこれ!?"
"《鈴木 千佳》ダメに決まっとるやろ! 剛腕さん、後でお説教な"
「しゅん……」
千佳のコメントが届き、剛腕さんは名残惜しそうにビールをハコベールに戻す(いや、なんでハコベールに入れるんですかね!?)。
一方、マインちゃんは、
「アメリカは、探索者の飲酒は未成年でもオッケーなので」
「まさかの法の抜け穴! それ、美味しいですか?」
「いいえ、まったく。苦いだけで、オレンジジュースの方が美味しいです」
「な、なるほど――」
「はは、これの良さが分からないとは、探索者としての腕は一流でも、まだまだ舌はおこちゃまみたいだな」
「あ? 祟りますよ?」
「すみませんでした!!」
"キレイ過ぎる土下座w"
"マインちゃん、子ども扱いされるの死ぬほど嫌いだから(英語)"
"的確に地雷踏み抜くから!(英語)"
"シンプルな脅し文句スコ"
面倒な絡みをした剛腕さんを、一蹴するマインちゃん。
「アメリカは、なんでそんな特例があるんですか?」
「いや、むしろ日本は、なんでまだダメなんですか?酔拳使う探索者とか、どうするんですか」
"なんか普通に真面目な理由だった!"
"その通りすぎる!"
"おい見てるかダンジョン庁。そんなんだから世界に後れを取るんだぞ!"
"そもっとアルコールなんて、探索者には効かへんやろ"
そんなことを話しながら、私たちは剛腕さんの料理に舌鼓を打っていた。
和気あいあいと食事を楽しむ私たち。
この時間こそダンジョン探索の醍醐味の一つだと思う。
だからこそ気になったこと……。
「マインちゃん、いったい何しに日本に来たんですか?」
「そ、それは――」
「遠慮しないで下さい。ダンジョンでこうしてご飯を食べた仲じゃないですか。何か困ってることがあるなら、聞きますよ?」
どこかマインちゃんは、浮かない表情をしていたのだ。
そもそもマインちゃんは、アメリカで有名な探索者なのだ。そう気楽に、日本まで来ることはないはずだと思う。
きっと、こうして日本に来る用事があるはずで……、
「実はレイナちゃんに、お願いがあって――」
「はい」
「アメリカダンジョンの最深部攻略、手伝ってほしいの」
――そう、マインちゃんは爆弾を落とすのだった。





